テラーノベル
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※心中、病、流血表現、同棲してる
グループは作ってない軸です。友情出演で橙さんが少し出てきます。
ずっと薄暗いです。赤さんがちょっとヘラってるし、水さんも許容してる。
一応水赤ですが、見方によっては赤水としてもいけるかも。
こんなに長くする予定ではなかった、ほんとうに。
「ちむ、話がある」
そう言われた月曜日。週初め。
今週も頑張ろう、そう思った矢先だった。
いつにも増して真剣な声色と眼差しは日常を壊すには十分すぎる要素で。僕の心は焦燥感でいっぱいになった。
「……話って」
「………」
普段暖かなココアを置いて雑談をするローテーブル。冷たい水ひとつ置かれない。
いつもは隣に座って顔を合わせるのに、今日はテーブルを挟んで話そうとしている。物理的な距離はもちろんだが、心の距離も遠いような気がして、いっそう不安になる。
別れ話か、また別の話か。色々な仮説を頭で立てても、そのどれもが僕にとっては苦しいものだった。
れるは、1呼吸置いて話し出す。
「…れる、もう長く生きられへんみたい」
「………ッ、は…?」
耳に届いた言葉は脳で処理するまでに多くの時間を使った。
文節ひとつひとつ、時間をかけて噛み砕いた。それでも、なにも変わらない。理解したものは想像すら容易く超えてしまった。
思わず出た言葉は、言葉とすら言えない空気のようなもので。
そんな僕をみて少し気まずそうに目を逸らし、話を続ける。
「…あと数ヶ月って、病院の先生が言っとった」
「な、んで……なんで、」
なんで、だなんて。
本人が1番知りたいはずなのに。そんな言葉しかでてこない。
いや、なんで気づかなかったのって、自分に対して聞いていたのかも。
「…ごめん、身体に違和感はあってん」
「だから今回病院も行った、やけど……」
「ちょっと、遅かったっぽい」
そう力なく笑うれる。
その顔があまりにも痛々しくて、見てられない。よくみてみれば窶れているようにも見えた。
…なんて、今気づいたところで意味なんてない。
「……ほん、とうに、なおんないの」
「…延命治療なら出来るらしいけど………」
「じゃあ、」
「いや、れるはやらない」
せめて、せめてすこしでもながく。
そんな気持ちを込めて放った声はれるが食い気味に遮った。
「っ、なんで?」
「……いずれ、れるは動けんくなる」
「今はこうやって話せても、声すら出んくなる」
「そうなるくらいなら、今のれるのままで死にたい」
やだって、言いたかった。
僕のために生きていてって言いたかった。
でも、その気持ちがわかってしまったから。れるの気持ちが痛いほどに理解できてしまったから。
れるの気持ちを否定することなんて出来なかった。
「なんも言わずに消えるんは、ちむが怒るかなって」
「だから、ちゃんと言おうと思って」
れるなりの気遣い。僕はそれを素直に受け取らなきゃいけない。
…受け取れない。受け取りたくない。でも、受け取ってあげたい。
相反する気持ちが幾度も心を往復する。
その結果、何も言えなくなった。
代わりに出てきたのは涙だけで、言葉はでてこない。
俯いて静かに泣く僕をれるは隣に来て強く抱き締めた。
・・・
ふと、デジタル時計を見る。
そこには金曜日の20時49分と表示されていた。あの報告を受けてからというもの、時の流れがあまりにも早い。
というより、この数日は生きた心地がしなかった。
確かに傍にれるはいるのに、いないような気がする。まだあたたかいのに、もう冷たい気がする。
…今も、れるが隣にいてくれている。
「…なぁちむ、今日はお出かけする?」
「……いい」
れるの優しさを素直に受け取れない。
いつまでも抜け殻みたいな僕に、れるは色んなことをしてくれた。
今日みたいに出かけよう!って言ってくれたり、僕の好きな食べ物を買ってきたり、ひたすらに話しかけてくれたり。
その全てに、僕は答えることができなかった。
その温もりを受け取ってしまったら、なくなったときに壊れてしまう気がして。れるを失うのが、より一層怖くなる気がして。
…好意に素直になれない性格も、あったのかも。
「………そっか」
そう言う悲しそうなれるの声を聞く度に胸がいたくなる。
