ぷりまぜ
『なぁー怖い話言っていい?』
「なにそれ、笑」
「いーけど?何話すん?」
『ん〜俺とぷりちゃんって別に付き合ってないんだよね。』
「「………………………ハァっ?!」」
そんなような話をしたのが先月の頭辺りで
声を大にして驚き叫んだぷりちゃんを除く4人には「いやいや、そんなわけないだろ」と最後まで突っ込まれ納得して貰えなかったが。
ま、なんでそんな話をしたかの理由はちゃんとある、安心して欲しい。
理由もなくわざわざ同じメンバーしかも男と付き合ってないなんて報告をしないし、その報告を受けた4人も信じられないと反応はしないはずだ。
俺とぷりちゃんは恋人同士では無い。これは紛れもない事実だ。それなのにみんなから恋人同士だと誤解されても仕方ないという原因がある。
「まぜ太〜」
ほら、きた。 聞こえただろうか。これが恋人同士だと思われている原因である。
砂糖とはちみつと生クリームとチョコレートとその他諸々の思い付く限りの甘味を鍋にぶち込んで煮たんか?と言いたくなる程甘い声色で俺を呼ぶのは同じAMPTAKxCOLORSのメンバーであるぷりちゃんだ。
普段のおちゃらけた様な雰囲気はなりを潜め
俺の前ではとろっとろの甘い顔になる。
瞳は潤んで熱を帯び、声にはわかりやすいほどの甘さと執着を乗せて、完璧に配置されたパーツ全てで俺の事を愛おしいと主張してきている。
俺とぷりちゃんは恋人同士では無い。
でもぷりちゃんがこんな調子だから誤解されるのは仕方ないんだ。
そう、きっとそうだ。
「まぜ太、なぁ、おい無視するなってば」
『なぁに、ぷりちゃん』
「ちゃん付けじゃなくて呼び捨てで呼べよ」
『俺の勝手だろ?』
「寂しいじゃん……」
『勝手にそこで寂しがってれば』
「傍にはいていいんだ」
『……』
「なぁ、まぜ太そばにいていい?」
これ、話噛み合ってねぇよな。
俺が呼び捨てしようが関係ないって話をしてたのに、いつの間にかそばにいてもいいのかの許可を求められている。ここで嫌と言っても何かと理由をつけて傍に居続けるのがこの男だ。俺が呆れて移動したら一緒に着いてくる。それなら適当なところで許容していれば面倒くささも少しはマシになるだろう。
『……はーー。まぁ別にイイけど』
「よっしゃ、んじゃあこっちきて? 」
『いや、普通に嫌だけど』
「なら俺からいくで」
『ちょ、来んな抱きついてくんなって』
両手を広げられたがすぐ拒否ればそのまま近づいて抱きついてくる。どれだけ引き剥がそうと力を込めても引き剥がせない。
俺の方が鍛えているはずなのに腹が立つ。
ため息をついてぷりちゃんに抱きつかれたまま指定された席を軽く引く。するとぷりちゃんが先に席に座っできたからまたため息を吐いた。俺の腕はなしていないから自分の膝の上に座れということだろう。前それで足痺れてたの忘れたのかよ。馬鹿じゃねぇの
『ぷりちゃん。これから会議なんだけど、大事な話するの。ふざけてる場面じゃないんだけど 』
「大丈夫やろ、みんなもう慣れてるしてかちゃん付けやなくて呼び捨てせぇや」
『はぁ〜〜〜〜……』
「まぜ太。早く座って」
まだ変なことを言ってるぷりちゃんを無視して待たせているほかのメンバーに目を向けると面白そうに笑っているのが2名。興味が無いようにしているのが2名と助けは求められなさそうだ。ちぐならリーダーだしまとめ役として叱ってくれそうなのに、ぷりちゃんの言う通り慣れてしまったのか茶化してきても咎めるようなことはないようだ。
そりゃあ確かに今日の会議はちょっとしたことを確認する程度でその後は雑談で埋まるような緩いものだけど、ここで甘やかしたら行けない、絶対。でもみんな席についているのに俺だけ1人たっているのは気まずく、結局ぷりちゃんの膝の上にもそもそ座るしかなくなってしまった。
