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鷹槻れん/鷹槻うなの

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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いよいよ会食の日を迎えた。
豆さんは前日まで相変わらずの出張三昧だった。1週間ぶりに対面で会うというのに、全然落ち着いて話ができる状況じゃないのが悔しい。
あの日喫煙所で垣間見た、彼の弱々しさがずっと脳裏に居座っている。
もしかして、いよいよ豆さんが病んでしまったのかとやきもきしたけれど、どうやらそれは杞憂だったようだ。あの後も、そして今日も相変わらず溌剌としていて、あの記憶はもはや私の捏造だったのではと疑いたくなるほどに。
「弓家さん」
「はい」
「今日のランチ、軽めでお願い」
「え、胃でも痛めました?」
「ちがうちがう、夜いっぱい食べたいから調整」
「…OLじゃないんだから」
忙しい日には彼のランチを買うことも定番化してきた。
午前中に唯一交わした会話はランチのリクエスト。そして急いで買ったコンビニのサンドイッチを個室に届けにいった時、今度は会議中で。忍者のようにそっと忍び込んで机の端に袋を置き、個室を後にしたのだった。
「弓家さん、すいませんこの請求書なんですけど…」
「はい、ああこれはこの決裁ルートで申請してもらうのが良いですよ。あ、代理でやっておきましょうか」
「弓家さん、引っ越した時の住所変更ってどうやって出すんですか」
「ええっと…それは人事システム上で直接申請できたはずなので、そちらにアクセスしてもらえますか」
「弓家さん、大豆生田さんの会議枠なる早で欲しいです…1時間」
「ええっと、ちょっと調べますね。1時間は…今週いっぱいで言うならこの日の朝7時か、こっちの日の20時ですね…」
今日は何だかユニットのメンバーに声を掛けられることが多い。私に声が掛かるのは、手続きがややこしい時か急ぎの時だ。彼らのリクエストに対応していれば、まさかの私の方が昼食を食べ損ねていた。
「あれ、弓家じゃん」
昼食よりも目先の依頼事項に…とキーボードを必死に叩いていれば、背後から聞こえるやる気のない低音。
「紫水だ。あ、豆さんと打ち合わせか」
「そ」
今朝豆さんの予定表を見て、紫水がプロジェクトの相談でこの個室に訪れることは把握していた。
「え、紫水もしかしてご飯食べながら話す気!?」
ふと彼の手元を見て驚く。
右手にはパソコン、左手には菓子パンの袋が2つほど握られていたから。
「何か変?」
「…変というか…珍しいね…?」
「まあ大豆生田さんともランチョンで、って話してるし」
「ああ、そうなんだ」
安心した、とあからさまに胸を撫で下ろしてしまい、紫水に睨まれる。
「は、何。俺が勝手に飯食いながらミーティングするとでも思ってたわけ」
「紫水のキャラ的に、それ以外解釈のしようがなくてね」
「失礼すぎんだろ」
俺のこと何だと思ってるの、と憤慨してるけど。
だから、そういうことをやりかねない人物なのよ、紫水は。
「てか弓家は昼飯食ったの」
「今日はねーまだだねー」
「……確かに、ちょっと太った?」
「まずはデリカシーという単語を勉強して出直してきてもらえる?」
さもなくばいっぺん殴らせて。
「空腹だと途端にバイオレントになるじゃん?」
「お腹の空き具合で態度は変わらないわよ」
「え、おっかな」
肩をすくめた紫水は、しょーがねーな、と思いっきり顔を顰めながらなぜか私に菓子パンを差し出す。
「はい?」
「これやるよ」
「なんで?」
「買いに行く暇ないんだろ」
さっき豆さんのご飯を買うときに、うっかり自分の分は忘れただけなのだけど。そう言うときっと5倍ぐらいの罵倒が降ってきそうだったから言い淀んでいたら、グッと手に菓子パンを押し付けられる。
「……紫水、私そっちのパンのが好き」
「………マジで覚えとけよお前」
チッと舌打ちして菓子パンを交換してくれる紫水は優しい。思わぬ儲けにウキウキしていれば、「あーやべ」と紫水がこぼす。
「何?」
「おたくのパートナーがめっちゃ睨んでる」
「はい?あ、時間か。ごめん」
個室の方を見れば、ガラスの壁面に寄りかかってこちらをにこやかに見ている豆さんがいる。
「全然睨んでないじゃん」
「…世の中には色々な睨み方がありまして」
不思議な言葉を言い残して個室に入っていく紫水。彼も疲れが溜まってきているのかもしれないな。
そう思えば、彼の食糧を半分いただいたことが少しだけ心苦しくなり。
「後でやっぱ返そ」
手をつける気もなくなって、机の端にそっと置いておくことにした。
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