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( ^ω^ )続き楽しみ〜!
「 潰瘍性大腸炎 」
もりょき
「 …いける?じゃあもう1回入るよ 」
ガラス越しのディレクターが合図を送る。
その横に並んで、じっと見つめているのはフルート兼キーボード担当の涼架。
彼の視線は、ブースの中に立つ少年 元貴
だけに注がれていた。
元貴は、透明感のある歌声で人気急上昇中のバンドアーティスト。
だけど、その身体にはいつも”秘密”があった。
「 っ…..く、 」
2度目のテイクの途中 元貴の眉がきゅっと歪む。
( …..またか。)
腹の奥が鈍く痛む。喉を震わせるたび、内臓をぎゅっと握られているような感覚。
それでも彼は歌いきる。
「 はぁ…..ッ 、は… 」
レコーディングが終わった瞬間、よろめいた元貴の身体を
誰よりも早くスタジオに飛び込んだ涼架が支える。
「 ねぇ、もう限界でしょ。顔 真っ青だよ 」
「 …だって、今日中に仕上げないと、」
「 せっかく作った曲…絶対に妥協したくないから 」
「 バカ、無理しちゃだめだって。 そうやって我慢して倒れられる方が僕も 皆も嫌だよ。」
元貴は何も言えず、ただ涼架の胸元に額を押し付けた。
「 …..トイレ、行かせて。すぐ戻るから 」
「 ダメ、今日はもう帰る。 お医者さんに診てもらう。ね?潰瘍性大腸炎、甘く見たら命に関わるって 元貴だってわかってるでしょ? 」
「 …..やだ。泣きそう 」
「 泣いてもいいから。メンバーの前くらい 力抜こう? 」
涼架は元貴の頬を撫でた。
その手はあたたかくて 少し震えていて
“僕が守る”という覚悟で溢れていた。
レコーディングブースに響くのは、今はただ 静かな呼吸だけ。
次に彼が歌うときは、ちゃんと笑って居られますように___
#3.「 声が、届くまで 」
ほんとにありそうなお話ですね。不吉だったらすみません。