テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
さぁ、いくつ見つけられたかな?
(ど素人がない頭を捻って考えた産物ですので、ないわ! と思ってもやさしく、やさしーく、でお願いします。)
つくづく馬鹿な男だと思う。
単純でナルシストで、少し自尊心を満たしてやればこっちの思惑通りに動いてくれた。あんなにも扱いやすい愚か者が、よくもまぁ俺と争おうなどと思ったものだ。
男は逮捕され、所属事務所からは解雇され、改めてうちの事務所に社長が直々に謝罪に来た。まぁうちの女神を傷物にするところだったんだから、個人的には死刑でも生ぬるいけれど、ここらで止めておかないと社長に叱られるだろう。
それに、涼ちゃんにあれ以上の実害が及ぶのは俺の望むところじゃない。怪我でもさせようものだったら容赦はしなかったが、あの程度なら許容範囲、それどころか好都合の範疇だ。
俺の怪我と若井への危害は、それとなく涼ちゃんに罪悪感を抱かせるにはもってこいだった。
実行犯が捕まったことで安心した涼ちゃんが隣に引っ越してきたことだし、結果は重畳。想像以上の成果だと言ってもいいくらいだ。
だから今日はささやかなパーティーを俺の家で開催している。自分の家でお風呂に入ってからここに来ると言った涼ちゃんを置いて、先にお酒を楽しんでいた。
内通者探しはチーフから社長に移行され、社長がそれとなく探している体になっている――いや、探すふりをしてくれている、と言った方が適切だろうか。
早く見つかるといいのだが、と言ってきたときから社長にはバレてるなぁとは思っていたけれど、そう願っていると微笑んだ俺の表情から全てを察してくれただろう。そのうちしれっと、内通者の名を伏せたまま、左遷か解雇の報告を受けるだろうな。
その報告が上がるまでの間、チーフに無駄骨を折らせるわけにはいかない。ただでさえ俺の怪我や涼ちゃんと若井への襲撃、ストーカー事件と気苦労に気苦労を重ねたのだから、無駄なことは社長に押し付けて、いつも通り俺たちのサポートに専念して欲しい。
存在しない内通者なんて、探すだけ無駄なんだから、さ。
喉を通り過ぎるお酒は、男の所属事務所からの贈られたお詫びの品だった。年代物のワインだというけれど、正直違いはよくわからない。まぁ嫌いな味ではない、ってくらいだ。
そもそものことの始まりは、俺の元に届いた1通の手紙だった。
化粧品メーカーとモデルの男の事務所に正式に抗議をし、化粧品メーカーからは謝罪文を受け取ったものの、男の事務所からは回答がなかった矢先に届いた手紙だった。
白い封筒に俺の名前が書かれ、ファンレターの中に紛れ込んでいた。膨大な量のファンレターを、事務所の人間が一度は確認するのだが、封筒の裏にはご丁寧にも男の名前が書いてあったから、謝罪文だと判断したのだろうか。この時点で馬鹿に磨きがかかっていると思ったね、俺は。
どんな馬鹿げたことが書いてあるあるだろうと、ワクワクしながら封筒を開ける。
“お前は女神にふさわしくない”
読んだ瞬間、込み上げる笑いを抑えることができず、1人の部屋で声を上げて笑った。
あぁ、なんて醜悪で愚劣なんだろう!
お前なんて、女神に近づくことさえできやしないというのに。
俺の忠告で逆に火がついちゃったのかな? 自分よりも歳下の若輩者に、まだこの業界に居たいでしょう? と言われてプライドが傷付いちゃったかな?
