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「もうね、限界だったんだ」
病院のベッドの上で点滴を打たれながら、フェリシアーノは力無くそう呟いた。
「この世界で、これからも生き続けることに…………嫌気が差してしまったんだ」
「フェリシアーノ…………」
「だって、考えてみなよルーイ…………今の世界が、本当に平和で幸せな世界だって思う?」
虚ろな眼差しを俺に向け、フェリシアーノは続ける。
「自国の安寧だけしか考えない国や、欲望の赴くままに振る舞う国が増えて…………行き場のない人達や、虐げられている人達はそっちのけで…………国民も国民だよ、時に他者を傷付けることすらも厭わない、エゴイスト共ばかりでさ…………」
「…………」
「つまり、国も人間も馬鹿ばっかりの今の世界で…………この先も真っ当に生きること自体が、馬鹿らしくなっちゃったんだよ」
だから昨日、まるまる一瓶分飲んだんだ。結局生きてるけどね────昏い笑みをたたえた彼の表情は、正直見るに耐えられない、悲痛なものだった。
「もし死んだら、あの子に会えたのかなぁ…………」
「…………っ」
「あの子に会えたら、俺…………」
「…………フェリシアーノ」
俺は彼の手を強く握って、言った。
「俺が…………俺がいるだろう?」
「ルーイ…………」
「俺じゃあ駄目なのか?俺では頼りないか、フェリシアーノ…………」
俺が訊ねると、フェリシアーノは「違うんだ」と、首を緩く横に振った。
「ルーイは何も悪くないよ、寧ろ頼もしいくらい。でもそれ故に申し訳なくてさ、俺」
「…………何を申し訳無く思うんだ」
「俺みたいな、賢くない癖に延々と無駄に悩むような…………そんな面倒臭い人間と仲良くなったところで…………」
「っフェリシアーノ!!」
思わず出た叫び声に、フェリシアーノはびくりとし、目を大きく見開き固まった。
「否定なんかするな…………自分を、全てを…………っっ」
「ルーイ…………」
「そんな言葉を聞かされる、俺の気持ちを考えてくれ…………幾らこの世が絶望的でも、それでも生きるつもりでいる、俺の気持ちを…………」
「こんな時に言うのは卑怯かもしれんが…………俺はお前が好きだ…………好きなんだ…………」
握る手が震える。頬を熱い何かが伝う。
「だからもう、向こうに逝くような真似だけは、しないでくれ…………俺はお前と共に、幸せを求めて生きたいのに…………」
忽ち項垂れて、咽ぶ俺。そんな俺に、フェリシアーノは答えた。
「…………ごめんね」