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俺は推しのアイドルのコンサートチケットを手に入れるためにコンビニに駆け込んだ。心臓は高鳴り、緊張と期待で手が少し震えていた。そのアイドルは「星乃あかり」、最近注目されている新進気鋭のソロアーティストだ。彼女の可愛らしさと力強い歌声は、俺の日々に輝きを与えてくれる。彼女を生で見ることができるチャンスは絶対に逃したくないと思い、今回のコンサートチケットは何としてでも手に入れたいという強い決意があった。
コンビニの端末の前でチケットを探していたが、ふとディスプレイに表示された不思議な選択肢が目に入った。それは「女子高校生になれるチケット」という奇妙なものだった。冗談だろう、と思いながらも、そのおかしな提案に興味を惹かれ、軽い気持ちで購入ボタンを押してみた。
次の瞬間、世界がぐにゃりと歪んだ気がした。そして、俺の視界がぐっと低くなり、体が妙に軽くなった。あまりにも突然で、現実感がまるでなかった。俺は、両手を見下ろしてみた。そこには、細くて白い、そして見慣れない小さな手があった。
「なんだこれ……?」
声を出してみたが、それは聞き慣れた自分の声ではなかった。かわいらしく、少し高めの声が、俺の口から漏れた。心臓がどくんと跳ね上がり、全身に鳥肌が立つ。自分が何か信じられないことになっていることを理解し始めると、急に体中が熱くなるような気がして、同時にどうしようもない恥ずかしさが込み上げてきた。
俺は周りの視線が気になり、思わず顔を伏せた。急いでコンビニの奥にある洗面所に向かい、ドアを閉めて、ゆっくりと鏡の前に立つ。恐る恐る顔を上げると、そこには制服姿の女子高校生が映っていた。髪は肩までの長さで、柔らかく光を反射している。大きな瞳が不安げに揺れていて、その表情がまるで自分のものとは思えなかった。
「これが……俺……?」
鏡に映った顔を触ってみる。頬は柔らかく、滑らかで、手に伝わる感触がいつもと違う。胸のあたりも妙に膨らんでいて、制服のスカートがふわりと揺れているのが視界の端で見えた。全身がぞわぞわと感じられて、違和感の塊のようだ。
俺は、何度も深呼吸を試みたが、胸が締め付けられるようで、うまく呼吸が整わない。パニックと恐怖が混ざり合い、頭の中は真っ白だった。何が起こったのか理解できず、不安と混乱が一気に押し寄せてきた。鏡に映る自分の姿を受け入れることができず、ただその場に立ち尽くしていた。指先は震え、心臓の鼓動が耳に響く。スカートの裾をつまんで少し引っ張ってみると、その動き一つ一つがますます現実味を帯びてきて、恐怖と羞恥の波が押し寄せてきた。
「どうすれば……いいんだよ、これ……」
俺は呟いたが、その声もまた、聞き慣れない女の子の声で、ますます混乱した。変わり果てた自分の体は、まるで借り物のように感じられ、全てが他人のもののようだ。洗面所の狭い空間に、自分が女子高校生になってしまったという現実だけが重くのしかかる。
顔を赤くしながら、俺は鏡から目を逸らした。これが元に戻る方法なんて考えられないし、そもそも何故こんなことになったのかも分からない。体の違和感や恥ずかしさに圧倒され、俺はただその場で立ち尽くすしかなかった。
しばらくして、俺は深く息を吸い込み、戸惑いと恥ずかしさを押し殺しながら意を決して洗面所から出た。元に戻る方法を探すしかない。そう思い、再びコンビニの端末の前に立ち、先ほどの「女子高校生になれるチケット」をもう一度探そうとした。しかし、どれだけメニューを操作しても、その選択肢はどこにも見当たらなかった。
画面にはただ、いつも通りのチケットや商品のリストが並んでいるだけで、あの奇妙なチケットの痕跡は一切なかった。不気味なほど静かで、まるで最初からそんなものは存在しなかったかのような錯覚に陥る。その不可解さに背筋が寒くなり、心に得体の知れない不安がじわりと広がっていった。俺は呆然としたまま、端末の前で動けなくなってしまった。変わり果てた自分の姿に戸惑いながら、このままどうすればいいのか全くわからないまま、その場に立ち尽くしていた。