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黄目線

僕が莉犬に引き取られる前、孤児院でずっと・・・僕と兄弟のような間柄の子がいたんです。橙色の髪と綺麗な緑色の目の、とってもきれいで可愛い子。普段はぽやぽやしていて危なっかしいのに、たまにすごく大人っぽくなるような子だったんです。ご飯の時も寝るときも、僕たちはずっと一緒でした。でも、あの子が先に引き取られて、その直後に僕も引き取られて、もう会えないのかなって思ってた時期もありました。

「ふぅはん、はへないの?」

「ちゃんと飲み込んでから話してください、ジェルくん。ちゃんと食べますよ、」

これが現在、ジェルくんと僕です。さっきまで話してたのは5歳くらいの頃の話。

なんと、ジェルくんの引き取り先の友人?部下?友人の方が近いかな、の方に僕は引き取られたんですよ!なので寂しがる間もなく、再会して・・・僕はジェルくんの引き取り先であるさとみさんをとても警戒してました。だって、自分が弟のように可愛がっていた子が急にどこの馬の骨とも分からないやつに引き取られたんですよ?ジェルくん危なっかしいし警戒するでしょう?

今もジェルくんは、久しぶりのお出かけにはしゃいでクレープを口いっぱいに頬張っている。・・・写真撮ってさとみさんに送ってあげよう。

パシャッ

「ん?・・・なんで撮んの?」

「さとみさんに送ろうと思いまして」

「え?!もっとかっこいい写真にしてや!」

「こっちのが喜びますよ。大丈夫、十分可愛いです。」

『え~?』って言いながらそわそわ気にしているジェルくんは問答無用で可愛い。さとみさんに送ったけど、忙しいのかまだ既読がつかなかった。まあその内お礼が来るでしょう。あの人、ジェルくんの何気ない日常ショット大好きですから。

そう、今でこそさとみさんにならジェルくんを任せられると思っていますが、警戒してたんですよ。本当に。めっちゃくちゃ。

回想

「お邪魔しま~す、さとみぃ、るぅとくん連れてきたよ~」

「おー、入って」

僕の引き取り人である莉犬に連れてこられて、大きなマンションに入った。インターホンからは知らない声が聞こえる。・・・本当にジェルくんに会えるんでしょうか?今朝、莉犬に『ジェルくんくんに会いに行こっか』と言われて、そわそわしたまま着いてきたのだ。

莉犬が何か話し終え、エレベーターに乗った。でもそのエレベーターは普段莉犬の家のマンションで乗るのとは違って、階数のボタンが一つしかなかった。

「ねえりいぬ、さん、ジェルくんに会えるの?」

「ん?もちろん!っていうか、莉犬でいいよ?さん付けしなくていいよ」

「・・・うん」

なんとなく不安で、このころは莉犬にもさん付けしてたんだよね。だって引き取られて3日とかだったし、どんな人かもよく分かってなかったし・・・。今は違うよ?莉犬にはすごくよくしてもらってるし、あこがれてる人の一人だ。

そうこうしているうちに着いて、ドアが開いた。

「いらっしゃ~い」

「いらっしゃっ!」

「お~!君がジェルくんか~!」

「おじゃま、します・・・」

着いた先は玄関で、そこにジェルくんがいた。桃色の髪の人に抱っこされて、ふわふわの服を着た笑顔のジェルくん。寂しかったのは、不安だったのは僕だけだったのかと裏切られたような気分になったが、それもすぐになくなった。

「る、うちゃん!!さとちゃ、おろして!」

「ん?おー・・・」

「ありあと!、るぅちゃん!!」

ジェルくんは僕の姿を見て、さとみさんに下ろしてもらって、すぐに僕に抱き着いてきたんだ。これをされたら裏切られたなんて言ってられなかったし思えなかった。それからが落ち着くまで、僕らは『よかった、また会えた』って言って抱きしめてたんだ。

