テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
壬氏と猫猫が結婚して、数年が経った頃のこと──
医局から戻った猫猫は、いつものように居間へ向かった。
扉を開けた瞬間、その場で石のように固まる。
目に飛び込んできたのは、
壬氏が頭の高い位置で髪を二つに結っている姿だった。
しかも、水連と子どもが揃って楽しそうにその髪で遊んでいる。
水連に至っては、どこから持ち出したのか分からない高そうな髪飾りまで用意していた。
当の壬氏は、我が子に囲まれ、終始ご機嫌だ。
どうやら、すっかり遊び相手にされているらしい。
やがて水連が、猫猫の存在に気づいた。
「まあ、猫猫も」
そう言われたかと思うと、有無を言わさず猫猫の髪も二つに結われてしまう。
(……こんな髪型、私には似合わない)
猫猫は内心でそう思い、解こうと紙紐に手を伸ばした。
だが、その瞬間、壬氏が目に見えて動揺する。
その反応が妙におかしくて、猫猫は手を止めた。
結局その日は、一日だけ、壬氏と同じ髪型で過ごすことになったのだった。