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誰も予想しなかった。
こんな未来、一体誰が望んだのだろう。
「ここに来たばかりで分からないことだらけだけど、皆のサポートできるよう頑張ります!よろしくね」
背の高い人。最初はそういう印象しか無かった。俺が別に高くもないからだろうけど
「おいゆあん」
チャイムがなり、みんなが席を立つ中、一直線で俺の元にやってくるこいつは
「なんだようり」
俺の幼馴染。
「どう思う?あの先生」
「あの先生って?」
「はぁ?聞いてなかったのかよ」
朝は眠たい。だから大抵SHRはウトウトしていて話などほとんど聞いていない。
「一ノ瀬先生のことだよ、今年から入ってきた」
「あー、あの背高い先生か」
すらっとしたスタイルで、髪は黒だが多分何回か染めたことあるんだろうなと分かるちりちり具合。
「なんで先生になったと思う?」
「知らねぇよ」
「俺はな、これ、裏があるんだよきっと」
「裏ってなんだよ」
「誰かに脅されたとか!」
「くだらねぇ」
彼の話に飽き飽きし、席を立ち教室のドアを開ける。
「どこ行くんだよ」
「さぼる」
「まじかよあいつ」
「…俺もサボりてぇけどこれ以上成績下がるとやばいしな、」
うちの学校は屋上に入れない。大抵そうだろうが、とある理由で屋上に入れなくなった。屋上の扉をガチャガチャと回しながら舌打ちをする。
「教師と生徒が飛び降りたとか知ったこっちゃねぇよ」
2年前、教師が生徒に恋をし、駆け落ちをした。
そういう噂がうちの学校では流れていた。あくまで噂に過ぎないが、先生の挙動不審な所だったり、ちょうどその時に教師と生徒が忽然と姿を消したことからあの噂は本当なのだろう。
「だいたい、意味わかんねぇよ。なんで教師なんかに恋するんだよ」
噂は教師が生徒に恋をした。と言われているが、駆け落ちしたことから生徒も教師に恋をしていたのだろう。
「恋愛とかやってらんね」
「今日からここのクラスを担当するんだけど…えーっと、月城くん?は今日学校に来てるはずだよね?なんで居ないのかな」
このクラスの治安は悪い。色々な先生からそう聞かされ、同情もされ、そんな中俺は配属された。
「あー、彼奴なら多分どっかいますよ」
「どこかわかるかな、霧島くん」
「屋上とかじゃないっすか?」
「ありがとう、じゃあみんな、14ページの…」
このクラスはトップで成績が悪い。そもそもの話、成績が悪いとか、態度が悪いとか言う前に、それを直したいのならこのクラスの生徒が仲良くならないと無理難題な話だと俺は思っている。だから、まずこのクラスの団結力を上げなければと意気込んでいた矢先、まさかサボっている生徒が居るとは。
「じゃあ探してくるのでみんな読み終わったら話し合っててね」
「探しにいくんすか」
「え?あ、うん」
「探しに行くだけ無駄っすよ」
「難しいところに隠れてるのかな?」
「彼奴を連れ戻すのが難しいって話」
「月城くんがサボってるのにはなにか理由があるのかな?」
「ないと思いますよ」
「だから難しいって言ってるんですよ」
「そっか、でも俺はここの担任だから…」
「2年前、ここの担任になった教師と生徒が駆け落ちした。その事は流石の先生でも知ってますよね?」
急にそんなことを言われ、ハッとする。さすがに事前に校長から言われてはいたがやはり生徒にも知られているものだ。
「もちろん」
「あれ以来、彼奴担任のこと信じてないんすよ」
「一緒にされちゃあ困るな」
「男の担任嫌いなんすよ、聞きますけど、あれ駆け落ちしたの同性同士ですよね」
クラスがざわめく。それと同時に俺の心臓も跳ねる。
「死んだ教師、男っすよね。女って偽ってた」
「ごめんね霧島くん、ここに来たばかりでそこまで詳しいことは知らないんだ」
「俺、月城くん探してくるね」
そう言い、逃げるように教室を出る。開始早々やらかしてしまったかと思いながら、あの発言の仕方、彼は前々から教師が男性であることに勘づいていた。どの道バレることだったんだ。と自分の心を落ち着かせながら先程聞いた屋上の方へ向かう。
「というか理由あるじゃん…」
先程、霧島くんは月城くんが授業をサボる理由はないと言っていたが担任が男だから受けていないと言っていた。
「矛盾しまくりだなぁ」
「誰お前」
屋上に続く階段を上っていると、低い声で少しキレている月城くんがいた。