「おーい、そろそろ上がろうぜ」

「るうちゃん、ここ玄関だよ?上がろ?」

「ぁ、はい!」

「うん!さとちゃん、だっこ」

「おいでジェル!」



そのままリビングまで通してもらって、オレンジジュースをもらった。僕の隣には莉犬、正面にはジェルくん、その隣にはジェルくんの引き取り人さとみさんだ。

「ほら、ジェル」

「はいっ、ジェル5さいです!」

「かわいい~~~!!」

「しょうらいは、さとちゃんのおよめさんですっ」

「おいちょっと待て?ん?ジェルくん、もう一回いいかな?」

「えー?しょうがないなぁ・・・しょうらいは、さとちゃんのおよめさんですっ!」

莉犬も僕もぽかんとしている中、さとみさんが嬉しそうにジェルくんの頭を撫でているのが異様だった。なんなら抱き上げて、頬にキスまでしている。『きゃーっ』って言いながら嬉しそうに笑うジェルくんは、そのままさとみさんの膝の上に納まった。

やっと、莉犬が動けるようになったみたいで、さとみさんを指さして震えている。

「え、さとみ、おま、あれガチだったの?!」

「なんだよ」

「5歳って、よめ・・・?え、冗談じゃなくて?」

「そ、俺の嫁、婚約者ってやつ。あの時お前呼んだやろ〜」

あ、また固まった。この問答を聞いて、漸く僕は動けるようになったんだよね。 5歳って言っても、お嫁さんの意味は理解してたから。ジェルくんに確認する必要があると思ったんだ。

「ジェルくん、お嫁さんになるんですか?」

「うんっ」

この頃、ジェルくんは舌足らずでしたけど、僕は違ったんですよ。だから余計に幼く見えてましたね。今もジェルくんの方が幼く見えますけど。

ジェルくんの嬉しそうな顔と返事を聞いて、どう聞けばいいのか困ってしまった。けどジェルくんがこの人に騙されている可能性もある。そう思って、あの時は必死だったんですよね。

「ジェルくん、お嫁さんって分かってますか?ずっと一緒なんですよ?」

「わかってるで?おれ、さとちゃんとずっといっしょにおりたいよ?」

「っ」

幼い印象から、急に大人っぽくなった。こうなったジェルくんには何を言っても無駄なことは分かっていた。でもどうしても、ちゃんと確認しないと僕が安心できなかったんです。

そんな僕とジェルくんを、さとみさんと莉犬は見守っていた。二人とも、止めようとはしなかった。それが大人の余裕に見えて、自分が一人駄々をこねているように見えてなんでか悔しかった。

「ほんとうに好きなんですか?」

「すきやよ?」

「ぼくよりも・・・?」

ジェルくんの目を見つめて、聞いた。ジェルくんは緑色の綺麗な目を更にまんまるにして、さとみさんの膝から降りた。 僕の手を握って、しっかりと目を見つめてくる。

「るぅちゃんもすきやよ?でも、さとちゃんはちがうすきなん」

「ジェルく、」

「るぅちゃん・・・」

ジェルくんの気持ちは分かった。でもさとみさんはどうなんだろう・・・そう思って、さとみさんを見ると、莉犬と真剣な顔で話していた。僕の視線に気づいて、ようやく話し合いをまとめたようだった。

「わかった、ジェルくんもお前も本気なら何も言わないよ」

「本気だよ」

「・・・」

「で、るぅとくんだったかな?」

ジェルくんに握られたまま、さとみさんに向き直った。そうだ、僕自己紹介もしてない。そう思ったけど、僕の名前を知ってたみたいだから、頷いた。

僕が頷くと、さとみさんは優しい笑顔を向けてきた。

「ジェルのお兄ちゃんなんだってな」

「・・・」

「そんな警戒しなくてもww俺はさとみです、よろしく」

「あ、よろしく、おねがいします・・・」

僕が返事をしたのを聞いて、ジェルくんはさとみさんの膝の上に戻った。その戻るとき、ふと気になったんです。そういえば、ジェルくんの髪を前はいつ切ったかなって。

孤児院には、僕が先に入って、その数日後ジェルくんが来ました。その時のジェルくんは男の子なのに腰まで髪を伸ばしていて、ぼさぼさでした。今よりもずっとがりがりで、目は薄っすら濁ってるみたいな、何をしても全く反応を返さないくたびれたお人形のような子だったんです。 だから僕は、ジェルくんに一言声をかけて、ぼさぼさの髪を切ってあげました。最初は慣れてなくて、パッツンの髪の毛だったんですけど・・・『目の前が明るくなった』ってジェルくんはとても喜んでくれて。孤児院の先生には怒られましたけど、それから僕はジェルくん専属の美容師になったんです!

