「「モノガタリ」には必ずと言って良いほど「悪役」や「ヒーロー」などと言った「役職」がありますよね?」
また、紅目の彼が話す。
「「全てが上手くいくモノガタリ」…なんて、誰も望まないし面白くないでしょ…w」
その瞳が薄く笑みを浮かべる。
「ですがその他にも主人公が最終的に死ぬ、とか、ヒロインが死んでしまい、新しいヒロインが爆誕し結婚するなどの胸糞悪い作品を見たことが無いでしょうか」
蝋燭が一本灯る。
「それとは違い、作者の皆様方は、「気持ち悪い作品」ではなく?もちろん!「気持ちのいい作品」にしたいものですよねぇ〜…?」
その横に並んでいた蝋燭がもう一本灯る。
「だからこうすれば良いんですよ」
紅瞳が、蝋燭に揺れる。
「「普通」で無ければ良い」
組んだ足に指を這わせる彼。
それと同時に二本の蝋燭はフッと、音もなく暗闇に飲まれた。
「らっだぁはあれから何してたんや?」
お前が家が裕福なのは知っていた、と供述する彼の下半身は若干半透明。
その事に、自分は目を瞑る他無かった。
「…別に?ただ「記憶を消して」生活してただけだよ」
「記憶を消して…?」
横を歩いていた彼が足を止め、滑るように自分の下げた視線を覗き込んでくる。
彼の下半身を見ていた視界に彼本人の月色の瞳がドアップされ驚きを隠せなかった。
「う、うん…?」
「なんでや?」
真っ直ぐに見つめてくる瞳。
それがまるで、「彼らを殺した」と言う事実を真っ向から咎められているようで、
そんな考えが、胸を締め付けた。
「あ〜…と、…何て言おうかなぁ〜…w」
「なんや気になるなぁw」
覗き込むのをやめた彼がまた、先に運ぶ「足」を順番に進める。
その背中を追う途中、腰に巻いた武器が一瞬ジャラジャラと鳴ったのを手で止める。
先を歩いている彼にバレないようにそのまま武器を応急処置としてズボンの中へと入れる。
多少肌が危ない気はするが、今は緊急ということもあり仕方ないと自分に言い聞かせる。
「まぁ、どちらにせよお前が無事であったことに変わりは無いやろ」
頭の後ろに手を組みながら話す彼の顔を、後ろにいた僕が視界に入れることは出来なかった。
彼は今、どんな顔をしているだろうか。
少し気になったが見れない位置にあって安堵する自分も存在した。
葛藤する自分の気持ちから少し、ほんの少しだけ、居心地が悪くなった気がした。
「…そうだね」
「悪い事」を今もしているという自覚をまだ持っていたことに、安心した自分がいた。
コメント
2件
一言…すき…。
最初の感じがまだまだ満足してないでしょ?って言われてるみたいで好きです!!!なんか見てるとrdの気持ちになったみたいで心臓がキュッてなる……( ˙˙)