その頃……『空中要塞 デスカウント』の中では。
「おい、グレー」
「何ですか?」
「なんかものすごい勢いでこっちに向かってきている女の子が二人いる……よな?」
赤い鎧と赤い四枚の翼と先端がドリルになっているシッポと黄緑色の瞳が特徴的な少年『ナオト』はグレー(灰色の炎の形態)にそう言った。
「うーん、まあ、そうですね」
「あいつらって、モンスターチルドレン……かな?」
「それはまだ分かりませんが、少なくとも天使と悪魔がこちらに向かって走ってきているのは間違いないですね」
「そうか……」
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)はそう言うと、その場で停止した。
二人の女の子は彼の前で停止すると、彼にこう言った。
「ねえねえ、出口知らない?」
「私たち、ここから出たいんです」
「待て待て。とりあえず、自己紹介をしよう。俺は『本田《ほんだ》 直人《なおと》』。お前らは?」
白髪ツインテールと金色の瞳が特徴的な美少女……いや美幼女はこう言った。
「私の名前は『リア』だよ!」
その後、黒髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女……いや美幼女がこう言った。
「え、えっと、私は『ロスト』っていいます」
「そうか、そうか。それで、お前たちはどこから来たんだ?」
「えっと、モンスターチルドレン育成所って分かるー?」
「ああ、知ってるぞ。最近、そこに行ってきたからな」
「そっかー。なら、私たちのことを言っても大丈夫そうだねー」
「それって、もしかして、二人ともモンスターチルドレン……だったりするのか?」
「うん、そうだよー。私は天使型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 零《ぜろ》の『リア』だよー」
「……え、えっと、私は悪魔型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 零《ぜろ》の『ロスト』です」
「ナ、|製造番号《ナンバー》 零《ぜろ》!?」
「ん? お前、何か知ってるのか?」
グレーは、彼の顔の前に移動すると、早口でこう言った。
「知っているも何も、あの『大罪持ち』よりも強いと噂《うわさ》されている伝説のモンスターチルドレンですよ! 強すぎるが故にモンスターチルドレン育成所から追放され、その後の行方は分からないと聞いていましたが、まさかこんなところにいるなんて……」
「そうか……。お前らはあそこを追い出されたのか。けど、よく生きてたな。何か酷いこととかされなかったか?」
「それなら、いっぱいされたよ。けど、もう嫌になったから出てきた」
「うん、そうだね。けど、あとはここから出られれば自由になれるね」
二人は、お互いの手をギュッと握ると、彼にこう言った。
「だから、お願い。私たちを助けて!」
「私たち、もうこんなところに居《い》たくないんです!」
彼は、二人の頭を撫でながら、こう言った。
「分かった……。あとは、俺がなんとかする。だから、俺から離れちゃダメだぞ?」
「うん、分かった。約束だよ?」
「ああ」
「えっと……その……よろしくお願いします」
「ああ、任せとけ」
彼は、その直後、グレーにこう言った。
「おい、グレー。こいつらをここから解放するには、どうしたらいい?」
「うーん、そうですね……。ここは、外側から破壊できても内側からは破壊できない仕組みになっていますから制御室に行って、制御ユニットを破壊する必要がありますね。ただ……」
「ただ?」
「そこには、私の兄でもあり、最強の幹部でもある『ブラック・ダイヤモンド』がいますからね……。そこに辿《たど》り着いても、返り討ちにされる可能性が……」
「よし、分かった。じゃあ、行くぞ」
彼はグレーの話を最後まで聞かずに進み始めた。
「ちょ……ちょっと待ってくださいよ! あの人の強さは底《そこ》が知れません! ですから、ここは対抗策を練《ね》ってから……」
「なあ、グレー」
「な、何ですか?」
「あのまちにいるモンスター化した人たちを元に戻すには、ここにある何かを壊す……もしくは誰かを倒すしかないんだよな?」
