夕暮れの街に、鋭い爪が迫る。愛梨は反射的にステッキを盾のように前に突き出した。
ギリッ──!
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
爆発するような眩しいピンクの光が、四方八方へ弾け飛ぶ。
衝撃に押され、愛梨の体が震える。
「っヴ……く……!」
膝が笑いそうになる。それでも――負けられない。
高層ビルの屋上から見下ろすアオメの瞳が、僅かに細められた。
(……ほう。まだ折れませんか)
息を荒げながら、愛梨は歯を食いしばる。
「……はぁ……っ、こんな……っ、こんな……っ!」
胸元のブローチがギラリと輝く。
「絶望なんかに、負けない!!」
制服のポケットから、ひとつの鍵が取り出された。
それは以前の戦いで手に入れた、ダイアのキー。
瞬間、キーがピンクとブルーの光を放つ。
「──マジカル・ダイア・アイス!」
足元から氷が広がり、モングーの動きが止まる。
凍てつく音が、街に響いた。
再びブローチが濃いピンクの光を放つ。
マイクステッキの先端が宝石のように瞬き、
光の粒が宙を舞い上がる。
愛梨はブローチを軽くトンッと叩いた。
タンバリンの音が弾け、ピンクのスポットライトが降り注ぐ。
一瞬で周囲はキラキラとしたステージへと変わった。
マジカル・ライブ・ショー、開幕。
彼女は笑顔で、声を響かせた。
「止まらないこの気持ち
赤道直下のときめき
私はハートの石
ほら君のところへ飛んでく
完全無欠の惑星
この気持ちだけは外せない外さない届けたい
私のときめき☆メテオストライク♪」
「──マジカル・アイリーン・ミラージュ!」
ステッキ先端のキーが、敵の胸の鍵穴にジャストイン。
眩い光と共に、モングーは昇華するように消え去った。
……残されたのは、宙をクルクルと舞い降りるひとつの鍵。 青色のルビーがきらめいている。
今回のキーはこんな感じ⤴︎︎︎
愛梨はそれを両手でそっと受け取った。
「……これ……私に?」
遠く、高層ビルの影。
黒いローブの少女、アオメが静かにその様子を見つめていた。
「……今日も、ダメでしたか。」
指先が震えている。
それは寒さではない。
冷静さの奥で、何かが確かに揺れていた。