「ふふ……」
今思い出してもおかしくて仕方がないが、同時に感謝をしなくてはいけない。
あの手紙のおかげで、涼ちゃんの傍で腐臭を放つゴミを処理する算段がついたのだから。
男からのラブレターを大切にしまい込み、手始めにスマホで海外サーバーを通して涼ちゃんの偽アカウントを作成した。ぱっと見はその辺に転がっているアカウント。アイコンはキーボードの写真、名前はアルファベットで“F”の一文字。プロフィール欄には青リンゴの絵文字だけ。
たとえアイコンと名前から他の奴が疑問を持ったとしても、俺たちの写真を勝手にアイコンにする人間は後を絶たないし、Mrs.のファンだろうか、と思われるくらいだろう。幾度となくそれには言及してきた俺が、まさかなりすます日が来るなんて、とそれもまたおかしかった。
Mrs.の公式アカウントや俺たち3人のアカウント、それから適当にオススメに上がってきたユーザーをフォローして、涼ちゃんになりすましたアカウントが完成した。フォロワーなんて必要ない。情報収集のために作成したアカウントだと思われても問題はない。
男のアカウントに“F”からメッセージを送る。撮影でメンバーが迷惑をかけたことの謝罪、男の容姿の賞賛、写真が選ばれなかったことの落胆、そして俺の横暴さに悩んでいるという相談。あの手のタイプは下手に出て頼ってきた相手を無碍にはしない。涼ちゃんに興味を抱いて俺に直接攻撃を仕掛けてくるような奴だ、すぐに釣れるだろう。
反応を待つ間に男から送られてきた封筒と便箋のメーカーを調べる。ラブレターを書くならもっと可愛いやつに書いてくれればいいのに、百均で簡単に手に入るものだった。
ピロンと通知が鳴り、男からの返信を見ると、馬鹿みたいに低俗な言葉で涼ちゃんを賛美し、あなたを救ってみせると愚にもつかない使命感を滲ませていた。
その翌日から、俺は“F”として“元貴の横暴さに悩む可哀想な涼ちゃん”を演じ続けた。俺の家の住所を教えると、2通目以降の白い封筒は事務所を介することなく、直接俺の家のポストに入れられるようになった。うーん、ほんとうに馬鹿だなこいつ。救いようがなさすぎる。
宛名も差出人も書かれなくなったのは、名前を書くことであなたに危険が及ぶのがこわい、と“F”が言ったからだ。そうやって男が使った封筒と手紙を集めていく。男の筆跡を真似るために、届いた便箋の文字をスキャンし、データとして蓄積した。
涼ちゃんが使っていたボールペンを拝借し、男が撮影で使うスタジオと同じビルの中にあるスタジオや会議室を使用したときに、僕が使っているボールペンを非常階段に置いておくね、これで僕への愛を書いてほしいな、とメッセージを送った。意味不明で馬鹿みたいだが、恋愛ごっこを楽しむ男には刺さったらしい。
君からの愛を受け取ったよ、という返信を読んで、百均のボールペンだぞそれ、と爆笑しながら同じメーカー、同じ種類のボールペンを用意した。
そこからはそれとなくスケジュールを伝え、男とスタジオが被ったときは男からの直筆のラブレターを頂戴した。元貴がいるから抜け出せないし直接は会えない、と“F”から伝えておいたから、廊下にある貴重品ロッカーに入れるよう取り決めた。それなら自分のものを取り出すときにしれっと取り出せばいい。
とはいえ、元々向こうはモデルでこっちはアーティストだ。そう何度もスタジオがかぶることはないし、あれでいてあの男も忙しいようで、実際に受け取ったのは5通ほどだ。当然、使えそうなものは有効活用させていただきました。
満を持して涼ちゃんにストーカーがいると誤認させる日がやってきた。
ちなみに、偽造した“お手紙”の参考文献は、男から俺に送られてきてた文章だ。悪魔を退治しなければならない、とか、僕が天使を解放する、とか。誰の詩集を読んだらああなるのかね? 偏りすぎだろ。
“F”に宛てた文面も似たようなものだ。僕の女神、あなたに触れることが……思い出したら殺意湧いてきた。やめよ。
