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鷹槻れん/鷹槻うなの

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鷹槻れん/鷹槻うなの

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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タバコに、ニコチンの補充と束の間の休息以外のものを求めているとするならば。それは、おそらく何にも邪魔されることのない自由な思索の時間。
「あら、豆ちゃん。しばらく見ない間にずいぶんやつれたんじゃないの」
…のはずなんだが。僅かな楽しみを奪おうとする悪辣な声に、疲弊で元々弱まりつつあった理性は一気に霧消する。
「うるせぇよ。出てけや」
「やだなぁ。大豆生田パートナーはパワハラ上司っていう噂流しちゃうよ?」
苛立って言葉を選ばずに投げつければ、逆撫でするような駄々。
そのクソみてぇな思想でよくもまあ人事担当名乗ってんな、なんて。
突っかかったところで実のある会話にはなり得ないことも長年の付き合いでよくわかっているので、口には出さない。
「最近忙しいみたいじゃん、どうなのよ」
「すべてはご存じの通りですが」
「まーじで冷たいじゃん、何でよ」
ポケットから探り当てた数少ないタバコに火をつけて。煙の如く絡んでくるこの男を放っておいて肺へ煙を送り届ける。
「社長選が終われば少しは楽になるんじゃねーの」
「それはね、みんな言うよね」
「お前もパートナーなのになんでそんな他人事なんだよ」
人事という、あくまでバックオフィス系の業務が担当であるコイツには、少し他人事…なわけはない。社長候補たちはあらゆるパートナーに取り入っているというウワサで、明に暗にその駆け引きが社内の至る所で行われている。
コイツだってその厄災は降りかかっているだろうに。
え、それともこんな人間だから声もかかってないわけ?なるほど?
「まあ、どっちが社長になろうと俺のミッションにはあんま関係ないし」
こんなのらりくらりとした男、逆に取り込む方がコストかかるかもしれず、彼に声を掛けないのは、逆説的に正しい。
「そう言うモンなの」
「もちろん、厳密にいえば採用・育成方針がガラッと変わりうるリスクがあるから楽観視はできないんだけど」
まあ、そりゃそうよな。
肺にグイッと無理やりに煙を吸い込めば、全力で不幸な気流が流れ込む。
「まあ、豆ちゃん思いっきり巻き込まれてて可哀想だけど、もう少し考えた方がいいかもね」
突然身の振り方を諭されて虚をつかれる。何のこと?
「豆ちゃんをつぶすか、取り込むか。これはいまだに各陣営で揉めてるところがありそうなんだけど」
「はぁ」
「豆ちゃんのことはね、正直どっちでも良くて」
「はぁ?」
「放っておいても生き延びてそうじゃない?」
むしろ殺しても死なないタイプだよね、と深く頷かれましても。手放しで同意するには少々問題発言だろうが。
「だからさ」
奴もすぅっと気持ちよさそうに煙を口から天井目掛けて吐き出す。
薄暗い室内でも、壁紙の多少の変色は隠せていない。天井もまた然りだと、目で煙を追って初めて気づく。
「狙われるのは、周りよ」
鋭さを湛えた瞳とかち合う。
「何。誰」
「豆ちゃん。少しはそのキレッキレの頭使いなさいよ」
ボケるよ、と容赦ない罵声を浴びせる男に腹が立って、絶対頭を使わないと決め込む。
「何。誰」
やだねえ、これだから強情な男は。
呆れたように笑うけれど、なんだかんだ人情派だから答えを教えてくれることを知ってるからこその行動だ。
「弓家さんよ」
ただし、寄越された回答は俺の予想を超えていた。
「へ?」
「え、やっぱり気づいてない?」
もうやっぱ弓家さんを豆ちゃんの秘書にするのやだったんだよなー。ちゃんと大事にしてよマジで。
「御託はいいから理由話せよ」
「理由ってそんなの。真正面からアンタに切り掛かるより、弓家さんを巻き込んだ仕掛けにした方が、アンタを失脚させるの楽ちんじゃん」
豆ちゃん、なんだかんだ周りの人間に情があることはみんな知ってんだから。弓家さんを人質にとってアンタを脅せば、こんな楽なことはないって。最近、そんな噂をちょこちょこ聞くな。
「…冗談だろ?秘書だぜ?」
「敵がいちいち攻撃仕掛ける際に相手の職業なんか気にしてると思う?」
短くなったタバコを灰皿に投げ捨て、新たな一本に火をつける。今の言葉の衝撃が予想外に大きく、手元で何かしないと叫び出しそうだった。
「むしろそういう豆ちゃんの思考につけ込んでくると思うからまーじで気をつけて」
「別に俺はそこまで情に厚いわけでは無いけどな、そもそも」
「弓家さんを危険に晒しても関係ないって断言するなら、それも一つの生き方ではあるよね」
売り言葉に買い言葉の無駄な応酬は、突如投げかけられた言葉で終了する。
「…は?」
「弓家さんはさ、俺にとっても普通に大事な部下なんでね。彼女を利用してでも豆ちゃんが這い上がるのか、彼女を守り切るのか。覚悟見せてよ」
俺お父さんみたいなもんだからさ、娘の行く末は常に心配なわけ。
「…はぁ」
「中途半端なことしたら、流石にキレるからね」
弓家さん速攻取り上げて業界未経験の新人つけるから。
「しょーもな」
「うん、しょーもないよ。でも俺本気だから」
隣の男から伝わる痛いほどの意志が皮膚を刺す。
その意志への応え方を模索するように見せかけたって、結局突き進むべき道は1つしかないというのは、きっとお互いに感じている。
「じゃあ、本気出しますか」
「さっさと出しとけこの狸が」
それが戦友への労いかよ、馬鹿。