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📖 第六章:「揺れる境界線」
昼休み。
教室のざわめきは、いつもより少しだけ鋭く感じられた。
○○は自分の席に座り、何もせずに窓の外を見ている。
朝の出来事は、もう遠いことのように思えるのに——
体に残る冷たさだけが、現実を引き戻してくる。
机の落書きは、誰かが消していた。
だが、完全には消えきっていない黒い跡が、まだうっすらと残っている。
「サエに近づくな。」
その言葉だけが、やけに鮮明に頭の中に残っていた。
○○はゆっくりと瞬きをする。
何も感じていないはずなのに、胸の奥が少しだけざわつく。
その時——
ガタッ。
椅子が引かれる音が、すぐ隣で響いた。
○○が視線を動かすと、そこには冴がいた。
まるでそれが当たり前のように、隣の席に座っている。
周りの空気が、一瞬で変わった。
ざわめきが小さくなり、代わりに刺さるような視線が集まる。
ひそひそとした声。
「なんであいつ……」
「まだ関わってんの?」
聞こえているはずなのに、冴は何も反応しない。
ただ静かに、前を見ている。
○○:「……いいの?」
小さな声。
消えそうなくらい弱い問い。
冴は少しだけ視線を動かし、○○を見る。
その目は、相変わらず静かで、感情が読み取れない。
冴:「何が。」
短い返事。
○○は少しだけ視線を落とす。
○○:「……みんな、見てる」
冴は一瞬だけ周りに目を向けた。
だが、すぐに興味を失ったように視線を戻す。
冴:「だから?」
その一言は、あまりにもあっさりしていた。
まるで、本当にどうでもいいことのように。
○○は言葉を失う。
普通なら、避けるはずだ。
面倒なことに巻き込まれないように、距離を取るはずなのに。
冴は違う。
何も気にしていない。
それが、逆にわからなかった。
○○:「……変なの」
ぽつりと呟く。
冴は少しだけ眉を動かしたが、何も言わなかった。
沈黙が落ちる。
けれど、不思議と嫌なものではない。
その時——
「ねぇ。」
突然、後ろから声がかかった。
空気が一瞬で張り詰める。
ゆっくり振り返ると、そこにはあの女子生
徒が立っていた。
朝の、あの視線の主。
冴のファン。
口元には笑みを浮かべているが、その目は笑っていない。
女子生徒:「まだ懲りてないの?」
柔らかい声。
だけど、その奥に棘がある。
○○は何も答えない。
ただ静かに見ているだけ。
女子生徒は一歩近づく。
女子生徒:「さっきの、見たでしょ?」
「サエに近づくなって意味、わかるよね?」
教室の空気が、じわじわと重くなる。
周りの生徒たちは、見て見ぬふりをしている。
誰も止めない。
女子生徒:「あんたさ——ほんと、空気読めないよね」
「気持ち悪いし」
「うざいし」
言葉が、ゆっくりと刺さる。
でも——
○○の表情は変わらない。
女子生徒の眉が、ぴくりと動いた。
女子生徒:「……何、その顔」
○○は静かに口を開く。
○○:「……別に」
小さな声。
感情のない響き。
それが逆に、相手を苛立たせる。
女子生徒:「は?」
空気が、さらに張り詰める。
その瞬間——
ガタッ、とまた椅子の音が鳴る。
冴が立ち上がった。
教室中の視線が、一斉に集まる。
冴は女子生徒を見た。
無表情のまま。
糸師冴:「うるさい」
たった一言。
低く、冷たい声。
女子生徒の顔が一瞬で固まる。
糸師冴:「話すなら外でやれ」
「邪魔」
感情はほとんど乗っていない。
だからこそ、その言葉は重かった。
女子生徒:「……っ」
何か言い返そうとするが、言葉が出てこない。
周りの視線が、自分に向いていることに気づく。
舌打ちを一つして、女子生徒は踵を返した。
女子生徒:「……ほんと、ありえない」
吐き捨てるように言い、教室を出ていく。
静寂が戻る。
重かった空気が、少しずつほどけていく。
冴は何事もなかったかのように席に座った。
○○はしばらく黙っていたが、やがて小さく口を開く。
○○:「……なんで」
冴は答えない。
○○:「……どうして、そこまで」
言葉が途切れる。
うまく言えない。
自分でもわからない。
冴は少しだけ考えるように目を伏せた。
そして——
冴:「別に」
冴:「気に入らないだけ」
短い理由。
それだけ。
でも、その言葉は不思議と—— 冷たくはなかった。
○○は何も言わず、前を向く。
胸の奥が、ほんの少しだけざわつく。
さっきまでとは違う感覚。
言葉にできない、曖昧なもの。
教室のざわめきが、少しずつ戻ってくる。
けれど——
その中で、二人の間だけは静かなままだった。
触れそうで触れない距離。
近いのに、まだ遠い。
その曖昧な境界線が——
ゆっくりと、変わり始めていた。
END
疲れたー))
#ブルーロック
コメント
1件
気ずけばニンマリしてた、こんな変態(?)なワテを罵ってくれ…