「ぁの、ジェルくんの髪、切ってもいいですか?」

「「え?」」

「こじいんにいたとき、ずっとるぅちゃんにきってもらってたんやで!」

「そうなの?!」

「へぇ・・・」

リビングの空いたスペースに新聞を敷いて、その上に椅子を二つ置いてもらった。ジェルくんは鼻歌を歌いながら楽しそうに椅子に座って、莉犬とさとみさんはジッと僕らを見ている。

「ジェルくん、動かないでくださいね」「うんっ!」

一言告げて、いつものように鋏を通した。 初めて切った日、孤児院の先生からそういう本を買ってもらった僕は、その日から必死に読んで(漢字は先生にフリガナをふってもらってました。)、ある程度なら切れるようになっていたんですよ。2回目以降、かわいらしく、かつ僕と似たような髪型に仕上げたとき、ジェルくんは跳ねて喜んでたんだ。『おそろいっていうんやろっ?うれちい!』って。僕も嬉しくて、一緒に抱き合って飛び跳ねました。



「はい、できました」

「うごいていーい?」

「いいよ、」

「ありがと!」

「・・・上手いな、」

ジェルくんの服の上から被せていたビニールを取って、ジェルくんに返事を返した。すると、ジェルくんは僕にお礼を言って、さとみさんのところに向かった。『おれかっこいい?』なんて目をキラキラさせて聞いている。さとみさんは、あの頃は何とも思わなかったけど、デレッデレの顔でころちゃんの髪を手で梳いていた。『かっこいいし、めっちゃ可愛いよ』って、あっま!!

一通りジェルくんを見て満足したのか、ジェルくんを抱っこしたまま僕に近寄ってきた。僕は莉犬のズボンを握りしめて、さとみさんを見上げた。すると、さとみさんはしゃがんで目線を合わせてくれたんです。

「るぅとくん、またお願いしてもいいかな?俺、あんまり外出れないんよね」

「っ・・・はい!」

「るぅとくんすごいね~!俺も頼んでいい?」

「はい、もちろんです!」

「るぅちゃん、あそぼ!」

僕は褒められたのが嬉しくて、またジェルくん遊べることも会えることも嬉しくて・・・ジェルくんはいい人に引き取られたんだなって思った。さとみさんは本当に、月に1度は連絡をくれてそのたびに切りに行って、その内、僕が莉犬から携帯を買ってもらって。僕から切りに行く連絡をするようになったんです。




そうそう、これがきっかけで僕の将来の夢が決まったんですよね。

「るぅちゃん、おーい?送った写真みせてや。変なのじゃないか見るから」

「大丈夫ですって!そもそも、さとみさんはどんなジェルくんでも好きですよ」

「え、え~?」

そうだった、今日はジェルくんとお出かけしてましたね・・・。ついつい思い出に浸ってたよ。でも、これは僕にとって大事な思い出で。これのおかげで莉犬ともさとみさんとも打ち解けられたし、ジェルくんとももっと仲良くなった。そして、さっきも言ったけど将来の夢までできた。だから、思い返すことくらいいいですよね?

ふと、携帯が光った。見るとさとみさんからで、案の定お礼のメッセージが届いている。ジェルくんにも何か来たようで、顔を赤らめて嬉しそうに返事を打っていた。・・・これは長くなりそう。


まあ、今日は丸一日お出かけですからね。待ちますよ。 大好きな人にプレゼントを買いたいなんて、可愛い弟のお願いを聞けない僕じゃないですから。それに、僕もお世話になってる人にプレゼントしたいし。ってそうだ、プレゼント!

「ほらジェルくん、置いていきますよ!」

「あ、待ってるぅちゃん!」

僕はジェルくんの腕をひいて、ここらへんで有名なショッピングモールに向かった。そうそう、ジェルくん電車の乗り方覚えないんですよ。これに関してはさとみさんに文句言っても許されますよね?

次回♡500

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