涼ちゃんが女神で天使で妖精なのは分かるけど、もう少し言葉のバリエーション増やせよアホ、と馬鹿にしながら捻りのない言葉を男の筆跡データを組み合わせ文面を作り、男に渡したボールペンと同じペンで便箋にしたため、男から俺に送られてきた封筒の中身を入れ替えれば完成だ。
あとは隙を見て涼ちゃんの家のポストに入れればいい。スケジュールを知らないわけがないのだから隙なんていくらでもある。
涼ちゃんの性格を考えれば、1度目はイタズラだと考えて捨てるだろうし、爪の話は気持ちが悪くなって捨てるだろうと踏んでいた。実際、1度目のものは捨てたと言っていたし、爪の話のものは捨ててあるのを俺がこの目で確認した。吐くとまでは思っていなかったから、それはちょっと可哀想なことをしたかな。まぁ、涼ちゃん自身の手で、俺が送った“お手紙”は破棄してもらった。
あぁ、ポストのダイヤルナンバーが俺の誕生日なの、可愛いよね。
涼ちゃんは勘違いをしているが、最近では郵便物は土日の配送を行なっていない。だから前日に仕込んだけの話だ。まぁ上に他の郵便物が置かれたとしても、衝撃は軽減するかもしれないけれど間違って捨てることはないだろうし、俺が一緒にいる手前隠そうとはするだろうから、さしたる問題ではない。
そうやって涼ちゃんの不安を煽りながら安心させ、男には撮影であなたと共演できたらいいのにとメッセージを送る。すると、男からチョイ役どころかほとんどエキストラと変わらない役を獲得できたと誇らしげにメッセージが送られてきて、馬鹿じゃねぇの、と嘲笑いながら、うれしい、とてきとうに喜んでおいた。そうしたら調子に乗った男から、事務所のアカウント宛に“僕と女神の邪魔はできない”ときたもんだ。
いやぁ、ほんとうに馬鹿で助かった。そして同時に、何があっても抹殺すると心に誓った。
その結果、血相を変えたチーフが俺に報告を上げ、俺の地雷を踏み抜いたあの構図が完成した。ごめんね、チーフ。
「なに笑ってんの?」
1人でニヤニヤする俺を見る若井の目が、大丈夫かこいつ、と物語っている。
若井のグラスに甘めの酎ハイを注いでやりながら、うまくいったなと思って、と答えると、あぁ、と頷いた若井が普段の若井からは想像がつかないほど昏く、それでいてうっとりと笑い、
「ほんと、どうしようもないクズだったな、あれ」
吐き捨てるように言ってから、甘ったるい味の酎ハイを飲み込む。
内通者なんてものは存在しない。存在しないけれど強いて“協力者”を挙げるとするなら、若井滉斗ということになるだろうか?
ね? 分かったところで処分しようがないでしょ? だから社長も探さない。そういう無駄なことはしない、ある意味ではひどく合理的な人だから。
涼ちゃんはきっと、ストーカーによって楽屋や控え室で盗撮や盗聴がされていると考え、使用する部屋はまちまちなのになぜそのつど相手にバレているのかと怪しんだことだろう。
至極単純な話で、俺と若井が仕掛けていた、というだけのことだ。
荷物を置くふりをして、じゃれあっているふりをして、小型の集音器やカメラを部屋の中に設置する。荷物の影に隠したり、ペン型のものを使用したり。そもそも堂々と写真を撮っていたって怪しくないしね、俺たちだったら。回収だって自分の荷物を取るついでにすればいいのだから容易いものだ。
だから小指の爪の話だって知っていたし、若井自身も画角に入るような写真だって、スマホひとつあれば遠隔で撮影が可能だった。
“昨日は愛していると言わなかった”というのは俺が偽造したメッセージではない。
涼ちゃんと電話を切ったあと“F”から“愛してるって言わなかった”と男に報告するようにメッセージを送ったら、目論見通りにあの文面が朝までに俺の家に届いたっていうだけの話だ。きっと嬉しかったんだろうなぁ、あのクソモデル。馬鹿だよねぇ。
