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ここに来てから…3日ほどだっただろうか?
最初は多かった物資も、日に日に少なくなっていき、兵士も、私たち看護師も、十分に眠れない夜が続いた。街を占領して、新たな領地が出来るかと思えば…米軍が現地の者と結託して、攻めてくるようになった。
そんな時ー
「だ…誰か…たすけ…」
病院の入口で誰かが呻く声がした。
「今の声…兵隊さんかな!?私、行ってきます!」兵士の治療を他の看護師に任せて向かう事にした。向かおうとすると、待って…と声が聞こえた。
「な、何?」と振り向くと、声の主は怪我で横たわっている兵隊さんだった。
「独りだと…危ない…から…これを」
そういって手渡されたのは拳銃だった。
手渡された拳銃をポケットに入れ、「ありがとうございます。行ってきますね」と兵隊の手を握って話しかけた。そして、扉の前に立った。
拳銃を隠し持つためポケットに手を入れ、慎重にドアを開けた。
あれ?誰もたってないー…そう思っていたが、ふと地面を見ると、見慣れた制服を着た男性が倒れていた。足を撃たれて、腹這いになってここまで来たのだろう。地面には遠くまで血の跡が続いていた。
「大丈夫ですか!?今治療しますから!」
運ぼうとした瞬間、兵士が震えながら口を開き、
「向こうに…まだ…仲間…まだ息…ある……助けて…あげてくれ……」
そう呟いた。最後の力を振り絞ったのか、兵士はそうして動かなくなってしまった。
「トワちゃん…その人…」
後ろから声がし、振り返るとそこにはチヨが立っていた。血塗れで動かなくなってしまった兵士の様子を察したようだ。
「間に合わなかった。私がもっと早く…気づいていれば…」
悔やんだ。ここに来て数日、誰かが死ぬのはイレギュラーな事では無かった。でも、この瞬間は、いつも慣れないし、いつも怖い。
もう…誰か死ぬところを見たくない。
私が、助けてあげなきゃいけない。
「チヨちゃん、私行ってくる。この兵隊さんが、向こうにまだ仲間がいるって言ってたの。助けなきゃ…その人、お願いするね」
「えっ、トワちゃんー待っ…」
焦りからかー言葉を最後まで聞かず、血の跡を辿って向かった。
大丈夫。きっと大丈夫。拳銃だって持ってるし、看護師は国際法で守られてる。だから、絶対死なない。安心しろ…私…
そう心の中で唱えているが、私の足は震えていた
見つけるのは容易だった。血痕を辿ると、痛い、誰か…と倒れている人を見つけた。足が撃たれていて歩けなさそうだ。おまけに目の当たりが撃たれたのだろうか。うまく見えていないようだ。
「大丈夫ですよ!今助けますから。看護師です。看護師の中野です。直ぐに病院に運びますね」
「ああ…あ…ありがとう……」
兵士は唇を噛み締め、よかった、と呟いた。
(やっぱり、おもい…でも助けなきゃ。私が…私が…)
「ーーー!!!!」
なんの叫び声だろう。上手く聞き取れなくて、声のする方を見てみると、誰か、いた。
「だれ…?」何を持ってるのかな…あれ。知らない軍服だ。髪の毛…変な色。
あっ
敵兵だ
まずい!まずいまずいまずい…銃、貰った銃使わないと…あっ間に合わない。手が震えて…
誰か、誰か助けてーーー
その時、銃声が聞こえて、もう駄目だ、と目を閉じ、体が強ばらせた。
ーーー
あれ…痛くない恐る恐る目を開けると、もう敵兵はいなくなっていた。
「お前…どうしてこんなところにいるんだ!」
聞いた事ある声がした…これは
「は、波多野中尉殿…」
「敵兵がうるさいと思えば…早く行くぞ。」
「中尉殿、さっきの銃声は…」
「俺だ。俺が殺した」
そうして、負傷兵と、中尉殿と共に野戦病院へと向かった。助けようとしたのに、助けられてしまった。とても不甲斐なく、悔しかった。
けれど…
助けてくれた中尉殿の背中がとても大きく感じて、格好良かった。
あんな風になりたいって…思った。