今回は特別編です!!ちょっっっっとだけ、話の構図等を少し参考にしましたが、見てくれると嬉しいです!!!!!!!
魔力を持って生まれた猫を含め、全3章をまとめました!!!
では、作品へGO
🧹 魔力を持って生まれた猫
仲人屋を営む魔女っ子セレネとそのパートナー猫、コア。時折、猫や犬でも珍しい個体が生まれてくることがあるのです。
ローラスも、その一匹でした。
大きなサバトラ猫で、魅惑的な蒼い目を持つその猫は、ケイラのパートナーが決まり、新しく一匹、連れてきたのです。ローラスにはこんな過去があったのです。
🧹 普通になりたい魔女
レテは、なんでも普通が好きだった。理由は、物心つく前から、「レテ。お前は魔女なんだから、いつもワンピースとかスカートをはきなさい。」「女の子や魔女は家で大人しく人形あそびしているものだよ。それが普通って言うんだからね」と、散々言われ続けていた。だから、レテは普通じゃないと嫌だった。
その性格はパートナーを選ぶときにも影響した。魔女のパートナーはどの種類の動物でもいいのだが、「いいかい。レテ。魔女はね、昔から猫をパートナーとしてきたんだ。だから、猫をパートナーにしなさい」と両親にも言われており、素直に「うん。わかった」とうなずいてしまったのだ。
レテがパートナーに選んだのは、立派なサバトラ猫だった。しかし、「実は、魔力を持って生まれてきた。」と告げた途端、今までの愛や執着はどこへやら。
時折、魔力、霊力、妖力を持って生まれてくる動物がいる。特に猫に一番多かった。ローラスは魔力を持って生まれてきたのだ。ローラスはそれを誇りに思っていた。実は野良として生まれたローラスは、母猫に「魔力を持ってきたのを誇りに思いなさい」と優しく言い続けられていたからだ。
だが、レテはそんなこと思わなかった。普通になりなさいと言われ、彼女も普通になりたかった。
だから、冷めた気持ちでレテはそのサバトラ猫を捨てた。
もちろん、そのサバトラ猫は、わけがわからなかった。捨てられた悲しさ、恐怖、混乱。そして、また来てくれるかもしれないという希望だけ、残されていた。
「セレネ見て。あの子」小さな子猫の声がした。もしかしたら、「うわ。魔力を持ってる。殺さないと。」と、言われるかもしれない。そう思ってサバトラ猫は身を丸くした。もう、ここがどういう場所であるかは先輩たちと空気から教えてもらっていた。
まだ若い猫だろう。きっと飼われてる。嘲笑いにでも来たのかな。
「おいで」
柔らかい声がサバトラ猫の耳元で響いた。「…‥」
サバトラ猫は、くるりと後ろを振り返った。澄んだ蒼い目が、暗くよどんでいた。
そこにいたのは肩ぐらいの髪を流した綺麗な顔立ちをした女の子がいた。「こんにちは」その子はそう言って優しく手を出してきた。
「セレネ。早く連れ帰らないと」かわいくて、それでいで静かで、落ち着きがある声でした。「そうだね。じゃ。」セレネと呼ばれた女の子は、サバトラ猫を抱いた。そして、薄暗い部屋を抜け出した。
「あなた、誰だい?」つっけんどんな声でサバトラ猫は言った。「あたしはセレネ。10才の魔女っ子」「コアだよ」「そう。」「あなたは?なんていうの?」「知らない。知らない知らない。」サバトラ猫は、ぶんぶんと顔を振りました。まるで、「思い出したくない」と言っているようでした。
「じゃあ、コアたちが新しい名前、考えてもいい?」この一言に、驚いたようでした。「いいよ」そう答えるとサバトラ猫はフッと顔をそらした。
二人は、サバトラ猫の名前を決めた。メスで、古い魔女語で、「力」と意味するローラス。これをセレネたちはサバトラ猫に名付けました。「…わかった。これからローラスって名乗るよ」
声は少し明るくなったようでしたが、相変わらず目は暗くよどんだままでした。
🧹 ローラスと霊精の少年
ローラスはどうしても人を信頼しきれないようでした。撫でさせてはくれますが、抱っこはどうしてもさせてくれません。また、食事中は気が荒くなり、「来るな!」と威嚇してきます。そのたびに、「ごめんね」とセレネは謝るのです。
しかし、ローラスはコアには絶大な信頼を置いていました。いつも一緒にいて、いつも一緒に遊びました。なにか怖い事があったときは、コアが守りました。「コアもお姉さんねえ」とセレネは笑いました。しかし、そんな日も長く続きはしませんでした。
「ねえ。コア。一緒に散歩に出かけようよ」ある日、ローラスはコアに言いました。「良いけどセレネに相談しないと。」コアはそう言って風のように駆け、セレネに許可をもらうとローラスト一緒に飛び出しました。
