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そして、午後4時過ぎ。本日7か所目の釣り場。
トリック仕掛け&投げサビキでも釣れなくなってきた。
「そろそろここも魚は終わりかニャ」
ミーニャさんがそう言うと、
「そんな感じです」
ジョンもそう返す。そんな状態だ。
全くいないという事はない。
まだ底の方にいくつか反応はある。
しかし餌を底に垂らしても寄ってこない。ならばだ。
「それじゃ最後に、少し効率は悪いですけれど、動く獲物を追いかける習性がある魚用の仕掛けを試してみます」
そう、ルアーだ。
今日は1匹でも多く討伐する事を目的にしていたから、使う暇がなかった。
しかし他の方法で釣れなくなっているし、時間的にももう最後。
だからやってみてもいいだろう。
「どんな仕掛けなんだ?」
「これだ」
作ったルアーの中で、一番小魚に近いタイプを出す。
8㎝くらいの銀色と黒のシンキングミノーだ。
「魚を模した餌か?」
「ああ。これを水中で動かして、動く獲物に反応する魚を狙う」
魔力反応で居場所はわかっている。
だからその前を通りそうなルートを考え、風魔法を併用して目的の場所まで軽く投入。
あとは底ぎりぎりを泳ぐような速度でだだ巻き。
透視魔法が使えるから、障害物をぎりぎり避けて泳がせるなんてのも簡単。
いくつかある魔力反応の前を通して……
よし、追いかけてきた。
透視魔法でタイミングを伺いつつ、少しだけ巻く速度を落とす。
食いついた瞬間、竿を引いて針をかける。
よし!
「ヒット!」
手応えはかなり重く感じる。
岩や流木などの障害物に引っかかったかと思うくらいだ。
しかし透視魔法で魚がかかっているのが見えている。
魔力反応があるので、魔魚に間違いないとも。
それに昨日お試しで釣ったスズキよりは引きが弱い。
だから強気で引っ張らせてもらう。
竿を上げて魚を寄せ、下げつつ一気に巻いて、竿を上げて……を繰り返し手前へ。
水面上に出た瞬間に冷却魔法を放って、動きを止める。
全長40cmくらい。今日、他の場所でウキ釣りで釣ったものより大きい。
魔魚カンディルーとしては最大級ではないだろうか。
「面白そうなのニャ。やってみていいかニャ」
透視魔法と転送魔法があれば、障害物にルアーが引っかかっても問題はない。
だからここで2人にも試してもらうとしよう。
「それじゃまずはミーニャさん、どうぞ」
竿ごと仕掛けを渡す。
「ありがとニャ。投げ方はさっきのウキ付きとおなじニャから……」
◇◇◇
3人、交代で合計30投してみた。
ミーニャさんもジョンもなかなか上手い。
2人ともキャストミスは10回中3回ずつだけ。
そして餌で釣れない大型カンディルー、ルアーには弱かった。
結果、ミーニャさんが1匹、ジョンも1匹、そして俺は3匹釣り上げる事に成功した。
俺は透視魔法で、魔魚の居場所や水中の状況が見える。
風魔法や水流魔法で投げる場所を調整する事も可能だ。
その俺が3匹で、それら魔法を一切使っていないミーニャさんやジョンが1匹ずつ釣れている。
これは結構すごい事ではないだろうか。
「こっちの方が面白いのニャ。ただ討伐として考えると効率は悪いのニャ」
「確かに小さいのも大きいのも同じ報酬ですからね。それじゃそろそろ終わりにして、帰りましょうか」
「そうなのニャ。あと今晩も当然、魚パーティなのニャ」
「はいはい。ジョンも来るだろ、夕食。この大きいのはまた別の料理が試せそうだからさ」
「いいのか」
「3人で釣った魚だからさ、問題無いだろ」
魔魚カンディルーの大きいのはナマズっぽい形だった。
なら前世にあったナマズ丼を作れるかもしれない。
捌いた身を蒲焼きにして白御飯の上にのせ、つゆをかけた料理だ。
作り方はだいたい覚えているし、透視魔法と転送魔法を使えばさばくのも簡単だ。
そして蒲焼きサイズの大型カンディルーも、ウキ釣りとルアーで9匹は確保している。
いや、全部蒲焼きというのも面白くないか。
骨を取った後にたっぷりの油で揚げて、青マンゴーとソースで食べるヤプドフーもいいかもしれない。
帰りに青マンゴーとライム、適当なナッツを買って帰ろう。
