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ーー『魔法学校の日常』
先生が黒板に課題を書いていく。
『空の鍋に、ネズミを一匹出現させる』
「制限時間は一人五分。呪文と杖の振り方、両方採点するからな」
「めっちゃ簡単じゃん」
たらこが黒板を見上げる。
「そう?」
ぐちつぼが隣から覗く。
「俺だったら二十匹くらい出せるけど」
「それは減点だろ」
「なんで?」
「一匹って書いてあるから」
「ケチだなあ」
「テストだからな」
前の方では、げんぴょんがすでに杖を確認している。
「こんそめ、これって呪文だけ?」
「基本はそう。でも杖の振り方も合わせた方が安定する」
「あ〜」
「あと、最後に杖を止める」
「了解」
二人とも妙に真面目だ。
「じゃ、げんぴょんから」
「はい」
げんぴょんが立ち上がる。
鍋の前に立って、杖を構える。
「……アヴァダ――」
「待て待て待て」
んそめが即座に止める。
「何言おうとした?」
「いや、冗談」
「冗談でもやめろ」
「ははは」
先生も呆れた顔をする。
「普通にやれ」
「はいはい」
げんぴょんが杖を振る。
「ラット・アパレシオ」
ぽんっ。
鍋の中に、ちょこんとネズミが現れた。
「おおー」
たらこが声を上げる。
「完璧」
先生が採点表に何か書く。
「次、んそめ」
「はい」
んそめも鍋の前に立つ。
一度だけ深呼吸して、
「ラット・アパレシオ」
ぽんっ。
こちらも一瞬でネズミが現れる。
「はい、満点」
「よし」
んそめが席に戻る。
「二人とも早すぎね?」
ぐちつぼが笑う。
「普通にやっただけだけど」
「俺なんかもっと面白いことするけどな」
「やめとけ」
んそめが言う。
「お前、絶対やらかすから」
「失礼だな」
その直後。
「じゃあ、焼きパン」
「え、僕?」
「お前だ」
「……よし」
焼きパンが立ち上がる。
「見てて。僕、こういうの得意だから」
「さっきから不安しかない」
たらこが笑う。
焼きパンが鍋に杖を向ける。
「ラット・アパレシオ!」
杖を振る。
――ぽんっ。
鍋の中に何かが現れる。
「……」
「……」
先生が鍋を覗く。
「焼きパン」
「はい」
「これは何だ?」
「……ネズミ?」
「尻尾が三本あるぞ」
「…………」
ぐちつぼが吹き出す。
「っははははは!」
「お前笑うな!!」
たらこも机に突っ伏している。
「三本って! 三本って何!?」
「知らねえよ!!」
先生が頭を抱える。
「呪文は合ってる。だが、杖の振り方が雑すぎる」
「はい……」
「もう一回」
「はい!」
焼きパンが再挑戦する。
「ラット・アパレシオ!」
ぽんっ。
今度はネズミが二匹。
「…………」
「…………」
「焼きパン」
「はい」
「一匹だ」
「……はい」
「なぜ二匹出した」
「……増えました」
「お前が増やしたんだよ」
「すみません」
後ろでは、ぐちつぼとたらこが必死に笑いを堪えている。
「……っ」
「……おい、たらこ」
「無理、笑う」
「俺も」
「お前らも減点するぞ」
「すいませんでした!!」
二人が即座に真顔になる。
その隣で、ごんかねがげんぴょんとんそめの会話を聞いていた。
「ねえ」
「ん?」
「さっき、杖を最後に止めるって言ってたじゃん」
「言ったね」
「じゃあ、止める位置を変えたらどうなるの?」
げんぴょんが少し考える。
「……結果が変わるんじゃない?」
「やってみよ」
「テスト中に実験するなよ」
「ちょっとだけ」
ごんかねが鍋を引き寄せる。
「ラット・アパレシオ」
杖を振って――
最後に、ほんの少しだけ角度を変える。
ぽんっ。
ネズミが一匹現れる。
「おお」
「成功じゃん」
げんぴょんが覗き込む。
「じゃあ、もう一回。今度は反対」
「いいね」
「いや、テスト終わってからにしろ」
んそめが止める。
「えー」
「先生に怒られるぞ」
「……それは嫌だな」
ごんかねは素直に杖を下ろす。
その横では。
「先生!」
焼きパンが手を挙げる。
「何だ」
「僕、もう一回やっていい?」
「……いいぞ」
「今度こそ一匹出します」
「頼むから普通にやってくれ」
「はい!」
ぐちつぼとたらこが顔を見合わせる。
「……次もなんか起きそう」
「絶対起きる」
そして焼きパンが、三度目の呪文を唱えた。
「ラット・アパレシオ!」
――ぽんっ。
今度は、ネズミが一匹。
「……」
「……」
「……やった!」
「おお!」
たらこが拍手する。
「普通にできたじゃん!」
「だろ!?」
焼きパンが得意げに胸を張る。
先生が採点表を見る。
「 うん。合格」
「やった!」
その瞬間。
鍋の中のネズミが、突然二匹に増えた。
「…………」
「…………」
先生が焼きパンを見る。
「お前」
「 違う!! 僕じゃない!!」
ぐちつぼとたらこが同時に吹き出した。
「ははははは!」
「なんで時間差で増えるんだよ!」
「わかんないよぉ…」
教室中に笑い声が響いた。
コメント
1件
テストの実技の回、めっちゃ好きな雰囲気だったよ🥀「ラット・アパレシオ」で三本尻尾とか二匹ドーンは笑った🤣焼きパンの執念と時間差増殖も謎すぎて可愛い。みんなの掛け合いがほんわかしてて、魔法学校の日常って感じが伝わってきたよ🌙
#物語集
らりれるろ
106
めりりんちよ
104