テラーノベル
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※監禁、執着、依存
水さんの様子がおかしいです。赤さんが可哀想。水さんにとってはハッピーエンド。
「ちむ、おはよう」
扉を開けると目に入る愛しい人の姿。
誰1人立ち入ることのない、2人だけの空間。ちむとれるしか居ないこの場所はまさしく楽園だろう。
挨拶をすればぴくりと身体を震わせておはようと返してくれる。おはようすら言ってくれなかったあの時と比べれば、随分素直になったものだ。
「朝ごはん食べようや」
「…うん」
さっき作ったベーコンエッグトーストとスープ、フルーツヨーグルトをお盆ごと机に置く。
和食の時もあるけれど、今日は洋食。ちむは少食だから量はあまり多くない。
「……いただきます」
おずおずとトーストを一口たべるちむ。れるはそれを机越しに対面で見ていた。
机の上にあるご飯は1食分だけ。れるは後で1人で食べる。
今は、れるが作ったものをたべるちむを見ていたい。
「…ん、おいしい……」
「そう?それならよかった」
もぐもぐと咀嚼するちむが可愛い。自分の作ったものが愛しい人の体内に入るって中々興奮せえへん?
れるが見ているからか少し食べずらそうだが、それもまたかわいい。
時々こちらをちらちら見つつ、全部平らげてくれた。
「ごちそうさまでした……」
「お粗末さま!」
ちむが食事しているところを見て満足したので食器を洗いに行こうと立ち上がる。
この後れるも食べようかな。
「…っぁ、れる、」
「ん?どしたん?」
「……食器片してからでいいから、話がしたい…」
「…うん、わかった!」
……またあの話かなぁ。最近は無かったから諦めてくれたと思ってたんに。
少しだけ重い足取りでキッチンに向かい、サッと食器を洗ってちむの部屋へ戻る。
その際も鍵の開け閉めだけは忘れなかった。
「ほんで、どうしたん?」
「……ぼく、やっぱり外に出たい」
「…………」
「…なんで?」
思ったよりも低い声が出てしまったらしい。ちむが怯えたような顔をしている。
「なんでれる以外が必要なん?」
「だってれる、僕から全部取り上げたじゃん」
「活動も、スマホも、パソコンも、全部」
涙ぐんだ声でちむはそう言う。
確かにれるはちむと外部と関わることができるものを全て切り離した。でもそれは他でもないちむとれるのためだ。
ちむが悪いものに絆されないように。ちむが悲しむことがないように。ちむが二度と自分を傷付けるなんてことがないように。
「前にも言ったやん、ちむのためやって」
「ここにはちむを傷付けるものはなんもないのに」
そう言ってちむを腕の中に収める。強張っている身体を宥めるように背中を摩る。
「っ、でも」
「ちむがそんなに出たいなら」
ちむの言葉を遮って少しだけ声に圧をかける。
「ちむのこと殺して、れるも死ぬわ」
「は、」
「そしたらこんなんせんでもちむは出て行かんし、ずっと一緒やん?」
ちむの喉あたりから、ひゅっ と息を吸う音が聞こえた。
ちむはこんなれるの考えを聞いて今何を思っているのだろう。
「なぁちむ。今ここでれるいっしょに死ぬか、生活するか、どっちがいい?」
我ながら酷い二択だと思う。
でもれるを歪ませたのはちむやから。
ちむがれるにあの時声をかけなければ、こんなことにはならなかったのに。
こんなんに好かれるなんて、かわいそうなちむ。
ちむは震えた声で生活することを選んだ。きっとまだいつかここから抜け出すことを夢見ているんだろう。
でも、れるがちむを見ている限り。ちむはこの鳥籠の中から出られない。
いつかちむがれる無しでは生きていけなくなるその時まで。
なぁ、ずっといっしょやんな?
大変お久しぶりです。
ここの更新はゆっくりですが変わらず続きますので、把握のほどよろしくお願い致します。
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