人混みの中必死に人の波を掻き分けて前に進む。周りの美味しそうな匂いに誘惑されそうになりつつ、俺達は一心に焼きそばを目指した。
「毎度あり」
や、やっと買えた、、、流石夏祭りの代名詞といった所だろうか長い行列に並らび、やっとの思いで買えた。もう既にヘロヘロの俺の隣で虹一は美味しそうに焼きそばを啜っている。
「うまい?」
頷きながらなお焼きそばを啜り続ける虹一、相当美味しいんだろうな、俺も買っときゃよかった。虹一を眺めていると、いきなり虹一が俺の口に焼きそばを突っ込んだ。
「むぐっ⁉︎」
おいしい、、、じゃなくて!なんだなんだ急に。もしかして俺そんな卑しそうな顔してた⁉︎虹一は虹一で笑っていた
なんか虹一って結構いたずらっ子だよな。そういえば虹一は焼きそばを二つ買っていたが、もう一つはどうするんだろう。
「虹一、もう一つの焼きそばはどうするんだ?」
聞くと虹一は片手で箸を動かし、もう片方でスマホを操作する。随分と器用なことをするもんだな
“母さんの分。本当は母さんの分だけ買って帰るつもりだったけど、快晴がお金くれたから俺の分まで買っちゃった。ありがとう”
そっか、喜んでくれてよかった。
虹一が焼きそばを啜る横でマップに目を通す。俺もなんか食べたいな、、、焼きそば買っておけばよかった。マップを見ていると横から焼きそばを食べ終わった虹一の頭が視界に入ってきた。虹一もマップを見ていた。焼きそばを食べ終わったし、そろそろ動くか。
「俺たこ焼き食べたい!行くぞ虹一!」
顔を上げ、ガッツポーズを作ると虹一もガッツポーズを作った。立ち上がり、たこ焼きを目指して人混みをかき分け進む。よし、この勢いでじゃんじゃん屋台回るぞー!
「虹一口開けて」
あんぐりと開いた虹一の口にたこ焼きを入れる。はふはふと虹一は目に涙を浮かべてたこ焼きを食べた。はははッw
「これさっきのお返しな、気をつけて食べろよ」
うんうんと虹一はうなづいた。
あっくそ、、、千切れた。元から弱いヨーヨー釣りの釣り糸が水に濡れてより耐久性がなくなり、ヨーヨーの重さに耐えきれずあっけなく千切れた。隣の虹一は既に2つヨーヨーを釣っており、3つ目に手を掛けている。流石に3つ目を取るほど釣り糸は強くなかった。ボチャンとヨーヨーが音を立てて落ちた。ヨーヨー釣りのおっちゃんにヨーヨーを2つもらった虹一はウッキウキでヨーヨーでぽんぽんさせて遊んでいる。すると虹一が片方のヨーヨーを俺の手に握らせた。
「貰ってもいいのか?」
グットと指を立てた。なんか今日は虹一に貰ってばっかだな。
「ありがとう」
パンッ、パンッ、カランカランカラン
銃からコルク弾が飛び出した。コルク弾は見事狙っていた景品に当たり、後ろに落ちた。よし!上手くいった。カランカランと店主がベルを鳴らし、周りがおぉ〜とざわめいた。パチパチと拍手をするのは顔をキラキラ輝せた虹一だった。ゲームで鍛え上げたエイム力がまさかこんな所で発揮されるとは。景品の筒に入ったタイプのポテチを持って俺達は歩き出した。
マップを見ながら次はどこを回ろうか考えながら歩いた。
「虹一は次どこ行きたい?」
振り返るとさっきまで居たはずの虹一が居なくなっていた。
「虹一⁉︎」