テラーノベル
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第1話 君は誰?
ある真冬の日のことだった。
雪がはらはらと舞い、東京の街を、白く染めていく。
その様子を窓越しに見つめながら、君の手を握っていた。
酷く冷たくて、白く、ほっそりとした手。
「おらふくん…」
幾ら呼んでも返事はなくて、握り返してもくれない。
ベットサイドモニターが、君が生きていることを伝えている。
それを見ると、少しだけ安心する。
部屋がノックされて、ドアが開く。
「おんりー、そろそろ交代しようか?」
ドズルさんが部屋に入ってそう訊いてきた。
「…いや…大丈夫です」
「…おんりー、顔色悪いよ?おらふくん、おんりーが倒れたら悲しむよ…」
「…わかりました、よろしくお願いします」
渋々承諾することにした。徐に立ち上がり、ドズルさんに会釈をして病室を出た。
今日は本当に寒い。病院の中は暖房のおかげで暖かいけれど、ここにくるまでの道中で寒くて凍え死にそうになったくらいだ。
君が意識を失ってから、2週間と3日がたった。
僕の手は震えている。
毎日震えていて、細かいことができない。
コンタクトを入れられないから、眼鏡をかけてきたくらいだ。
おらふくんが意識を失った時からだろうか。
手が震えて仕方がない。
震える手で、力の抜けた手を握る。
さっきまでおんりーが握っていたのだろうか。
ほんのり温かい。
あれから3時間経った頃。
君は、少しだけ目を開いた。
「おらふくん…⁉︎」
「ーーーー?」
何かを話しているけれど、上手く聞き取れない。
「へっ…?ど…どうしたの…?」
「あなたは…だれ?」
ドズルさんからの電話。
慌てて出ると、ドズルさんの声は暗かった。
「ぼんさん…?おらふくんが…目を覚ましたよ」
「え⁉︎本当⁉︎やった、やったじゃん‼︎」
「でも…」
「記憶が…なくなっているみたいで…」
スマホが滑って床に落ちる。
その場に倒れ、声が出ない。
脚に力が入らない。この事実を知りたくないから。
「はっ…?いやっ…えっ…?」
「…ひとまず、病院に来てください」
なんとか立ち上がり、
いつものズボンとスウェットに着替えて、スマホと鍵以外何も持たずに家を飛び出した。
病室に、メンバー全員が集合した。
おらふくんが戸惑っている。まるで赤の他人を見るような目で俺達を見てくる。
「おらふくん、おらふくん‼︎俺達のこと覚えてないの⁉︎」
おんりーが泣きそうになりながら必死に問いかける。
「わからない…そもそも、おらふくんって…だれ?」
「そんなっ…そんな…そんなぁ…‼︎」
その場に崩れ落ちて涙を流すおんりー。
ここまで取り乱している姿は初めて見た。
「なぁ、これドッキリだろ…?嘘なんだろ…?誰かそうだと言ってくれよ‼︎」
menは悲しそうに声を荒げている。
「ごめんなさい…僕がみんなのこと、わからなくてごめんなさい…」
「いや、おらふくんの所為じゃない…自分を責めないで、おらふくん。」
ハンカチを手に、ドズルさんは掠れた声で慰める。
どうしてこんなことに?
こんなの間違っている。
神様、
どうして俺たちから、
幸せな日常を奪うのですか?
どうして俺たちから、
大切な仲間を奪うのですか?
窓越しに灰色の空を見ても、誰も教えてくれない。
主の戯言
なんでこんな完成したものをしまっていたんだろう、私は。
最近ずっと夏期講習に追われています。
(2025/08/09 浅間)
コメント
2件
目から汗が出てきました! (´;ω;`)