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📖 第五章:「嘲笑の影」
朝の教室に向かう廊下を、○○はゆっくり歩いていた。
だが、足音の一歩ごとに視線を感じる。
周りの生徒たちが囁き合い、チラリとこちらを見ている。
息が少し詰まる。
顔を上げると、誰かが小さく笑ったような気がして、心臓が早鐘を打つ。
教室の扉を押し開けた瞬間、冷たい水が背中にかかった。
○○:「――っ!」
驚いたが、体はすぐに落ち着きを取り戻す。
教室の中を見た。
数人の生徒が目を逸らしている。
罪悪感の色を浮かべる者、
ただくすくす笑う者もいた。
○○は黙って前を向き、濡れた服のまま席へ向かう。
しかし、目に飛び込んできたのは、さらに心をえぐる光景だった。
自分の机には黒いペンで落書きがされている。
嘲笑や挑発の言葉が散りばめられ——
「変な子」 「気持ち悪い」 「うざい」
そして、ひときわ目立つ文字。
「サエに近づくな。」
その文字を見た瞬間、○○は理解した。
これは、冴に近づく自分を妬む、あのファン——つまり、いじめをしてきた生徒の仕業だ。
唇を引き結ぶ。
昔なら心が震えただろう。
だが今は、ただ淡々と文字を追うだけだ。
これも、慣れた日常のひとつ。
○○は席に座らず、静かに立ち上がった。
黒く染まった机を背に、足取りは軽くはないが確かに屋上への階段へ向かう。
廊下を抜け、階段を一歩ずつ上る。
○○は手すりに手をかけ、遠くの校庭をぼんやり眺める。
誰もいない空間。
囁きも嘲笑も、ここには届かない。
そして、屋上の冷たい風に、○○は小さく吐息を漏らした。
○○:「……やっぱり、ここが一番落ち着く……」
○○が屋上の風に吹かれ、静かに校庭を眺めていると、足音が近づくのに気づいた。
振り返ると、冴が立っていた。
無言で、ただこちらを見つめている。
その視線が○○の濡れた服に止まった瞬間、冴の目が一瞬大きくなり、頬にほんのり赤みが差した。
すぐに落ち着きを取り戻すが、そのわずかな動きは、誰にも気づかれないほど短く、しかし確かにあった。
何も言わず、冴はブレザーを脱ぎ、そっと○○の肩にかける。
○○:「……ありがとう……」
言葉は小さいが、自然と胸の奥が少し柔らぐ。
冴は隣に腰を下ろし、静かに○○を見守るだけだ。
屋上の風だけが二人を包み込み、教室の嘲笑や囁きは、ここまで届かない。
ブレザーの温かさに○○は肩をすこし落とし、沈黙の中で心がほんの少し軽くなるのを感じた。
時間はゆっくりと流れ、風の音だけが二人だけの世界を静かに満たしていた。
END
コメント
1件
さりげなく優しい冴えちゃ…萌え(クソデカ)