「んじゃあ会議始めるよー」
俺が座った瞬間にちぐが声を張り上げる。どうかぷりちゃんが興奮しませんように、と祈るように目の前の資料に2人で目を向けた。
おい、早速近けぇぞ。離れろ
「やっぱさー2人が付き合ってないって無理あるよ」
『どう言われても付き合ってないってば』
「そうはいっても、ぷりほんとに付き合ってないんか?」
『無視すんな、俺を』
「ん、ああまだ付き合ってないでいづれ恋人にするけど」
『なんねーよ』
まぁ、付き合ってないと言える理性は褒めておこう。
「でもまぜもそんな嫌がってないじゃん」
「告白まちとか?」
『んなわけ、俺はもう諦めてんの。あと面倒臭いからぷりちゃんに変なこと言わないで』
「まぜ太、俺と一緒に子供産んでくれ」
『ほらぁー、クソだるいこと言い出したじゃん』
「まぜ太ぁ……」
『いい子だからクッキーでも食べて落ち着いてねー』
ぷりちゃんにテーブルの上にあったクッキーを食わせてやる。会議用に用意されたものだし食べていいだろ、多分。まぁぷりちゃんは躾が行き届いてるので食べてる間は黙っている。まぁその躾も俺がしたんだけど。ちゃんと躾の成果がでていると安心するな。まだ手綱は握れているんだって。また暴れられるのは勘弁であるし。
「ぷりちゃん、そろそろまぜちのこと離してあげなよ」
「……んぐ。いやや、ええ匂いするし離れたくない』
『はいぷりちゃんこれも食べて黙りな』
「あーん」
『やらねぇよ?』
「いや、そこまでいったらまぜも悪いわ 」
『人に改めて指摘されるとクるな。』
ほら、ね?さすがに俺も馬鹿じゃないからさ、ぷりちゃんがここまで調子に乗るのは俺にも原因があるのはわかってるよ?でもさ、言い訳させてほしんだ。俺だって別に望んででかい男を甘やかしてる訳では無い。
『今すぐ監禁されるのと手綱握るのならそりゃ一択しかないでしょ。』
「「うわぁ……」」
『これでもマシになった方だから。は人前でも平気でキスしようとしてきたし……』
「そんなんよく躾られたな」
「本能に忠実すぎるでしょ」
「そう、だから多少は許容してあげないと」
あんまり我慢させすぎると暴走し出すので適度に。ペットの躾本を見て身につけた知識だ。この対応が合っているのかは分からないけど暴走された時が怖いので現状維持できるものならしたい。
『……………あ。』
「ん?なぁに。まぜたん」
『ん、いや。なんでも』
そうか、俺が近くにいるからぷりちゃんが駄目になるんだ。なら物理的に距離をとればいい。そうすればぷりちゃんも頭が冷えるはず。目の前に興奮材料がいつまでもあるなら落ち着けないもんな。猫にまたたびを与え続けても酩酊状態が続くだけだ。 落ち着かせるには距離を取るだけでいい。
どうしてこの考えに今まで至らなかったのだろう。ぷりちゃんの躾に苦戦する前にさっさと離れればよかった。ちょうど実家に1ヶ月ほど帰ろうかと考えていたところだ。場所も遠いからぷりちゃんが追いかけてくることもないだろう。ぷりちゃんも少し冷静になれば俺以外の誰かに目を向けるか、それとも少し落ち着いて俺にアピールできるようになるだろう。突然監禁させてくれと言われた瞬間に逃げ遅れた俺の判断の遅さが悪い。とにかくお互い距離を取れば冷静になれるはずだ。
「まぜ太〜。」
『んー、なぁにぷりちゃん』
「好きだ。好き……絶対婚約者にする」
『はいはい』
上機嫌の俺は気づかなかった。
てきとーにぷりちゃんをあしらう俺にドン引きしてる4人にも、俺を抱きしめながらギラギラと目に熱を浮かべているぷりちゃんのことも。
なーんにも気づかなかったのである。
***
とりあえずここまで 反応良ければ早めに続き書きます。
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