「コア。どこ行くの?」「ここの側の森。森の中には動物たちにご飯をくれる処があるのよ。それに色々楽しめるし」「へぇ〜」
そう言いながら進んでいきますと、木の葉の絨毯の上に、キラキラと金色に光る物がありました。「わぁ!」ローラスは走りました。 「なにこれ?」「ああ。これ?これは金ぐり」「金ぐり?」「そう。どんぐりと栗の間みたいなものなんだ。結構落ちてるけど高価だよ!!」確かに、よく見るとそれは木の実のようでした。ふわっとずんぐりむっくりとしています。「美味しいの?」ローラスの問いかけに、コアは笑顔で頷きました。「うん!生じゃ硬すぎて食べられないけど、炒めたり煮たりなんだりするとすっごい美味しくなるんだ。ここはコアとセレネしかしらない秘境なんだよ。みんなが金ぐりを求めるからね。」一通り説明を終えると、コアは思いついたように言った。「山の実狩りしようよ!」ぴょんっと高く猫らしく跳ねました。「なにそれ?」「木の実やきのこ、山菜を採るの!」「ほんと!?やろうやろう!」
暗くよどんだ目を大きく見開いてローラスはいいました。
「でも、ちょっとお腹すいたね」ローラスの何気ない一言を聞くとコアは、「じゃ、ちょっとここらの食べ物採ってくる。そこの切り株で待っててね。もしかしたら大物も手に入るかもね」そう言って微笑むとコアは森の奥へ消えていった。
ガサ
茂みから音がした。「何!?」ローラスが驚いて振り向きました。毛がちりちりとして逆立ちます。「こんにちわ」男の子の声だった。
薄い金粉が散りばめられたようなとんぼのように透き通った羽、赤金色の短い髪の男の子だ。「誰?」いかにも信頼していませんという目つきで問うた。「僕は霊精のゼイ。よろしくね。」にっと笑ったその口はいかにもいたずらっ子そうな感じでした。
霊精のゼイと名乗った男の子は、柔らかい笑みをたたえて言った。「君、ローラスっていうんだろ?」「なっ!!」ローラスはキッと目を矢のように細めて唸った。知らない相手に自分のことが知られているというのはいい気分になりません。まして人を信頼していないローラスにとっては大問題です。
ここには魔女の他にもいくつかの種族が住んでいます。妖精、魔精、霊精、妖(あやかし)などなど。霊精はその中の一種です。
「そう怖がらなくていいんだよ。」ゼイと名乗った霊精は優しくそう言います。「ほら。これあげるからさ」
ゼイは握りしめていた右手を開きました。なんだろうと思ってローラスは手を覗きました。
手の中にはキノコがありました。キノコなんか大っきらいなローラス。「きのこは嫌いなの」と言いますと、「そうだったんかい。でも、僕からのプレゼントだ。受け取ってよ。」ゼイは懇願してきたが、「いや…」とローラスは戸惑ってしまった。ゼイの目が危険にチランと輝いた。「あ、わかった。じゃ、ちょっとまっててね。」ゼイは森の奥に去っていった。
残されたローラスは、森の東の方角を見ました。まだコアが帰って来る様子はありません。「早く帰ってきて…」ぎゅっと目をつぶってローラスはそれを祈りました。
数分ほどしてゼイは戻ってきました。手にはグラタン皿を持っています。グラタン皿からはほっかほっかと湯気が出ています。その匂いのいいことか。あったかい空気と共に嗅いだことのないチーズの匂いも漂ってきます。「わぁ。グラタンかな」ローラスはゼイに駆け寄った。「そうだよ。食べるかい?これならいいだろう」ゼイはグラタン皿を差し出してきた。
ローラスはなぜか猫舌ではないので、熱々でも喜んで食べました。
グラタンだがモッツァレラチーズのようなチーズがローラスはお気に入りになりました。そしてあのきのこも入っていましたが、おいしく食べることができました。
たくさん食べ、口の周りについたチーズをぺろぺろと舐めながらローラスは言いました。
「このチーズ、とっても美味しいね。なんてチーズなの?」「これはね、眠りっこチーズっていうんだよ。他にもさっきのきのこは無記憶茸(むきおくだけ)。他にもたくさん入ってるよ」ゼイが話し終える前に、ローラスは強い眠気に襲われました。それだけでなく、立っていることもままならなくなってきました。必死で目を開け、立ちながら、言いました。「ふ、ふうん。ね、眠りっこチー、ズ‥無記憶、茸…」
もう、ローラスの体力の限界が超えてきていました。そして、ぱたんと崩れるようにして倒れました。
なんとか起きないと。起きてこのゼイっていう霊精にどういうことか聞かないと…。コアをちゃんと、待た、ないと‥
ローラスはその蒼い目をゆっくりと閉じていった。
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