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ハッと気付くと、私は電車に乗っていた。
「やっぱり今のは夢…」
安堵と共に先程の奇妙な夢を思い出す。
やけにリアルだった。
近づく黒い戦闘機。撃たれた私。
電車の居眠りでこんな悪夢を見るのは初めてだ。
動悸と冷や汗が止まらない。
「降りなきゃ」
いつもの駅に降り立つ。
しかし、駅には誰の姿もない。
おかしな違和感。
まだ夢を見ている?
「そんなことはない…」
現実に戻ったと思いたくて、急いで改札へ向かう。
いつもの街の景色を見せてお願い。
しかし、私の願いは無残にも打ち砕かれ、先程より恐ろしい夢を見ることになる。
「何これ…」
さっきの夢?では、見慣れたはずの街に大きな工場のみが景色に現れていた。
今は、その後ろに巨大な山が見える。
活火山。
噴火している…。
さっきよりモヤがかかって街中白いのに、その巨大な山だけは鮮やかに目に映った。
悪夢が加速している。
何だ、この世界は。
まだ夢から覚めてないだけだ。
きっとそうだ。
目が覚めるのを待つしかない。
改札は出たがどうしようかと思った。
あの会社には行きたくない。
拳銃をつくらされたり、不気味な黒服姿の大きな女。
すると突然バスが現れた。
「乗って下さい」
運転手が言う。
どこへ行くのかと聞きたかったが、声が出ない。
運転手の顔に見覚えがある。
拳銃が入っている段ボールを、配っていた初老の男性だ。
相変わらず、顔に生気はない。
どこへ行くのか?と聞きたかったが、声が出ない。
愚問な気がしたが。
嫌なのに、乗ってはいけない気がするのに体が勝手に動きバスの階段を登る。
そして、席に座る。
だんだん近付いてくる、あの工場が。
そして巨大な噴火している山が…。
富士山?
マグマが頂上から流れ出しているのが見えた。
恐ろしい光景だ。
しかし、これだけの煙と灰が降っている割には空気が汚いとか息がしづらいということもなかった。
バスの窓も開いていたのに。
やはり夢なのだとしか思えない。
いつか覚める…。
工場に着き、バスから降りる。
嫌だ、行きたくない。
なのに身体が勝手に向かってしまう。
「今日はしっかり仕事をして下さい」
運転手が言う。
今日は?
この間の夢では、私が逃げ出そうとしたからであろうか。
そして、あの黒い女の怒りを買った…。
嫌だ嫌だ。
そして、またオフィスに吸い込まれていく。
気付くと、私はデスクに着いて座っていた。
上司席にはまたあのまっ黒に身を包んだ大きな女。
恐ろしくて恐ろしくて、目が合わせられない。
先程と同じようにまた段ボールが配られていく。
配っているのは、さっきのバスの運転手。
何故、バスで走り去ったと思ったのに私より先にオフィスに来ている?
ああ、夢だからか。
不自然でも仕方がない。
今日は、なんの作業だ。
また何かを作らされるのか?
私は恐る恐る段ボールを開ける。
ああ、嫌な予感がしたのは当然だ。
中には「防毒マスク」が入っていた。
こんなのテレビの中でしか見たことが無い。
何だ、拳銃といい防毒マスクといい、私が知らない間に日本で戦争でも始まっているのか?
恐怖と戦いながらも、今日の作業の説明を受ける。
私達は末端の作業らしいことだけはわかった。
防毒マスクに傷がついていないか、空気が漏れないかなどの検品作業だ。
私が働いていたシャンプー工場の検品ぐらい単純な仕事ではあったが、プレッシャーが違う。
これは不良品であれば、誰かが死ぬ可能性もある商品。
知らない誰かの命がかかっているのだ。
ここは軍事工場なのか。
いや、考えても仕方がない。
これはどう考えても悪い夢を見ているだけなのだから。
作業をしながら、私は不意に尿意をもよおした。
トイレに行きたい。トイレはどこだ。
私はよくトイレに行きたくても見つからないという夢を見ることがあった。
きっと現実の私が尿意をもよおしたのだろう。
やっぱり夢だ。
しかし…
以前の夢では、デスクから離れようとしたら黒い女が近づいてきて。
その後に戦闘機に撃たれたのだ。
夢であろうと、あの恐怖は真っぴらごめんだ。
仕方なしに、黒い女にトイレへ行く了承を得ようとした。
私は立ち上がり、恐る恐る「すみません…」と黒い女に向かって声をかけた。
その瞬間、隣で作業をする同年齢くらいの女性の顔が歪んだのを見逃さなかった。
黒い女がこちらを向いた。
ギョッとした。
その瞳は真っ暗、というか空洞だった。
闇がいつまでも広がっているような漆黒の目だった。
その瞬間、オフィスの両方の壁から赤いレーザーのようなものが出てきた。
よく見ると壁に小さな丸いレンズが無数に見える。
さっきまであんなもの壁に無かった…。
あのレーザーに当たってはいけない。
必死ににげようとするも、また体が重く動かない。
レーザーが私を照らす。
私より早く前の方に座っていた男性にレーザーが当たり、床に倒れるのが見えた。
早く早く逃げなくては!
次の瞬間、何かが私の身体を貫いた感覚と共にまた視界が暗くなっていった。