「静かな怒りと、隠しきれへん嬉しさと」
※関西弁をうまく書けてないところがあります。多めにみてください‼️
稲荷崎の校門を出た瞬間、見慣れへん制服の女の子がこっちを見上げた。一瞬で気づいた。
――🌸や。
他校のはずの彼女が、鞄を抱えて立っている。
校門を出た瞬間、視界の端で人だかりがざわついた。
制服も違うし目立つんは当たり前やけど、周りの男子がちらちら見て、耳元でひそひそ言うてんのが聞こえた。
「誰やあの子…めっちゃ可愛くね?」
「待ち合わせか?でも相手どこや」
「こっちのやつちゃう?」
胸の奥で“カチン”と音がした。
表には絶対出さへんけど、腹の底がゆっくり熱くなる感覚。
……やめぇや。
人の女を無遠慮に見るな。
無表情のまま歩幅だけが少しだけ速くなった。
🌸はぱっと笑って手を振った。
「しんちゃん、おつかれさま」
胸の奥が、不意に温度を持つ。けど、周りの視線がまだ離れへん。
「……🌸」
声が自然と低くなる。
怒ってるというより、誰にも触れさせたくない気持ちが滲む声。
「なんで学校の前おるんや。
来るんやったら、先に俺に連絡せぇって……言うたやろ」
周りの男子の視線が、まだこっちに集まってる。
それが気に入らん。
「しんちゃんの顔…早く見たかったから」
そう言われた瞬間、胸がぎゅっとなる。
怒ってるんに、嬉しさが込み上げてきて顔に出そうになる。
けど、それをそのまま顔に出すわけにはいかん。
肩にかけていた荷物を少し持ち直し、わざと無表情を保ったまま近づく。
「……🌸。」
声は落ち着いてる。
注意してるつもりや。
けど、言葉の端っこに嬉しさがにじむのを自分でも隠しきれへん。
🌸は少し不安そうに、けど期待も混じった目で見上げた。
見上げた顔が可愛すぎて、
心臓が一瞬だけ止まった気がした。
その一言で、頭ん中の「反復継続丁寧」の全ルールが揺らぐ。
「……あかんやろ。危ないし、待つんもしんどかったんちゃうか」
一応、真面目に言う。
けど。
腕を掴んだ手に力がこもる。
引き寄せる強さが、自分の“嬉しい”を全部物語ってた。
「……それでも、来たんか」
「うん」
その“うん”が可愛すぎて、北は目をそらした。
耳の奥が熱い。
自然に唇が上がってしまうのを抑えられへん。
「そんな理由で、わざわざ他校まで来るやつがおるか」
「いるよ、わたし」
「……」
負けた。
言い返された瞬間、喉んとこが少し熱くなる。
そのとき、また背後で男子の声が聞こえた。
「北の彼女?マジかよ…」
「羨ましいって…まじ可愛いで」
……お前ら、ほんまにええ加減にせぇよ。
胸の中で小さく息を吸ってから、🌸の手を掴んだ。
周りに聞こえん声で、低く、短く。
「……見るな、言うてへんのにな。
ほんま、あいつら……」
強引にならへん程度に手を引き寄せて、距離を詰める。
誰も近づけへんように。
「……しゃあないな。
ほな、帰ろか。俺が送ったる」
本来なら「歩き疲れてへんか」「待ち疲れてへんか」まで確認する。
なのに今日は、それより先に言葉がこぼれた。
「……来てくれて、ありがとな」
言うた瞬間、🌸がぱっと笑う。
「しんちゃん、怒ってないの?」
「怒ってるで」
「えっ……」
「でも……嬉しさのほうが勝ってもうてるだけや」
北はそう言って、照れたみたいに視線を横にそらした。
その一言に、🌸がほっと笑う。
その笑顔を見た瞬間、周りの男子なんかどうでもよくなった。
手の温度を確かめるみたいに、指を絡め直す。
周囲の人がざわついてるのも耳に入るけど、もうどうでもええ。
「ほれ、手。離したら、また勝手にどっか行くんやろ」
「行かないよ」
「……ほんなら、ちゃんと持っとけ」
手をつなぐと、🌸の指がぎゅっと絡んでくる。
その瞬間、北の表情がほんのわずか柔らかくなった。
しばらく歩いてると🌸が
「ねぇ、しんちゃん」
「なんや」
「迎え来たの…迷惑じゃなかった?」
「……迷惑なわけあるか。
むしろ――俺のもんって周りの人に知らせれて満足やわ。」
🌸は嬉しそうに頬を緩めて寄り添って来た。
「……なあ、🌸」
「ん?」
「さっきはあんなこと言ったけど次からは、ちゃんと連絡して来い。
せやないと……心臓に悪いわ」
そう呟く声は、機械と言われる男に似合わへんほど優しかった。
コメント
2件
喜んでいただけて何より✌️
え、まじで書くのうますぎない?てか北さんなの嬉しすぎて鼻血出る まじなんで伸びないのか不思議すぎるんだけど!?