まぁ今までに受け取った俺へのラブレターを活用すれば、充分涼ちゃんに恐怖は与えられたと思うんだけど、ダメージは大きかっただろうから俺としては運が良かったかな。
リップを拝借したのは俺じゃなくて若井だ。俺の計画を聞いてにこにこの笑顔で、俺は何すればいい? ゴミ処理手伝うよ? と協力を名乗り出た。全ての始まりがリップだと分かった瞬間に、じゃぁリップもゴミだねとリップを男に渡す算段をつけた。
ゴミはまとめて捨てようね、と笑う若井の笑顔は無邪気そのものだったのに、涼ちゃんがリップを使うたび、顔をしかめていたのがおかしかった。
涼ちゃんのリップが入っているポーチを見て、俺があげたやつ使ってるーと嬉しそうに笑ってたし、涼ちゃんの前でもその態度だったから、こいつもなかなかの役者だと思う。Mrs.でドラマも遠くないな。
リップはボールペンのときと同じく、男とスタジオが被るときにあなたと出会った日のリップ、とメッセージを送って、秘密裏に相手の元に届くように画策した。
男からすれば“出会った日のリップ“は俺にボコされたときのなくしてしまいたい思い出だろうから、劣等感から何かするだろうなと俺が静かにブチギレる写真を一緒に渡し、悪魔が僕たちの邪魔をするぴえんみたいなメッセージを送ってみた。
愚かさを極めた男から俺の元に、俺の顔が赤く塗り潰された写真がすぐに届き、ほんと予想通りに動くなこいつ、暇すぎんだろと馬鹿にしながらもありがたく使わせてもらうことにした。同封した手紙は“F”として貴重品ロッカーで受け取った手紙のひとつだ。
唯一俺が読み違えたのは、男の涼ちゃんへのメッセージの文体だった。
まさか敬語とは思わないじゃん。俺には散々暴言を吐いているし、“F”に対しては直筆の“お手紙”を含めて砕けた言葉遣いだったから。
「ねぇ、向日葵の花言葉、知ってる?」
涼ちゃんが控室に捨てたという花束は、警察からすれば残念なことに、俺からすればありがたいことにさっさとゴミ収集車に回収されて見つけることができなかったらしい。向日葵の花束と“僕の女神 向日葵の花言葉を知っていますか?”のメッセージカードは、男から涼ちゃんに宛てた、最初で最後の“本物の”贈り物だ。
「知らない」
どうでもよさそうに首を横に振る若井の目尻は赤く、酒に酔ってきていることが分かった。そろそろ水にさせようと、酎ハイとよく似た色の炭酸水を若井に差し出した。スマホで意味を調べた若井がうげっと顔を歪め、スマホの画面を俺に向けた。
「“あなただけ見つめてる”……クソかよ、見るな、穢れるわ」
「ほんとうだよね。てかさ、元貴、よくバレなかったね?」
「なにが?」
「撮影現場」
男が用意した向日葵の花束とメッセージカードの横に、できたてほやほやの手紙を入れた白い封筒を置いてきたときのことを言っているのだろう。
「ビビると負けるんだよ、ああいうのは」
場の空気に馴染めばいいだけなのだから、受付から堂々と入り、顔見知りの警備さんに藤澤が忘れ物をしてと入館証を借りてものの5分で退室した。男の後に入る必要があったけれど、朝一番に届けて欲しいとお願いしておいた甲斐があって、すでに花束は置かれていた。だから文面を見て、まちがえたか、と舌を打った。
ま、さしたる問題でもなく、涼ちゃんの手によってゴミ箱に葬られたわけだけど。
封筒を置きに行くのに下手な手を使わなかったのは、たとえ周囲にバレたとしても、涼ちゃんに気付かれたとしても、どうとでも言い訳ができるからだ。昨日の電話が心配で、とかね。
一応現場にいそうな人に扮装はしていたし、クランクアップの役者は涼ちゃん以外にもたくさんいたから、ああいうときの方が気付かれにくいのも分かっていた。群衆の中にいるときほど孤独を感じるように、周囲はこちらのことを見ているようで何も見ていないものだ。涼ちゃんが帰るときは地下駐車場までエレベーターで直行することは折り込み済みだから、警備さんから漏れる心配はしていなかった。バレたとしても、同じ説明は何度も要らないよね?