「ま、まあ、それはそうですが……」
「だったら、作戦なんか立ててる暇《ひま》なんてないだろ。今この時にも、あのまちの人々や建物が襲撃されてるし、俺の家族や仲間たちがそれをなんとかしようと頑張ってくれてる……。だから……」
「あー、はいはい。分かりました……。要するに、あなたは早くこの状況をなんとかしたいということですね?」
「まあ、そういうことだ……」
グレーは溜め息を吐《つ》くと、彼にこう言った。
「まったく、あなたという人は、どうしてそこまで他人のために何かしようとするんでしょうね」
「それは俺にも分からない。けど、これは昔からの癖《くせ》だから直すのは簡単じゃないぞ?」
グレーは、彼の真横に移動すると、こう言った。
「まあ、そうでしょうね。しかし、危なくなったら、逃げてくださいよ? ここであなたが死んでしまうとまちで頑張っているあなたの家族や仲間たちに、私が殺されてしまいますから」
「ああ、分かった。それじゃあ、行くか」
「はい、行きましょう」
その直後、ナオトとグレーは制御室に向かって進み始めた。
例の少女たちは、彼が進み始めるとその後を追い始めた。
*
その頃……『アイ』は……。
「なるほど。ここが組織のアジトなのね」
『空中要塞 デスカウント』の中に侵入していた。
「よくもまあ、こんな大きな物を……」
白というより銀に近いショートヘアと黒い瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『アイ』はそう言いながら歩いていた。
その時、彼女は『リア』と『ロスト』の気配を感じた。
「……あの二人……こんなところにいたのね……。ということは、今回の事件は全てここから始まっていたということになるわね……」
けど、モンスターチルドレンの血液を暴走させることなく抜き取るには、私が考案した手順が必要になるはずなのよね……。
それを知っているのは、私と三人いる副所長と『長老会』のメンバーだけ……。
その情報が漏れたということは、今|挙《あ》げた人物の中に、 裏切り者がいるということになるわね。
「まあ、私と三人いる副所長には、その秘密を誰かに伝えたら、即死級の魔法が発動するにしてあるから、必然的に『長老会』の誰かでしょうね……」
白いワイシャツと白いスカートと白い靴下と白い運動靴を身に纏《まと》ったモンスターチルドレンの生みの親はそんなことを呟《つぶや》くと、こちらに接近する未確認飛行物体の存在をいち早く察知した。
「……一応、戦えるようにしておきましょうか」
彼女はそう言うと、両手をグーにして拳を作った。
その直後、彼女の近くにあった壁が外から破壊された。
ぽっかり空いた穴から中に侵入してきたのは、赤いスーツと赤い武装と白髪ロングと水色の瞳が特徴的な美少女だった。(その直後、壁は自動修復された)
「……ねえ、あなた。もしかして『ブラッド・カルテット』に作られた魔導兵器……なの?」
「はい、その通りです。さすがは『五帝龍』を追い払った英雄ですね」
「英雄ですって? まあ、あの程度のトカゲも撃退できない種族には、そう見えるでしょうね……」
「あの程度……ですか。やはり、あなたの強さは底が知れませんね」
「そんなことより、そろそろあなたの名前を教えてもらえないかしら?」
「これは失礼しました。直《ただ》ちに実行します」
彼女は『アイ』に頭を下げながら、自己紹介をした。
「私は『ブラッド・カルテット』という頭の使いどころを間違えている人によって作られた魔導兵器『アリサ』です。以後、お見知りおきを……」
「そう……。ということは、何度もモンスターチルドレン育成所の場所を見つけようとしていたのも、あなたね?」
「はい、その通りです。『|純潔の救世主《クリアセイバー》』様」
「その呼び方はやめて。せめて、『アイ』と呼びなさい」
「了解しました。では、『アイ』様……一つよろしいですか?」
「何かしら?」
「あなた様は、どうしてこんなところにお越《こ》しになったのですか?」
「……それはあなた自身がそう思ったから、訊《き》いたの? それとも、今も私たちの会話を盗み聞きしているあなたのマスターがそう言ったから訊《き》いたの?」
とある研究所にいる『ブラッド・カルテット』は彼女の勘の良さに驚きを露《あら》わにしていた。
