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ヒトカゲ
4月4日の4時44分、サイレンが鳴り響く。
ウー、ウー、「今から2時間はヒトカゲの時間、ヒトカゲの時間です。」
繰り返す。
始めてこの街に来た時、サイレンの噂を聞いた。まさかそのサイレンを聞いてしまうなんて。これは隣人の人が言っていたのだが、どうやらサイレンが鳴ってからの2時間は光を放ってはいけないらしい。それが何故かは分からないが、兎に角駄目らしい。しかも、毎年最低でも一人はヒトカゲによって何かを奪われてしまうらしい。ある人は大切な物を、ある人は目を、ある人は魂を。毎年亡くしてしまうものが重大なものになっていっているらしい。そして、今がそのヒトカゲの時間らしい。私が街に来てから友達ができたのだが、その友達はスマホの通知をオンにしていたらしい。私の家の窓から見える友達の家の窓の向こう、何かが光った。スマホの通知だ。そして、スマホの光の向こうに影ができた。そして、その影はたちまち闇へ成り、人の影に成りすまして壁を移動する。あの子は、大丈夫かな。頭の中は噛み切れない不安でいっぱいで、吐いてしまいそうだった。私が友達の家の中を見ていると、友達のような影は家を飲み込み、家の中をまばゆい光でいっぱいにした。その光は、希望なんかじゃなかった。青い海のような炎だった。波のような陽炎が、闇を歪ませ、ヒトカゲを増やしていく。増えたヒトカゲは、トカゲの様な速さで家の周辺も闇に包み、波の立つ海で満たしていった。そして、それは私と友達の家にとても大きな境目が出来たようで、幻想的だった。
そして、気付いたら私は寝ていた。私の足は勝手に友達の家の方へと向かっていた。ただ、そこには何もなかった。そういえば、お母さんはこの島へ来ることを反対していた。
お母さん「るな、お母さんはあなたのことが心配なの。あなたがあの島へ行ってしまえばあなたは絶対に大切なものを失う…だから、あの島へ行ってはダメよ。」
お母さんの忠告をちゃんと聞いておけば良かった。
私まだ引っ越すことができない。住民たちのにその事がバレてしまえば何をされるかわからない。あの時見た波さえ見ていなければ私は幸せだったかもしれない。いつ私は生贄にされるのだろうか?
嗚呼、囚われの島、生贄の島。
私はこれからは住民として生きて行きます。