「明日なんてあるか分からないものじゃぁないですか」
そう言って幻太郎は笑った。その笑顔はなんだか切なくて、幻太郎みたいに言葉を紡ぐのがうまくない俺にとっては「苦しそうな顔」そんなのしか浮かばなくて。
「だから、今…今ぎゅーしてくださいよ…もう、嫌なんです…待つのも待たせるのも」「ふふ、幸せです」
幸せそうな顔をして天を仰ぐ君を見てなんだか僕まで胸が締め付けられるような気分になった。(ああ……この人は不安なんだな)分かってはいても俺なんかがその不安を除ける確率なんて限りなく0に等しい。だからいつもみたいに馬鹿やって、いつもみたいに笑わせることしかできなかった。君は無邪気に笑うからその顔を見ながら何かがこみ上げてきてしまう。
△△△△△
「明日があるか分からない…か」眠そうな顔の幻太郎を見て今朝言っていた言葉がふと頭に過る。きっとこんなクズな俺に捨てられるんじゃないか、とかまた余計なことを考えていたんだろう。それで寝れなかったりしたんじゃないのか。でもそれを見抜いてしまう程俺は馬鹿ではない、それにこんなことを言ってしまったらお前はまたお決まりの嘘なんかを言ってごまかすんだろう。
「なァ、」
「なんですか?」
「あの…」
ずっと先の未来のことなんて…俺にはわからないけれど一つだけ。今日の僕から言えることがある
__明日の俺もお前が好きだよ…愛してる
「なんでもない」
「はい?」
わざと含んだ笑いをする俺を見て、幻太郎は眠そうな目を見開く。あぁ、ズルいやつでごめんね。でもそんな顔をする今日のお前も俺は大好きだ。俺だけしか知らないあんたの顔を、毎日少しずつ知れていることが嬉しくて。
いつか見放されて「愛して」なんて言うのはきっと君じゃない……。俺なんだよ。俺以上に人生を生きているお前の方が分かっていることじゃないのか?
わかりやすく強がりな帝統はそれに気づかないふりをした。
end
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