「咲くたびに痛む理由」
pr視点
嘘って、最初は簡単やった。
誰かを傷つけんように、
「大丈夫」って言うだけの、
小さなもんやったはずやのに。
それがいつの間にか、
自分の中に根を張って、
花になって咲くようになってもうた。
──俺の胸には、もう何度も花が咲いてる。
最初は白やったのに、今は少しずつ色が濃くなってきてる。
嘘が重なるたびに、花の色は深くなる。
「…ねぇ、ぷりちゃん」
背後から、あの声がした。
夕陽を反射した窓の向こう、
ちぐが手を振ってた。
「保健室まで、一緒に行こ?」
「平気やって。ちぐこそ、自分の心配しぃ」
「俺のはちっちゃい花だから!」
「ちっちゃくても、嘘は嘘やで」
その瞬間、
胸が少し痛んだ。
花の根が、心臓を掴むみたいに。
俺は視線をそらして、
いつもより少しだけ低い声で言った。
「……なぁ、ちぐ。
お前、なんで嘘ついたん?」
「え、……」
「胸、咲いとったやろ。俺の見て、嘘ついたんやろ?」
ちぐは言葉を失ったまま、
制服の裾をぎゅっと握ってた。
「……ぷりちゃんが、痛そうだったから。
だから、俺も、痛いのがいいなって思った」
その言葉に、
何も言い返せんかった。
なんやねん、それ。
そんな優しさ、いらんのに。
……けど、
心のどっかで「嬉しい」って思ってしまった。
それがいけなかった。
胸がまた熱くなって、
今度は赤い花が一輪、
ゆっくりと咲いた。
「ぷりちゃんっ、それ……!」
「……見んとき」
慌ててシャツを押さえる。
でも花は、止まらない。
咲けば咲くほど、心臓が痛い。
「嘘ついたんでしょっ!」
「せやな」
「どんな嘘?」
「……俺は、お前のこと、なんとも思ってへん」
そう言った瞬間、
花が一気に開いた。
白から、深紅へ。
血みたいに綺麗な色。
「…っ、ぷりちゃん、それ——!」
「大丈夫や、こんなん慣れとる」
そう言って笑う俺の声は、
震えていた。
それでも、
そのまま歩き出す。
離れていく足音の中で、
聞こえた気がした。
「嘘つき……」
ちぐの声が、
胸の奥に沈んでいった。
そして、
咲いた花びらが一枚、
俺の足元に落ちた瞬間——
痛みが、消えた。
……嘘が、ひとつ、消えた。
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コメント
8件

主の過去作めっちゃ読み漁ってて、王道とはちょっと違う儚い物語でめっちゃ好き テラーはチャットしか読んだことなかったけどノベルもめっちゃいいね
やっぱ、かちゃま書くのうますぎるわ… 続き楽しみにしてる〜〜〜💕
やっぱりエモい系の書くの上手くね???分けて?(??) 取り敢えず、作品は最高☆☆ 次のも楽しみにしてる〜!!!!