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『椿くん』
『私もう行くね』
『…さようなら』
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ヴーヴーヴーヴー
部屋中にアラーム音が鳴り響く
「ん…」
まだハッキリとしない意識の中手を伸ばしアラームを止める
「……夢か」
そう小さく呟いて布団から足を出し起き上がる
コンコン
「椿ー入るわよー?」
母がドアをノックしてそう言い部屋に入ってくる
「おはよう久しぶりの実家ではよく寝れた?」
「おはよ母さん……うん寝れたよ」
そんな他愛ない会話をしながらリビングへ行き家族で朝食をとる
目玉焼きにウインナー、少し焦げた食パンに牛乳
いただきますをして焦らずゆっくり食べる
「お兄ちゃん今日何か用事ある?」
妹がそう俺に聞く
「ん、あぁ今日は……行かないといけないところがあってそう遅くはならないと思うけど」
「そっか18時までに帰ってきてくれればいいしゆっくりでいいからね!」
今日は俺の誕生日で誕生日パーティーをするからだろうその為に東京から実家へ帰ってきた理由の一つでもある
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「____じゃあちょっと行ってくる」
「いってらっしゃーい」
ガラガラ
パタン_
「…お兄ちゃんって急に誕生日の日必ずどこか出かけるようになったよね」
「そう言われるとそうねぇ何してるのかしら」
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花屋でユリ、カーネーション、アイリスの花を買って山の方へと向かう
山の奥をずっと進んで途中によくみないと分からない抜け道がある
その抜け道を進みまた少し歩くと_____
「…ここも全然変わってないな」
抜け道を出た先は1面花だらけ至る所に蝶が飛んでいるまるで天国のような場所
「俺と菫さんだけが知る…秘密の場所…菫さんはここを私の天国なんて言ってたな…」
俺の誕生日である8月31日は9年前に亡くなった蓮見菫の命日でもある。だから俺はこうして自分の誕生日の日は2人しか知らないこの場所へ来て花を添えている
当時菫さんは17で俺は15の時7月6日にここへ迷い込んだ俺はこの天国で眠っている菫さんと出会った
菫さんはいつも優しくていつも笑っていた。そんな天使のような人が何故自殺をしたのか今も分からない。あの優しい笑顔の裏に何かが隠されていたはずなのに当時の俺は気付けなかった。
「なんで…自殺なんかしてしまったんですか。……どうして俺は何も気付いてあげれなかったんだ」
「……ごめんなさい」
拳を握りしめてそう呟く
何も知らない俺が謝っても意味なんかないのに
(……あの頃に時間が戻れば…そうすればきっと……)
なんて
「……非現実的すぎるな」
ポツ ポツ
上から水が落ちてきた
雨だ
酷くなる前に帰らなければ風邪を引いてしまう
「じゃあもう帰るね菫さん」
「……またね」
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「お兄ちゃん誕生日おめでとう!!」
「おめでとう!」
そう言いながら鳴らすクラッカーで外の強い雨の音はかき消される
「ありがとう」
机の上には美味しそうなご馳走と少し形が歪な誕生日ケーキ
ケーキはきっと妹が頑張って作ってくれたのだろう。その気持ちだけで腹一杯になるくらい嬉しくて笑がこぼれる
「はいこれプレゼントたまには息抜きしなさいよ」
「私からもお兄ちゃんにプレゼントどーぞ」
母は息抜きには丁度いい小説
妹は猫と月のイラストが描いてあるマグカップ。可愛らしい
「2人ともありがとう大事にするよ」
2人に貰ったプレゼントを隣のイスに置きご馳走やケーキを家族で味わった
パーティーが終われば後は普通俺がお風呂に入り出たら妹に次入るよう呼びかけ後は自室に篭もる
「葵の奴前にマグカップが割れたって話したの覚えてたのか良い妹をもったな…俺」
リュックの中にマグカップが割れてしまわないよう大事に仕舞う
この際実家にある自分の小説ある程度家に持ち帰ろうと本棚に手をかける
「……これは…」
本棚の中に1つのアルバムがあった。そのアルバムは15の時の俺が菫さんを撮影したものだその時俺はカメラにハマっていたのもあってそして菫さんが絵になるくらい綺麗なのもあってよく彼女の写真を撮っていた
「…自然な感じに撮りたくて俺すげー頑張ってたな確か…」
写真の中には菫さんが気持ちよさそうに居眠りしている写真もあった寝顔がこんなに綺麗な人なんてホントにいるんだなと思う
「菫さん……」
「俺…あの頃はまだ子供で貴方と普通に話すので精一杯でしたけど……」
「俺菫さんが今でもずっと…ずっと好きですよ」
彼女の写真を胸に包みながらそう呟いて俺は眠ってしまった
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ビリリリリリ ビリリリリリ
(……うるさい…)
スマホのアラームはこんなにうるさかったか?
これはどちらかと言うと目覚まし時計に近い
「椿!目覚まし鳴ってるでしょ!!さっさと起きな!」
「ん…なに母さん…今日午前から何か用事あったっけ?」
こんな口うるさく起こしてくるなんて何年ぶりだろ_____
「用事ってなに言ってるの早く起きなきゃ学校!!遅刻するよ!」
_____学校?何を言っているんだ
布団から起き上がると菫さんの写真がないことに気づく
それだけじゃない部屋の雰囲気がまるで違う。壁には学ランがかけてあって机には高三の時に壊れてしまって捨てたはずのカメラがなぜか置いてある
急いで洗面所に行き鏡で自分の顔を確認する
「嘘だろ……?」
中学生の頃の俺に_____
戻ってる____?