ごめんね、って。こんな僕でごめん、って。言葉にできたらどれほど良かったか。
それでもそばに居てくれるれるが、健気で。言葉を飲み込んでしまったことに、酷く後悔した。
・・・
また、月曜日が来た。とはいえ、時計に表示される月の数字が進んでいるけれど。
気付けばあれから約1ヶ月が経とうとしていた。
…れるは、自室から出てくることが少なくなった。時々僕の部屋まで来て、あの時から変わらず傍に居てくれる。でも、来る度に、少しずつ窶れていく。鈍感な僕でも分かるくらいには、明確に。
時間なんてもう残されてないんだよ。
そう訴えかけられているようだ。いつまでも塞ぎ込んでちゃだめなのに。残りを大切にしなきゃなのに。
そんな時、僕の携帯が震えた。
「……もしもし?」
「ぁ、ちむ、俺だけど…」
落ち着いた声。耳にずっと入ってくる音が心地いい。その声の持ち主は、間違いなく旧友のものだった。
「…くにお」
「ちむ、ごめん…急に電話かけて」
「いいよ、なんかあった?」
くにおが僕に電話をかけてきたのなんていつぶりだろうか。結構最近話したような気がするし、遠い昔だった気もする。
…れるの、余命宣告の話。くにおもきっと知っているだろう。仲が良かったから。
その話か、慰めか。このタイミングの電話なんて、それくらいしか思いつかなかった。
「…いつまで塞ぎ込んでんの」
「え…」
優しいこいつのことだからきっと、大丈夫だよとか、治るかもしれない、とか。そういう慰めの言葉が来るんだと思っていた。
でも想像とは反して、聞こえてきた声は厚みを帯びていた。
「……ちむは、そんなんでいいの…?」
「れるちと過ごせる時間、無駄にしていいの?」
「………本当に、終わっちゃうよ」
終わり。その言葉を聞いた時、なにかが切れてしまった。
「っわかってるよそんなこと!!」
「僕だってわかってる、理解してる!!!」
「じゃあなんで!」
「…っ、こわいから、だよ……」
視界が滲む。声が揺れる。
れるから言われたあの日から、一度も流してなかった涙が零れた。声を荒らげたのだって、本当に久しぶりで。
きっと限界だった。揺さぶられて、溢れてしまった。
「…れるち、泣いてた」
「ちむに、言わなかったら良かったかなって…」
「…ッ、」
「ねぇ、俺にはこんなことしか出来ないけどさ」
「1回、気持ち全部話してみなよ」
「……うん、」
あたたかな声の主は、僕に心の隙間をくれた。
・・・
「…れるさん」
冷たくなってしまった廊下に響く自分の声とノックの音。
れるが僕の部屋に来るまでなんて、待ってられるわけがなかった。自分の足で、れるの部屋の前まで来た。
「……ちむ?」
以前と比べると明らかに弱い声。僕が僕の時間を止めてしまっていた事を改めて後悔する。自分以外は進み続けるというのに。
「…入ってもいい?」
「……ええよ」
一呼吸置いて、扉を開ける。
久しぶりに入った彼の部屋。流石はれると言ったところか、ある程度整理整頓されていた。少し前、入った時とさして変わらない。
……電気が付いていないことを除けば。
今の時刻は22時頃。真っ暗な部屋で、明かりという明かりは扉から差し込む廊下の光のみ。
「…れるさん、電気つけてもいい?」
「………うん」
渋々だが、了承を得られた。ぱちん、と音を立てて電気が付く。
僕も長らく暗い部屋にいたからか、普通の電気のはずなのにどうにも眩しく感じる。
何度か瞬きをして、やっと目が慣れてきた頃。れるを認識した時、言葉を失った。
「…ごめん、見苦しい姿見せて」
ベッドの上で布団を下半身にかけ、座っているれる。
頬につくった少しの窪みが、時間を感じさせた。健康的だった肉付きも僕より細くなって、やわく真っ白な肌も心做しかかさついたように思える。
「……やっぱ、見たないよな…こんな姿」
何も言わずに立ち尽くす僕を見てか、困ったように目を逸らす。
僕も同じように、目を背けてしまいそうだった。でもそれじゃあ何も変わらないじゃないか。
そう思って、れるに目を向けたまま近づく。
「……ちむ?」
僕がベッド横に立っていることによって、れるに影が落ちる。僕がそばに来たことに気がついたのか、僕の方を見た。
久しぶりに、目が合う。
瞳の奥は何も変わらなくて、ずっと見てきたあのれるで。
思わず、床に膝を付いてぎゅっと抱きしめた。
やさしく、こわれないように。でも、つよく。
