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四月十八日……午前八時十五分……。

この日、ビッグボード国内でモンスター化した人たちがまちや人を襲う事件が起こった。

今から始まるのは、その事件のほんの一部である。


「まったく……どうしてこんなことになっちまったんだろうな……」


彼は、長くも短くもない白髪を触りながら、そんなことを言った。

彼の名前は『布田《ぬのだ》 政宗《まさむね》』。布田式抹殺術の使い手である。

白い半袖Tシャツと黒い短パンと黒いスニーカーを身に纏《まと》っている。


「そうですね……。でも、このまま放っておくわけにはいきません! ですよね? 兄様」


彼女の名前は『リル・アルテミス』。彼とは『はじまりのまち』で出会ってから、共に行動している。

黒髪ロングと白い半袖Tシャツと黒いスカート白いハイソックスと黒い靴《くつ》が特徴的な美少女……いや、美幼女である。


「ああ、そうだな。それに、あいつがここに居《い》たら、きっとそうするだろうからな……」


「あいつって、誰のことですか?」


「うーん、まあ、俺が目標にしていたやつのことだ」


「……そうですか。では、早速参りましょう!」


「ああ、そうだな。サクッと終わらせて、また温泉に入ろう」


その後、二人はトコトコとまちの中を歩き始めた。



「それにしても、モンスター化したやつらで溢《あふ》れかえってるよな。ここは……」


「そうですね……。けど、どうしてこんなことに」


ついさっきまで賑《にぎ》やかだったまちは、今やモンスター化した人たちによって、めちゃくちゃにされている。

あちこち傷《いた》んだ建造物や瓦礫《がれき》の数々がそれを物語っている。


「まあ、多分……あれだろうな……」


彼は、ふとそんなことを口にした。


「あれって、何ですか?」


彼女は、疑問符を浮かべながら、彼にそう訊《たず》ねた。


「あー、そうだな。これはあくまで俺が勝手に考えたことなんだが……聞いてくれるか?」


彼女は、うんうんと頷《うなず》きながら「はい! もちろんです!!」と言った。


「ありがとう、リル。じゃあ、まずは、このまちの上空にある乗り物について、説明しようかな」


彼はそう言うと、真上を指差しながら説明し始めた。


「俺もさっき気がついたんだが……このまちの上空には、でっかい乗り物が浮かんでるんだよ」


「えーっと、それはいったいどういう物なのですか?」


彼女は、真上を向きながら、そう言った。


「うーん、まあ、この世界には、飛行機もヘリコプターも飛んでないから……空に城みたいな物が浮かんでるとしか言えないな」


「お、お城が空に浮かぶなんて聞いたことないですけど、そのような物がこのまちの上空にあるのは、確かなんですね?」


「ああ、そうだ。そして、おそらく、それがこのまちの上空に現れたのは……モンスター化したやつらが現れた直前か直後だ」


「なぜ、そのようなことが分かるのですか?」


「うーん、まあ、それを説明するには、俺たちを取り囲んでいるやつらをどうにかしないといけないけどな」


彼はそう言いながら、モンスター化した人たちに目を向けた。


「に、兄様! もしかして、あの人たちをおびき寄せるために、わざと……」


「ああ、そうだ。口で説明するより、俺がこいつらと戦うのを見る方が手っ取り早いだろう?」


彼は、彼女にそう言いながら、ニシッと笑った。


「まったく……私が襲われたら、どうするつもりだったんですか?」


「その時は、俺がなんとかしてたさ」


「そうですか……。兄様らしいですね」


「はははは、褒め言葉として受け取っておくよ」


彼は、そう言うと指をポキポキと鳴らした。


「さあて、それじゃあ、始めようか。俺をがっかりさせないでくれよ?」


彼は、いつでも戦えるように拳を構えた……。



「それっ! はいっ! よいしょ……!」


彼は、モンスター化した人たちを拳で吹っ飛ばしていた。

その一撃は、光を連想させるかのように速く、そして鋭かった。


「おいおい、もう終わりなのか? こんなんじゃ、準備運動にもならないぞ?」


その直後、体長三十メートルの巨人が二人から数十メートル離れた場所に出現した。


「なっ……! 何ですか! あれは!」


「おいおい、マジかよ」


二人が驚きを露わにしていると、巨人に急速接近する物があった。

それは……二本の黒い槍だった。

二人がそれに気づいた時には、もう二本の黒い槍が巨人の両目を潰していた。

巨人は仰向けで倒れたが、不思議なことに被害はほとんどなかった。


「い、今のはいったい……」


「さあな……けど、少なくとも、あれくらいのやつはこのまちにいるってことだ」


そいつがその場に現れたのは、その直後だった。


「……兄様! 上です!」


「え? 上?」


リルの声に反応して、上を向いた彼が見たのは、黄緑色の何かが自分をペシャンコにするかのような勢いで落ちてくるところだった。


「おいおい、勘弁してくれよ……」


彼はそう言うと、一度、リルがいるところまで後退した。

空から降ってきたそれは、黄緑色の鬼だった。

それの赤い瞳は一つしかなかったが、体長は十メートルほどだった……。


「ど、どうしてこんなところに……」


「リル、どうした? あいつのこと、知ってるのか?」


いつのまにかガタガタと震えている彼女に、彼はそう訊《たず》ねた。


「あ、あれは、おそらく……サイクロプスです。今から三百年前に、この世界に突如《とつじょ》して現れ、当時の人口の約四分の一を殺したという伝説がある、一つ目の巨人です!」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


そいつは雄叫びをあげると、布田《ぬのだ》を睨《にら》みつけた。


「へえ、こいつがねえ……」


「に、兄様、ここは一度、退《ひ》くべきです! あんな化け物に勝負を挑《いど》む必要なんてありません!」


リルは、必死になって、彼をそいつから引き離そうとした。

しかし、彼の目には、この場から離れるという選択肢などないというものしか感じられなかった。


「なあ、リル」


「は、はい」


「絶対に勝てない相手が目の前に立ちはだかったら、どうする?」


「そ、その時は全力で逃げます」


「まあ、そうだよな。最初から負けると分かってんだから、普通は逃げるよな……。けど、俺はそんなことできないんだよ。なぜだか分かるか?」


「す、すみません。私には、分かりません」


「いや、いいんだよ。俺が普通のやつとは違うってことは俺が一番、よく分かってるから……。けどな、俺はどうやっても勝てない相手を目の前にすると、逆に燃えちまうんだよ。心臓の鼓動がいつもより高まって体がウズウズし始めるんだよ。まるで体が戦いたいって言ってるみたいにな」


「……兄様」


「だからさ、あいつと戦わせてくれないか? 勝てる保証はこれっぽっちもないけど、ここで退《ひ》いたら、絶対後悔する……。だから……」


「分かりました……」


彼女は、俯いたまま、彼にそう言った。

しかし、その後、彼女は彼の目を見ながら、こう言った。


「けど、死んだら許しません。もし、死んだら、地獄の果てまで怒りに行きますから、覚悟してください」


彼は、ニシリと笑うと、彼女にこう言った。


「ありがとう、リル。お前との約束……きっと果たすから、それまで少し待っててくれ」


「はい……分かりました。頑張ってください……」


「おう……それじゃあ、行ってくる」


彼は、そう言うとサイクロプスがいる方に向かって進み始めた。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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