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まだ涼しい風が吹きつく春の日に、俺、”相場 祐希(あいば ゆうき)”は晴れて高校二年生になった。
______数日前の、新しいクラスにも少しずつ馴染んできた今日この頃。
祐希「ふぁああ…。」
「でっかいあくび、顔緩んでもうとるで。」
ちょっと特徴的な喋り方をするのは、俺の友人の一人、”阪田 遥人(さかた はると)”。一年生の一番最初に話しかけてくれた、陽気な関西人だ。誰の懐にもスッと滑り込めるような性格だが、正直裏が読めないし、泣かせた女の子の数も少なくなさそうだ。
祐希「昨日よく寝れなくて…。」
遥人「さよか?ゆーちゃん(祐希)なら膝枕したってもええよぉ。」
祐希「そ、そういうの恥ずかしいから!」
「ゆう、おはよう。」
教室の外から聞こえてきた声の主は、同じく俺の友人二人目の”髙橋 蓮(たかはし れん)”。無愛想で少し目つきが悪く、いつも頬に傷がついているため悪い噂も立っている。遥人の幼馴染、という形で繋がったのだがそれといった壁もなく、日々三人で仲良く過ごしている。
先程悪い噂がどうこうなんて言ったが、どうか勘違いしないでほしい。蓮が怖い人だなんていうのは大の誤解だ。話してみると、たまに抜けているところもあるけれど知的だし、不器用だけれどさりげない気遣いも多い。毎日顔に傷がついているのは、通行路によくいる野良猫に近づいて引っかかれているからだし、何をいったって、蓮はドがつくほどの純粋ピュアボーイだ。前に赤ん坊はコウノトリさんとやらが運んできてくれるということを長々と熱弁されたこともある。…まぁ、無愛想なのは認めるけれど。
そんな蓮とは一年生の時は同じクラスだったのだが、二年生になって離れてしまった。
祐希「おはよ、蓮。」
遥人「あ、れん♡僕寂しぃて死んでまうところやった。」
蓮「そうか。」
蓮は悪意もなしに淡々とジョークを避けると
蓮「ゆう、なんだか、元気がなさそうに見えるが。」
図星を突かれて、苦笑いしながら声を発する。
祐希「そうなんだよね、なんか最近寝つき悪くて。不幸の前触れかな〜。」
蓮「…そうか、なら気をつけた方がいいな。」
少し間を置いて、遥人が俺たちに向けて喋り始める。
遥人「そういえば、今日から生徒会役員なりたい子もう立候補してはんで。二人はなる気あらんの?」
蓮「あまり興味はないな、俺はしない。」
祐希「…俺はやりたいなとは思ってる…けど。」
遥人「へぇ、ゆーちゃんなら絶対投票選ばれるなぁ。頑張りや。」
蓮「生徒会か…似合うな。」
祐希「あはは、そうかな?」
友達に褒められて気分も高まったところで、朝のホームルームのチャイムが鳴る。
蓮「じゃあ、俺はこれで。」
遥人「ほなな〜。」
廊下を歩いていく蓮にヒラヒラと二人で手を振り見送った後、席へ戻る。
______
担任「それじゃあ、生徒会執行部の役員なりたいやつはこの紙に名前書いて、職員室前のボックスに早めに出せよ。」
前の人から流れてきた紙に署名して志を書き込むと、残りの休憩時間で職員室まで歩く。
祐希「よし…誤字脱字も見つからない…大丈夫。」
カサッと紙をボックスの中に入れて、その場を去った。
________「暇だし俺も入れよっかな〜、生徒会の仕事とか無理だけど。」
「志はちゃんと書き込むんだね…。」
「まぁ、めんどい仕事は後輩に任せればよくね?」
それから数日が経った頃、担任の先生に呼び出される。
担任「相場、今回の役員立候補してくれてただろ?」
祐希「はい。」
担任「それがな、立候補者は結構多かったんだが…書記係の投票はナンバーワンだったぞ。」
祐希「…本当ですか!」
期待していたのは事実だ、だからこそ嬉しい。
担任「初集会は明日の放課後、生徒会室で行われるから、忘れるなよ。」
祐希「はい、頑張ります!」
嬉しさを胸に、まずは蓮のクラスへ駆ける。
祐希「蓮!」
机にワークを広げていた蓮はすぐに俺の姿を捉えて立ち上がると、待たせないように早歩きで近づいてきてくれる。
蓮「どうした?」
祐希「あのね、生徒会入れることになったんだ!」
蓮「…。」
蓮は少し驚いたような表情をした後、またいつもの表情で
蓮「そうなのか、おめでとう。」
と言ってくれた。無表情だったものの、少し緩んだ顔は明らかに俺を祝福してくれていたと思う。
続いて自分のクラスへ戻り、自分の席で肘をついている遥人を見つけ駆け寄る。
祐希「遥人、俺生徒会受かったよ。」
遥人「せやと思った〜。ゆーちゃんが落ちるわけあらへんし、驚きもせんわ。」
その言葉にまた嬉しくなって、緩んだ笑みを直せずに笑う。
遥人「ま、程々に頑張りや。忙しなる思うけど、僕らの相手も忘れんといてぇな?」
祐希「そ、それはもちろん!」
まだまだこれからな俺たちの高校生活が、また桜を咲かせて幕を開けた。