「あ、月城くん?だよね」
「誰かって聞いてんの」
「ああ、そういえばSHRの時寝てたね…」
「今日から配属された担任の一ノ瀬だよ」
彼が座っていた何段か下に座り、彼の方を向く。
「何しにここに来た」
自分の聞きたいことしか聞かないという話し方で最早状況の説明が楽だ。
「もう授業始まってるから受けて欲しいなって」
「…なんでお前に指図されなきゃならないんだよ、帰れよ」
「…俺わかったよ、なんで月城くんがそんなに怒ってるか」
「は?黙れよ」
「俺ね、教師やるのここが初めてなの。で、この学校について色々調べたの。ありえないってことも、この学校にしかない魅力も沢山知った」
聞いてないだけかもしれないが、彼は黙っていた。
「月城くんのクラスは、一度もクラス替えをしてないんだね」
「だから?なに?嫌味?」
「ううん、そうじゃない」
「正直、学力見た時にはびっくりした。でもね、みんなそれぞれここ絶対成長できるなって所が沢山あるの。でもそれを今まで教師はまともに見なかった」
「ここ数年間、このクラスだけ教師がころころ変わってるのは、みんな生徒と向き合うのを諦めた人。」
「だから何。自分は違うとでも言いたいの」
「 そう言いたいところだけど、きっと色んな人に言われてきたでしょ?」
「だから、俺が変える」
「は?」
「俺がこのクラスを変えるの。あと1年しかないけど」
「だから俺はここのクラスを配属を喜んで受け入れた。変えたかったから」
「まじ黙れよ」
「月城くんは、今のクラスの人、嫌い?」
「逆に好きなように見えるのかよ」
「うん。他の人はまだ分からないけど少なくとも、霧島くんとは仲がいいんだなって」
「なんでそこでうりがでてくんの」
「俺が、月城くんどこにいる?って聞いた時に霧島くんが直ぐに答えてくれた。屋上にいるって」
「彼奴余計なことを…」
「お願いがある」
何秒かの沈黙が流れても、彼はうんともすんとも言わなかった。だから俺はその沈黙を了解と受け取ることにした。
「1週間、授業を受けて」
「それでつまんなかったら今後授業は行けなくてもいい。それで成績を下げるつもりは無い」
教師からこんなお願いをされることがあるだろうか。いや、滅多にないだろう。でもそれくらい、彼には来て欲しかった。今のクラスで彼の印象は最悪だ。それを取り除くには彼自身の努力も必要となる。俺だけが頑張ってもクラスの団結はとれない。
「…言ったからな」
パッと彼の方を向くと、立ち上がり、教室の方へと向かう。
「受け入れてくれるの?」
「つまんなかったら来ない、二度とな」
「分かった。それでいいよ」
数分が経っても一ノ瀬先生は戻ってこない。
「大丈夫だよね、?先生ボコボコにされてたりしてないよね、?」
ありもしないことが生徒の間でヒソヒソと言われる。
「黙れ、彼奴はそんな事しない」
悪くもない相手を殴ることなんて論外。そう言ってた。
呼びに行った教師は今まで沢山居た。でもみんな1回呼びに行ったらもう二度と行くことはなかった。もちろん、ゆあんを引き連れて帰ってきた教師なんか一人もいない。
「…ちょっと期待してたんだけどな、やっぱ無理か」
そう思い、ふて寝をしようとすると、教室の扉が開く。先生1人と思っていたがその後ろにはゆあんがいた。
「はーいみんな読めたかな?じゃあ…」
まだゆあんを呼びに行ってから5分も経っていない。そんな短期間で彼奴を呼び戻した?ありえない。ゆあんに聞きたいことは沢山あるが席が離れているため聞くことは出来ない。
「どんな手口を使った…」
一限目は、その事しか考えるとこが出来なかった。
ここまで授業が長いと感じたのは初めてだろう。チャイムが鳴り、速攻でゆあんの元に行く。
「お前、何脅された?」
「何もねぇよ」
「じゃあなんで戻ってきたんだよ」
「…1週間」
「は?」
「1週間授業受けろ」
「いやいやいや、脅しじゃん」
「受けて、つまんないって感じたらもう来なくていい。それでも成績は下げない」
「そう言われたのか、?」
「あぁ」
「はぁ!?お前、ずるすぎだろ」
「何がだよ、つまんないって感じなかったら来ないといけないんだぞ」
「んなもん、つまんないって感じるに決まってんだろ」
「…」
ゆあんが目を合わせて話してくれることなど殆どない。でも此奴は今確実に誰かを見ている。その目線の先にいたのは、一ノ瀬先生だった。