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「何を考えている?」
ギデオンに顔をのぞき込まれて、リオは紫の瞳を見つめ返す。
「なあ、ケリーに会える?」
「会ってどうする」
「なぜあんなことをしたのか、理由を聞きたい」
「そうか。俺かゲイルが立ち会うが、いいか?」
「…できれば一人がいい」
「ふむ…、ならば部屋の外にいる。それならいいか?」
「わかった。じゃあそれで」
魔法のことを話されたら困るけど、まあ何とかなるかとリオは目を伏せる。そして大切なことを忘れていたと、勢いよく顔を上げる。
「あっ、アンは?どこにいるの?」
「落ち着け。アトラスが遊んでやっている。それに怪我もない」
「よかったぁ」
リオは大きく息を吐く。
あの時は、サラッと見ただけだったから、それこそ骨が折れてたりしたらどうしようと内心とても不安だった。アンが無事で本当によかったと、もう一度息を吐いた。そして首を小さく傾ける。
「あれ?アトラスが遊んでるって言った?」
「ああ。だがあれは逆にアトラスが遊んでもらってる感じだな」
「アン、アトラスに|懐《なつ》いたんだね」
「そうみたいだな。アトラスが喜んでいたぞ」
アンが懐いたということは、アトラスは良い人だ。アンはきっと人の本性を見抜く目がある。だからケリーを嫌がっていたんだ。
アンに早く会いたいと思いながら、リオは部屋を見回した。
「なぁ、言われた通り安静にするけど、ここじゃなくて俺の部屋で休みたい」
「ここでいいだろう」
「だってギデオンのベッドじゃん。俺、邪魔だろ?」
「邪魔ではないし、夜にはここで寝るのだから、このままでいい」
「いやいや、夜はここで寝るからさ、今は俺のベッドで休みたい」
「ふむ、ならば夜にリオのベッドからここまで俺が運んでやろう」
「なんで!」
俺の足、折れてないから歩けるよ!なんで運ぶの?という言葉を続けようとしたその時、扉の外からゲイルがギデオンを呼んだ。
ギデオンはリオに「大人しく休んでろ」と言い置いて出て行く。
リオはゲイルに礼を言おうと身を乗り出したけど、ギデオンの背中に遮られて、ゲイルとは目が合うことなく扉を閉められてしまった。
「あー…、ゲイルさんにギデオンに知らせてくれてありがとうって、言いそびれちゃったな」
リオは俯き、包帯の巻かれた腕を触る。
今、魔法を使えば、この傷はすぐに治る。額も足の傷だって、すぐに治せる。たくさんの人に囲まれて暮らす城での生活は楽しいけど、本当の自分を出せなくて窮屈でもある。雨風をしのげ食べ物にも困らなく、賃金までもらえて最高の暮らしだけど、そろそろ旅に出たい。アンと一緒に、気の向くままに行きたい所へ行きたいな。
「アンを抱きしめたい」
ぽつりと呟いたその時、扉が開き隙間からアンが飛び込んできた。