「…どしたん?」
少し茶化すような声。それがずっとあたたかくて。気持ち冷たくなった体温。弱くなった力。それでも、寄り添い方は変わらなくて。
気がつけば、ぜんぶ、こぼれていた。
「っ、ぼく、やだ、やだよ…ッ」
「れると、ずっといっしょがいぃ、っ」
「ッ……やだぁ……っ」
れるの肩が濡れるのなんてお構い無しに泣きじゃくった。
1番苦しいのはれるなのに、僕が泣き止むまでずっと、ずっと撫でてくれた。
うしないたくない。こわい。れるといっしょがいい。このあたたかさにずっとふれていたい。ぼく、やだよ。
そんな気持ちが、この考えを生み出してしまった。
悪手…いや、好手かな。どちらかなんて、そんなことを判断できる頭は残っていなくて。
少なくとも僕は、名案だと思った。
「……ねぇ、れる」
「ん?」
「…僕もいっしょに、いく」
「…へ?」
「ぼくも、れるとしぬ」
「…は、」
間抜けな声。予想なんて微塵もしてなかったと言わんばかりだった。
そりゃそうだ。僕だって思いつきもしなかった。
でも、気づいてしまった。一緒に死んだなら、置いていかれる痛みも、その逆も。何も感じなくていいって。
「な、なにいってるん、そんなん…」
「だめ、でしょ?」
「そらそうやろ!」
ね、れるはやさしいから、否定すると思ってた。
でもね、そのやさしさは時に痛みを与えるんだよ。
「…ぼく、れると離れるくらいなら死んだ方がずっと幸せ」
「っ、それでも」
「……れるがいなくなった世界に、光なんてないよ」
大袈裟なんかじゃない。本気でそう思ってる。
れる以上なんてない。れるに近しくなることすらない。れるはれるしかいなくて、代わりなんて絶対に存在しない。
そう、確信している。断言出来る。
「…でも、」
「ねぇ、おねがい、僕も連れてって」
「…れる無しなんて、ないよ……」
「………」
・・・
あれから約1週間が経った、木曜日。
僕たちはあたたかなリビングで隣合って座っていた。
机には大量の睡眠薬と、それを流し込むためのアルコール。それと、もしもの時の包丁。薬は集めるのにかなり苦労した。
れるはもう車を運転できないから僕が歩いたり、タクシーを使ったり。気がつけばこんなにも時間が過ぎてしまっていた。
「…粒、こんなに飲める?」
「…れるを舐めんなよ?」
「はは、強気だね」
これから死ぬ人とは思えないような明るい会話。最後の団欒と言った方が良いか。
「…じゃあ、そろそろ飲もうか」
「れるより先寝るなよ」
「…もちろん」
2人一緒に、飲み始めた。
れるはやっぱり嚥下するのが少しだけ困難なようで、僕よりもゆっくり飲み進めている。僕はというと、一度に3錠のペースだ。
時々馬鹿みたいな会話を挟みながら、それなりにハイペースで進めていく。
おおよそ、20分が経った頃。
れるの手が止まり始めた。
「…れる?」
「…ん、……?ぅ、こぇく……」
ふわふわとしていて、呂律が上手く回っていない。れるは体重も落ちていたし、そろそろだろう。
「れるさん、おやすみなさい」
「ん………」
れるさんは、そのまま動かなくなった。それでもまだ、身体はあたたかい。今はただ眠っているだけでも、直に死んでしまうだろう。
…ぼくも、はやくいかなきゃ。
先程よりペースをあげる。
そこから更に20分が経過した頃。
「っぁ、き……た、」
酷い眠気、倦怠感。油断したら簡単に瞼が落ちる。ぐらぐら、脳が揺れる。
落ちようとする意識の中で、机に突っ伏すれるをソファにもたれさせ、包丁を手に持つ。
そのまま、れるの首を掻っ切った。確実に、死ねるように。もし生きてしまえば、今よりもずっと苦しむことになるから。
飛び散る血液は、赤くて、生温かかった。
「…ぼ、くも………」
れるの血液が付いた包丁を、自分の首に当てる。
そのまま、横にスライドした。
意識が混濁しているからか、感覚が無くなってしまったのか。不思議と痛みは感じなかった。
暗転する視界。弱くなる脈。これで終わりなんだと、直感的にわかった。
ぼくもすぐいくよ。
これで、ずっといっしょだよね。
お久しぶりです。
どうしてこうなった。
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学校行く前に見てしまったァー! ボロ泣きなんですけど!? 今からお弁当作るのに〜!