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部活疲れて眠い主です。
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訓練が終わるが、輝に話しかける者は誰もいなかった。
輝にとって逆に好都合だった。
夕闇が校舎の影を長く引き延ばし、燃えるような茜色の光がアスファルトを刺している。
訓練を終え、誰もがそれぞれの「課題」や「高揚」を抱えて帰路につく中、
輝は校門の陰に、溶け込むように身を潜めていた。
視線の先には、肩を震わせながら歩く爆豪勝己と、それを必死に追いかける緑谷出久の姿がある。
爆豪が何かを叫び、涙を流しながら「ここからだ」と己のプライドを繋ぎ止めようとしている咆哮も、
緑谷の決意に満ちた返答も、輝の耳には届かない。
だが、輝には見えていた。 かつて自分と同じ「持たざる者」として蔑まれていたはずの少年が、
今は眩いばかりの光を放ち、宿命のライバルの背中を真っ向から追いかけているその姿が。
輝 「、、、あいつ。『無個性』だったのに。『個性』、あるんだ、、」
輝の指が、制服の袖を千切れんばかりに強く引き絞る。 絶望的なまでの格差。
同じスタートラインに立っていたはずだという思い込みは、あまりにも残酷な形で裏切られた。
緑谷には、手を差し伸べてくれる者がいた。力を託してくれる者がいた。
そして、何より彼には、未来を信じる「才能」があった。
輝 「(はは。、、なんだよ、それ。、、結局、あいつも
『あっち側』に行っちまったのかよ、、、)」
自分だけが、ずっとあの暗い路地裏に取り残されているような。
自分だけが、ずっとあの冷たい雨の中に立たされているような。
自分だけが、ずっと血の匂いのする部屋で震えているような。
自分だけが、狭い押し入れに閉じ込められているような。
自分だけが、ずっと壊れた刀の破片を拾い集めているような。
自分だけが、ずっと止まった時計の針を見つめているような。
自分だけが、ずっと出口のない泥濘を這いずっているような。
自分だけが、ずっと名前のない怪物として蔑まれているような。
自分だけが、ずっと凍てつく檻の中で明日を拒んでいるような。
自分だけが、ずっと届かない光に手を伸ばして溺れているような。
自分だけが、、、ずっと独りぼっちで、復讐だけを抱いて生きているような。
輝 「、、っ、」
胸の奥からせり上がる、焼けるような熱。
心底からの嫉妬、焦燥、そして、どうしようもない悲しみ。
あんなにも憎んでいたはずの「日常」が、今の自分にはあまりにも遠く、そして美しすぎる。
輝の目尻が、急激に熱くなる。 視界が歪み、一滴の雫が零れそうになった瞬間、
彼は咄嗟に深く首を垂れた。 長い前髪がカーテンのように顔を覆い、
その「高校生らしい、儚い表情」を外界から遮断する。
187cmの身体をこれ以上ないほど小さく折り曲げ、誰にもその惨めな姿を見せないように、
必死に嗚咽を飲み込んだ。
相澤 「いつまでそこに突っ立っている」
輝 「、、っ!? 、、あ、あぁ。、相澤、先生、、」
背後から低く響いた声に、輝の肩が大きく跳ねた。 振り向くことはできない。
今、顔を見せれば、自分がどんな無様な顔をしているか、鋭いこの教師には一瞬で見抜かれてしまう。
輝 「、、今、帰るところですよ、寄り道しないで、真っ直ぐ、支給された家に。」
相澤 「、、、」
相澤は何も言わず、輝の隣に立った。 輝が身構えるよりも早く、
相澤の大きな、節くれ立った手が、輝の頭の上に無造作に乗せられた。
輝 「ぇ、、?」
相澤はその手で、輝の丁寧に整えられたはずの黒髪を、これでもかというほど、
乱暴に、ぐちゃぐちゃに撫で回した。 それは「慰め」と呼ぶにはあまりに不器用で、
けれど、突き放すような冷たさもない、奇妙に重い掌の熱だった。
輝 「、、ちょっ、、何すん、だよ。、、眼鏡、ずれるだろ、」
不快感を口にしながらも、輝は相澤の手を振り払うことができなかった。
頭皮から伝わるその熱が、心に張り付いていた薄氷を、ゆっくりと溶かしていくのを感じていたからだ。
相澤 「髪が目に入って前が見えていないようだからな。
さっさと帰れ、日陰。、、ホークスが待ちくたびれているぞ」
相澤はそれだけ言うと、手を離し、ポケットに手を突っ込んで校舎の方へと歩き出した。
輝は乱された髪を直すことも忘れ、呆然とその背中を見送る。
一人になった校門の前。 輝は一度だけ、乱暴に腕で目を擦った。
そして、ぐしゃぐしゃになった髪を、今度は自分の手で、いつもの「隠蔽」のための前髪へと整え直す。
輝 「、、、、うっぜぇ、あー、マジで、、クソ教師、」
吐き捨てた言葉とは裏腹に、足取りは先ほどよりもわずかに軽かった。
夕闇の中へと消えていく、15歳の少年の背中。
相澤は校舎の入り口で立ち止まり、輝が去った道を静かに振り返った。
手元に残る、少年の髪の感触。 隠しきれなかった瞳の潤みと、己の宿命に絶望するあの危うい殺気。
相澤 「、、、更生の余地、あり、か。、、ホークス。、こいつもまだ、ただのガキだな」
相澤は小さく独りごちると、再び「合理的」な担任教師の顔に戻り、暗い廊下の奥へと消えていった。
2152文字。
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コメント
12件
相澤先生~!!優しい?かはともかくなんでいい先生なんだぁぁぁぁ!!
イレイザー!!不器用荷物程かあるって!?