『ど、どうしてバレたんだ! こちらの音はそちらには聞こえていないのだぞ!?』
『……はぁ……。マスター、このお方は【人ではありません】。ですから、そのようなことでいちいち驚かないでください』
『そ、それもそうだな……。よし、それじゃあ、引き続きよろしく頼むぞ』
『……はい』
彼女は、そう言うと『アイ』との会話を再開した。(アリサとブラッドの会話は全て念話によるものである)
「申し訳ありません、『アイ』様。私のマスターは天才な部分とそうではない部分があるので……」
「気にしなくていいわよ。誰にでも、そういうところはあるのだから……。さてと、それじゃあ、私がここに来た理由を……いえ、話すよりもあなたのメモリに直接転送した方が早いから、準備してくれる?」
「分かりました……」
アリサは彼女の情報を受け取る準備をした……。
「準備完了です。いつでもどうぞ」
「そう……。じゃあ、送るわよ」
『アイ』は『アリサ』のメモリの中に、ここに来た理由が詰まった情報を転送した。
「……はい。たしかに、受け取りました。中を見てもよろしいですか?」
「ええ、いいわよ。ただし、前に進みながら……だけどね?」
「分かりました。では、参りましょう……」
その直後、二人は、ゆっくりと前に進み始めた。
*
二人は、廊下を歩きながら、こんな会話をしている。
「……なるほど……そういうことでしたか。それにしても『本田《ほんだ》 直人《なおと》』は本当に人間なのですか?」
「そうね……。モンスターチルドレンと一時的にとはいえ、合体できている彼は……たしかに人間じゃないわ。けど、それは彼の体がそうなだけよ。彼の心は普通の人間と大差ないわ」
「そうなのですか? しかし、そうだとしたら、なぜ彼はその力を自分のために使おうとしないのですか? 人は強大な力を手に入れた時、それを私利私欲のために使うと私のメモリには保存されていますが」
「そうね……。たしかに人は、愚《おろ》かでどんな生き物よりも残酷で臆病な存在だと思うわ……。けど、彼は違うわ」
「違う……。いったい何が違うのですか?」
「それはね……彼は、自分という存在がどうなろうと構わないっていう……意思の塊《かたまり》のようなものでできているからよ」
「それは自分ではなく、他者の幸福を望んでいるということですか?」
「うーん……それは少し違うわね。彼は、他者の幸福を望んでいるんじゃなくて、他の人が自分のように傷ついてほしくないから、他者を助けることに命を懸《か》けているのよ……」
「なるほど……。ということは、彼は強大な力と同時に強い意思をその身に宿している人物なのですね?」
「ええ、そうよ……。そして、私が唯一、心を許せる相手でもあるわ……」
「……そ、それは本当ですか? 人間などという下等な生物に恋をする気配すら感じさせない雰囲気を常に醸《かも》し出しているあなた様が……本当に……」
「何か問題ある?」
「い、いえ、別にそういうことではなくて、ですね。その……あまりにも予想してなかったことを仰《おっしゃ》られたので……つい……」
「……そう。なら、いいわ」
『アリサ』曰《いわ》く、その時の『アイ』の顔は、少しだけ笑っているように見えたという……。
「ところで、あなたはいったい何でできているの?」
「あー、その……た、例《たと》えば、この武装はこの世界で最も硬《かた》い金属を動きに影響しないように加工して、防御力と攻撃力を兼ね備えた物になっています」
「ふーん……それで? 他にはないの?」
「あー、そ、そうですね……。わ、私の体は、主に『イビルシープ』の細胞からできていてですね……。強者を前にすると、その都度、形状を最適化するように作られています……」
「なるほどね……。他には?」
「え? あー、そうですね……。あとは……」
『アイ』は魔導兵器『アリサ』の秘密を目的地に着くまで、ずっと聞き出していたそうだ……。
ちなみに『アイ』の戦闘力は測定不可能なので、彼女がいかに強かろうと相手にすらならない……。
しかし、新しい物への探究心には彼女も敵《かな》わないようだ。
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