「それならさっさと帰って、料理なのニャ!」
「その前に冒険者ギルドに寄りますけれどね」
「それは仕方ないのニャ」
いや、仕方ないというのとはちょっと違う気がする。
一応これは討伐依頼なのだし。
「それじゃドーソンの南門まで収納しますよ」
「楽でいいのニャ」
何だかな、そう思いつつミーニャさんとジョンを魔法収納して、そして俺は走り始める。
◇◇◇
冒険者ギルドに入って、そのまま受付をスルーして面談室へ。
「それでは冒険者証を預かるのニャ。討伐証明は魚そのままで出しても、魔石でもいいけれどどうするニャ」
まずは冒険者証を出す。
「討伐証明は魔石でお願いします。ただごくごく小さいものもありますから、これで」
即席だが魔法収納内で鉄製の箱を作っておいた。
何せメダカサイズの魔魚カンディルーの魔石は直径2mm程度と小さい。
それでも1匹750円以上だから、無くさないように。
本当はもっと軽い素材で作りたかった。
しかし魔法収納内にある素材では鉄が一番手っ取り早かった。
木材だと隙間に小さい魔石が入ってしまうし、この程度のものに木炭由来魔法加工物質を使うのも何だし。
「ありがとニャ。それでは計算してくるニャ」
ミーニャさんはそう言うと、事務室方向へと消える。
「そういえばあれ、何匹分あったんだ?」
「1,000匹ちょっとだ。一応数えてはいたんだが、途中でいくつか数え忘れた気がする」
魔法収納魔法も万能ではない。
同じようでいて大きさが違うものがあると、別のものとして整理されてしまうのだ。
同じ場所に入れて、魔法で数を数えてみても、
〇 直径2mm~2.5mmの魔魚カンディルーの魔石 497個
〇 直径2.5mm~3mmの魔魚カンディルーの魔石 354個
〇 直径……
という感じで分けられてしまう。
だから正確な数を知るには、それらを足し算しなければならない。
流石に足し算がいくつもあると暗算では面倒だ。
かといって紙とペンを出して計算するのも……。
という事で『だいたいこれくらい』しか把握していなかったりする。
それでも相手がミーニャさんやクリスタさんなら、数を誤魔化すことはない。
だからきっと問題ない。
「あと今日の昼食や装備でかかった金額は、ちゃんと請求して三人で分けてくれよな。その辺はなあなあにしたくないからさ。エイダンが自作で作ったものは、材料費に手間賃を加えた金額で」
うーむ、それはちょっと難しい。
「今日の昼食は魚の他は、以前ミーニャさんが持ってきた野菜や米や調味料を使っているからさ。金額がよくわからないんだ。俺としてはミーニャさんからの貰い物だし、ミーニャさん自身が一番食べるから、これでいいかと思うんだが」
「……確かにそれは難しいな。それじゃ取り敢えず、食事代についてはそれでいいか。それじゃ装備、竿とかあの仕掛けとかはどうなんだ」
これもまた難しい。
「あれは俺の趣味の道具を兼ねている。ついでに言うと材料費は例によってかかっていない。その辺の流木や砂から作っているから。ついでに言うと、少なくともドーソンでは同じような道具を売っていない。だから参考価格も出せない。強いて言えば糸だけは買ったな。200mで1,200円のを」
ジョン、渋い顔になる。
「何というか、会計的には無茶苦茶微妙かつ難しいな。本当は全て均等にして人数割りか、パーティ共有費から出すべきなんだが」
「今回はこんな感じだから、まあいいんじゃないか。実際俺自身は金を使っている訳じゃないから」
「まあ、そうするか。実は此処へ来る前に親父に言われていたんだ。パーティ内の金銭管理は、これでもかという位わかりやすくきっちりとしておけってさ。特にD級とかE級あたりのパーティだと、金銭関係で問題が起きて解散するなんてのが多いらしいから」
なるほど。
「そういう事もある訳か」
「C級以上だと割とお金を持っているし、気にならないのかもしれないけれどさ」
ジョンはそう言って、一拍おいて続けた。
「あともう一つ気になっている事があるんだ。今日の討伐、俺がD級としてふさわしいかどうかの試験も兼ねていたはずだよな。でもそんな試験っぽい事、全然していない気がするんだけれど」
あっ! それは……。