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シャワーを浴びる為に脱衣場へやって来た私は服や下着を脱いでいく。
肌には至る所に傷や痣が付いていて、こんな身体、他人が見たら驚くだろう。
浴室に入ってドアを閉め、シャワーのお湯を流していく。
髪や身体を洗って浴室から出ようとすると、脱衣場の外でドアが開く音が聞こえてくる。
その音で、私の脳裏に過去の嫌な出来事が一気にフラッシュバックする。
私が監禁されていた家には交際相手の他にも数人の男がよく出入りしていて、私は彼らの気分次第で抱かれていた。
こうしてシャワーを浴びたあとに無理矢理ベッドへ連れて行かれたり、浴室でそのまま行為に及ぶこともあった。
だから、今さっきドアの開閉音がしたことでそのときの記憶が蘇って身体が震えだしていき、
「きゃっ!?」
脚が震えて立っていられなくなった私はバランスを崩して、声を上げながら浴室から脱衣場の床に倒れ込んでしまった。
「愛結!? どうした?」
その音と声に気付いたらしい航海くんが脱衣場のドアをノックしながら声を掛けてくれたのだけど、上手く呼吸出来なくなった私は「大丈夫」の一言すら口にすることが出来ない。
「愛結――悪い、入るぞ」
返事が返ってこなかったことに心配したらしい彼は一言断りを入れると、脱衣場のドアを開けた。
「愛結! 大丈夫か?」
「……っはぁ、はぁっ」
「また過呼吸か? 落ち着け、ゆっくり深呼吸するんだ」
「……っはぁ、……はぁっ、」
駆け寄って来た彼は私の身体を起こすと、深呼吸をするよう背中を擦りながら言ってくれた。
「……はぁ、……はぁ……、」
何度か深呼吸を繰り返して徐々に落ち着きを取り戻した私はふと我に返る。
そう言えば私、まだ服着てない!
浴室を出たところで倒れたので、当然タオルすら身に着けてはおらず、言ってしまえば全裸のまま。
航海くんもそれに気付いたのは今のようで、
「悪い! 慌ててたから気付かなくて!」
そう言いながら一旦立ち上がり棚の引き出しからバスタオルを取り出すと、それを私の身体に掛けてくれた。
「悪かった! その、他意はねぇんだ!」
「いえ……その、私の方こそ、すみません……お見苦しい姿を晒してしまって……」
「何で、愛結が謝るんだよ?」
「だって、こんな身体……気持ち悪いじゃないですか……傷や、痣だらけだから……」
自分でそう言いながら掛けられたタオルをぎゅっと握る。
そんな私を前にした航海くんは、
「――気持ち悪いとか、思わねぇよ。むしろ、愛結の身体をこんな風にした奴に怒りを感じてる」
私の身体を強く抱き締めると、自分のことでもないのに怒りを露わにしてくれる。
「……航海くんは、優しい人ですね」
「そんなことねぇよ」
「ううん、優しいです。私、航海くんに出逢えて良かった……。もう二度と、あの場所には、戻りたくない……っ、殴られるのも、無理矢理されるのも、やだ……っ」
「……愛結……」
優しい彼との出逢いに感謝するのと同時に色々な感情が溢れ出してしまった私は縋るように泣きついた。
そんな私を彼は、更に強い力で抱き締めながら頭を撫でてくれた。