GFハウス。この孤児院には38人の子どもたちが一緒に暮らしている。ただ、一般的な孤児院と違って教育に力を入れてるみたいで、毎日テストを受けるんだ。自慢じゃないけど、このテストで毎日満点を取る秀才、それが僕。ノーマン。まあちょっと自慢だけどね。
「ねえノーマン、私ねすっごい大人な本見つけちゃったの!」
同い年の女の子、エマがオレンジの髪を揺蕩わせながら僕を呼ぶ。
「大人な本?」
孤児院に、そんな教育を乱すような本は置かれていないはずだ。でも、万一年少組が誤って手にしたら困るな。
「確認しに行こうか、エマ。」
「うん!」
エマが、これこれ!と手にしたのは少し薄めの恋愛小説だった。ザッと見たところ、問題のある文はなさそうだ。
「エマはこれのどこを大人だと思ったの?」
エマの方を見てみると、ツァボライトのような瞳でこちらを見つめ返してきた。思わず目を逸らしてしまう。
「ノーマン、まさかわからないの?」
お子ちゃまだねーと僕を笑うエマの顔がおかしくて、僕は少し笑う。
「こ い び と だよ!! 」
斜め上を行く返答に、思わず口がポカンと開いた。
「恋人だよ恋人⁉︎ロマンチックすぎる!
私もいつか恋愛するのかな…!」
エマも年頃の女の子。恋愛に憧れる気持ちはあるだろう。でも、
「エマにはまだ早いかもね。」
なんだかもやっとする。何をー⁉︎と僕にやっかむ彼女を宥めながら、僕は自分の気持ちを理解することができなかった。
「ねえ、レイ。」
僕は、親友のレイにこの一件を相談することにした。僕の話を全て聞き終わると、レイは口を開いた。
「ノーマン、エマのかわいいと思うところ、全部挙げてみろ。」
「え?たくさんあるけど…まずは笑顔が素敵な所かな。なんか、夏の太陽みたいな感じがして。髪色も綺麗だよね。金木犀みたい。それに周りのことをよく見てるのに、自分のことには気づかないところとか、目が離せないよね。あとはー…」
「ノーマン、ストップ。」
突然、レイが僕の言葉を遮ってきた。
「なに?」
レイはうんざりとしたような口調で言い放った。
「お前、エマに惚れてるんだよ!」
惚れてる…?
「like?」
「loveだ、バカ!」
惚れてるって、恋愛だとかの?
「えぇえぇええぇ⁉︎」
僕が、エマに好意を?ありえない、エマは僕の大事な家族なのに。
「ていうか、自覚なかったのかよ?」
ありません。あるわけがない。
絶対今耳赤い。白髪だと尚目立つ。恥ずかしすぎる。そう言われてみれば、いつからかエマの目を真っ直ぐ見れなくなって、エマの身体を触らなくなって、エマの声が聞けたら自然と笑顔になって…。
「…うん、今わかった。僕の気持ち。」
「あ、ノーマンいたー!」
エマが草むらを自慢の俊足で駆けてやってきた。手には例の小説が握られている。レイがそそくさと逃げていった。
「え⁉︎ちょっとレイ!」
「ノーマン、あのね、私この本ママに見せたの!そしたらね!」
こうして彼女の話を聞いてると、やっぱり好きだという気持ちが湧き上がってくる。
「私が1番好きになった人を恋人にしなさいって言われたんだ!」
もやり。「1番好きになった人」って誰?それって…僕じゃだめかな?そう声に出そうとしたけど、エマのマシンガントークには勝ち切れなかった。
「だから私ね!ノーマンとなら恋人になりたいなって思うんだ!」
え?
「恋人って…僕が?」
「うん!だって、私レイやドン達も好きだけど、家族の中で、ノーマンがいっちばん好きなんだ!」
いっちばん…。レイやドン達よりも…。思わずにやけそうになるけれど、必死に堪えて僕は言う。
「僕もエマがいっちばん大好きだよ。 家族の中じゃなくて、世界で1番ね。」
その時、エマの顔がほんの少し赤らむのが見えた。「え…?」と慌てふためきながら僕を見るエマに、僕は笑顔を溢した。
コメント
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こういう系も書くのが上手いとは…ッ最強じゃん✨✨