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若き覇王に、甘くときめく恋を

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若き覇王に、甘くときめく恋を

59 - 第三章 ときめきの甘い恋を、あなたに EP.1「貴仁さんとの初デート」⑯

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2025年01月28日

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カクテルを二杯程度飲むと、「そろそろハイヤーを呼ぼうか?」と、彼から問いかけられた。


「でもまだ電車もあるので、それで帰れますから」


時刻は九時に差し掛かろうとしていて、自分でもそろそろ帰ろうかなとは思っていたけれど、さすがに車を呼んでまで送ってもらう程ではなくてと断った。


「いや酔って公共機関で帰るのは心配だから、乗っていきなさい」


すると、そう過保護な調子で押し切られて、そんな風に私を大切に思ってくれる彼に、手放しにキュンとさせられてしまった。


「ありがとうございます。では、せっかくだからお願いしますね。あのそれと、一つだけ質問なのですが、ハイヤーとタクシーの違いって、何なのでしょう?」


タクシーに比べると、ハイヤーは高級志向であることなどはわかっていたけれど、実際に乗った経験もなく知識はそれぐらいでしかなかった。


「そうだな、ハイヤーは元々契約利用が多く予約が必至で、その場で捕まえて乗るようなことはできないのが、主な相違点かもしれないな」


「そう、なんですね」外で手を挙げて乗るものじゃないんだと、ぼんやりと思う。


「ああ、要はチャーターだ」


移動手段一つとってもハイクラスだなんて、やっぱり私とはレベルが桁違いなように感じる。


彼は、こういう世界が当たり前で、ずっと生きてきたんだよね? だったら、今まで過ごしてきたお互いの価値観は違えども、たとえ少しずつでも擦り合わせていけたらいいなと思えた。


……だって彼は、今日の普通のデート・・・・・・を、あんなに楽しんでくれたんだもの。


乗る時にもだったけれど、降りる際には運転手さんが車を一旦降りてドアを開けてくれて、ハイヤーではそれが一般的らしかったが、そういったことには慣れていないせいで緊張しきりでいると、奥に座る私より先に降りていた彼が、「ゆっくり降りたらいい」と、手をすっと差し伸べてくれた。


そんなささやかなエスコートにさえも、胸がキュンとしてしまう。


「今日は、ありがとうございました。それでは、また」


再び車に乗り込んだ彼に、ちょこっと頭を下げる。


「ああまた。私から連絡する」


そう言って、彼が手を振ると、黒塗りのハイヤーは走り去って行った──。


車が見えなくなるまで見送っても、まだ胸がドキドキと高鳴っていた。


今日一日デートをしてみて、時には子供みたいに可愛かったり、かと思えば紳士的でスマートな対応だったり、加えてダーツをする姿もすごく決まっていて格好良くて……と、どの場面を切り取っても、彼はとても魅力的に感じられた。


「貴仁さんの、もっといろんな顔が見てみたい……」


高鳴りが収まらない胸に手を当てて呟くと、これからも彼のことをたくさん知っていけたらと、心から思わずにはいられなかった……。


……部屋に帰って来て、ハァーとひと息をつく。


「いい一日だったな……。けど前半は平凡なデートだったのが、後半では貴仁さん主導の割りとハイクラスな感じになっていて……」


食事の際にちょっとだけ見えた領収証を思い出しても、なんだかまだ目がチカチカしてくるみたいだった。


もっといろんなところに、一緒に行ってみたいな……。そんなにデートをしたことはなくてという彼に、もっともっとお付き合いの普通を教えてあげられたらとも思うし……。


だけど貴仁さんって、あんまり経験はなくっても、スマートなレディーファーストぶりは忘れないっていうか……。ハイヤーから降りる時に差し出された手の温もりが、今も自分の手の平には残っているみたいで……。


でもそれも、帝王学の流れなのかな? クラブでの交流までも、よもや教え込まれてたようだったから。


なんだかこんな風に考えていると、彼にはまだまだ私の知らない様々な面がありそうで、全部を引き出してみたくなる。


それには、より仲を深めていかないと──。


貴仁さんのことを思うにつれ、また胸が高ぶってきて、今別れたばっかりなのに、もう会いたくてたまらなくなっていた……。

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