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離婚します  第一部

11 - 第11話 新しい職場

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2024年10月29日

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仕事の始まりは9時からだった。終わりが18時。

初日に遅刻してはいけないと、早めに準備して出掛ける。


昨夜は缶チューハイで乾杯したあと、資格のガイドブックを読んで寝た。

ちゃんと読んだはずだけど、朝起きたらなにも記憶に残ってない。

マジか…。

これが年をとるってことなのかと思う。

若い頃は、特に高校生の頃なんて試験勉強は一夜漬けでなんとかなったのに。

とにかく、実践あるのみということかな。


「おはようございます!」


入り口に、ドアの鍵を開ける社長がいた。

さすが、社長が一番乗りのようだ。


「あ、おはよう、今日からよろしく頼みますね」

「はい、なんでも言いつけてくださいね、早く仕事をおぼえたいので」

「あはは、そんなにやる気なんだね、楽しみだよ」

「あの、それで、えっと…真島さんは何時ごろ?」

「貴なら、もう工場にいると思うから行ってみて」


入り口を入らず横から壁伝いに裏へまわる。

整備工場のシャッターが開いていて、中では何かの機械の音がした。


「おはようございます!」


大きな声で、挨拶をしてみる。


「お!おはようございます。早いね」


なんとも爽やかな笑顔で真島さんがあらわれた。


「そんな、真島さんこそ、もうお仕事ですか?いつも早いんですか?」

「まぁだいたい早めに来てるよ、そこの大通りは朝、渋滞するからね、それを避けてる」

「渋滞回避ですか?」

「そう!で、せっかく早く来たから時間を無駄にしたくなくて仕事してるってだけ」


真面目だ。

真島というだけあって、真面目な人だ、名前は関係ないけど。


「まだ始業時には早いから、コーヒーでも飲んでゆっくりしてていいよ」

「そんな、先輩が仕事してるのに新人ど素人の私がコーヒーなんて…。何か手伝います」

「そうか、まぁでも、作業着に着替えてからでいいよ、汚れてしまうから」

「じゃ、着替えてきますね」


話していて気が付いた。

真島さんの話し方が、他人行儀じゃなくなってる。

まるで親しい友達みたいな。

ただそれだけなのに、うれしくてそしてホッとした。


始業時間になって、みんなが集まって社長が私を紹介してくれた。

整備士見習いとして、雇いましたと。

うれしくて、そして身が引き締まった。


頑張るぞ!




転職してもうすぐ3ヶ月が経つ。

職場のみんなは私より若い人と私より上と半々くらい。

みんな、そこそこに仲良く、私のことも嫌がらずに受け入れてもらってだんだんと仕事にも慣れてきた。


「そこ、そういうビスを緩める時は、ドライバーをしっかり持ってまっすぐに回転させないと、ネジ山が潰れてしまうから気をつけて」

「はい、真っ直ぐ!ね」

「そう、ネジ山がなめてしまったら、取り外せなくなってしまうから」

「わかりました…ってか、前から思ってたんだけど、なめるってなんかイヤらしいよね」


思わず下ネタを言ってしまうのが私の悪いところ。


「はぁー、そんなことばかり考えているとミスするよ、ほら、さっさとやる!」

「てへっ」


私は真島さんのことを貴君と呼ぶようになり、貴君は私のことを未希さんと呼ぶようになった。

貴君は絵に描いたような真面目、なんでもきちんとした公務員のご両親だからとか。


真面目なうえに、正しいと思う。

私に足りないところを持ってる人だと思った。

もうすぐ40才になると聞いたから私よりは5才年下。

独身貴族(言葉が古いけど)。

車好きで、自分の車をいじり倒すのが唯一の趣味だと聞いたことがあった。

お給料のほとんどを、車の改造につぎ込んでしまうらしい。

独身の実家暮らしだから、出来ることなんだと思う。


「そうだ、前に話してた車好きの集まり、来週やるんだけど、見に来る?」


エンジンオイルで汚れた手をタオルで拭く貴。


「えっ!行っていいの?」

「うん、女の人も何人かいるよ。なんなら迎えに行くけど?あっ、人妻を迎えに行くのはダメだよね」

「人妻って言葉もいやらしいわ。でも大丈夫、うち、誰もいないの。旦那は長期出張とかであと3ヶ月は帰ってこないし」

「別におかしな関係じゃないから、いいかな?」

「うんうん、ただの友達だから」


スマホを開いて何やら確認している。


「じゃあ、今度の休み、月曜の8時に迎えに行くから」

「ホント?ありがとう!」


住所はね、とスマホのナビに入れておいた。


ただの友達、真面目で正しい、異性の友達。


そう思っていたのは、この時までだった。



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