そういうもん? と感心したあと、だけどさ、と眉を寄せた。
「意識不明はやりすぎじゃないの。流石に焦った」
「俺もちょっと焦った。全身めちゃくちゃ痛かったし」
今でこそ、だいぶ痛みも引いたけれど、捨て身すぎたなと少し後悔していた。
クリエイターが来ていたことは嘘じゃない。スタジオの使用者のところに名前があったから、むしろこっちから連絡をしておいた。
涼ちゃんが追いかけてくることはわかっていたし、そのタイミングを見計らって連絡がくるようにメッセージを送っておいた。
クソモデルも“F”で呼び出し、俺がいることに驚いて逃げる男を追いかける俺の姿をクリエイターに目撃させ、非常階段に駆け込んだ男を追いかけるが、すでに姿はなかった。どうしたものか、と考えて、スマホを階下に放り投げた。ふっと息を吐いて倒れ込むように階段を転げ落ちた。
救急車で目を覚ましたとき、痛すぎてちょっと泣いた。目が覚めてなかったら計画が頓挫していた可能性があるから、これもまた、運が良かった。もう2度とやらない。
あとは涼ちゃんに俺の家に行ってもらうように頼み、若井に白い封筒をあたかもドアを開けたときに落ちてきたかのように落としてもらい、マネージャーから受け取ったタブレットから“悪魔から逃げてる、助けて”と男に連絡をすれば襲撃事件の準備は完了だ。
マネージャーが車で送っていようが、涼ちゃんが歩いて帰っていようがどちらでも良かった。
若井が涼ちゃんの傍にいて、男の襲撃を受けるという状況さえできあがればそれで。マネージャには悪いことをしたな、と少しくらいは思っている。
警察の介入を受け、涼ちゃんの口からストーカーの存在が語られ、家が危険だと判断したチーフがホテルを取り、俺がモデルの話を振る。若井は素知らぬフリをして、驚いて見せればいい。
話し合いが終わり、俺だけ1人病院に戻る前、ポケットに入れてきた、入院セットに仕込んでおいた涼ちゃんの家の合鍵をホテルの貴重品ロッカーに入れ、病院に戻ってタブレットから男にメッセージを送る。
“悪魔は退治できたから、明後日、僕の家で会おう”と。住所は伏せたまま。
翌日にはチーフから報告を聞いた社長が当然の措置としてそれぞれの家の鍵を交換した。
それを確認して、男に最後のメッセージを送る。
“今から行く”という返事を読んで、バイバイ、とアカウントを削除する。1ヶ月は情報が残るし、相手にも記録は残る。きっと男も警察も“F”という存在を探し始めるだろう。クソモデルに助けを求めた“藤澤涼架”を探すはずだ。IPアドレスでは特定できないから、せいぜい頑張ってほしい。
もちろん、涼ちゃんは何も知らないし、俺たちのアカウントも事務所が任意で提出したところで何も出てはこないだろう。
俺の元に届いた男からのラブレターはいくつか選別して提出した。都合の悪いものは漏れなくシュレッダーだ。指紋でも筆跡でもなんでも鑑定すればいい。俺がでっち上げた手紙は、もうすでに炎で燃やされて灰になった。
なにより俺たちは被害者だ。世論がそう認めてくれる。
うちの事務所が“F”の行為に対して被害届を出せば話は変わるが、おそらく社長はそれを出さない。うちの事務所の誰かがなりすまし、モデルにコンタクトをとっただけだと判断するだろう。大事にするのは得策ではないとかなんとか言って、しれっと終わらせるに違いない。
「ごめん! お待たせ!」
濡れた髪をそのままにやってきた涼ちゃんを若井と2人で見上げる。
「なんの話してたの?」
涼ちゃんの濡れた髪をタオルで拭いてやりながら、若井と顔を見合わせる。
ふわっと笑って、
「涼ちゃんの苦手な片付けの話」
と囁いた。
少しは片付け、上手になってよね。
終。
明日、あとがきで叫ばせてください……。
コメント
28件
どひゃー!?👀💥という私の叫び声、聞こえましたか?笑 察しの悪い私は、全く気付いておらず、魔王もですが💙様にも衝撃が、、、 でも、それをわかって読むと納得❣️笑 女神への新境地な愛の形が今出来上がったんだなとしみじみ思いました🫶
完結ありがとうございます!! ああ、やっぱり絡んでたんだ!!若様まで共犯だったとは!! モデルさんは結局そういう事だったのね💦って、上手く操作されてたんだなって思いました。私もモデルさんも😅 魔王様の『秘密』の中でのモデルさんへの怒り💢が凄過ぎて、これ、本当に社会的に…されるヤツだ…って思ったのを思い出しました、魔王なら、充分やりかねない。
いや、、天才すぎますよ??