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第32話、読了しました……。夏帆の「私も捨てられるって不安になる」っていう台詞、本当に刺さった。雅の余裕ある対応に悔しさと甘さが混ざって、最後のキスの流れとかもうヤバかったです。ああいう執着と不安と諦めの間で揺れる感じ、大好きです。続きが気になりすぎます……😭💔
追いついた雅が肩に手を置いてくる。その指先さえ今は疎ましくて思いきり手を払った。
「おい、何怒ってんのって」
「早く鍵開けて。荷物重い」
拒絶すると、雅は苛立った表情を見せるもそれ以上何も言わずに鍵を開けた。
行きは助手席に座っていたけれど、今は視界に彼を入れたくない。後部座席に乗り込み、すぐにスマートフォンへ視線を落としたが、雅は運転席に回るどころか、私を追うように隣のシートへ滑り込んでくる。
「何でお前がそんなに怒ってんだよ」
私の手首を掴み、スマートフォンの操作を強引に止めさせる。その横暴さに、抑えていた感情が溢れた。
「別に、あんたみたいな不誠実なことをしておいて、他人を平気で傷つけるような人間が嫌いなだけ」
「じゃあ何、優しくすればよかった?」
「言い方があるって話をしてるのよ。今はそういうことしてないで終わった話でしょ」
「何にしても夏帆に関係ないだろ」
「そうね、関係ないかもね。早く車出して。さっさと帰りたいから」
睨みつける私に対し、雅はどこまでも涼しい顔でこちらを見つめている。
この男は、自分が他人の心をどれだけ掻き乱しているか、これっぽっちも理解していない。
私ばかり必死なのが、悔しくて、情けなくて、耐えられなかった。
「あんたのそういうどうしようもない部分を見るたびに、私もあんな風にいつか捨てられるって不安になる気持ち、あんたにはわかんないでしょ…!」
吐き出した声が、自分でも驚くほど震えていた。
怒りなのか、恐怖なのか、剥き出しになった本音を隠す術もなく、私は雅を睨んだまま目が離せない。そんな私を見て雅は掴んでいた私の手を、今度は包み込むように握り直した。
「お前とあの子は違うだろ」
「何がどう違うかわからないから不安なんでしょ! 私があの人より好かれている自信が何もない……!」
初めて零した、震える本音。
雅は何も言わず、抵抗する力も出ない私を、そのまま静かに抱き寄せた。
こうして傷ついたタイミングを見計らったように、甘い罠を張ってくる。それがこの男の常套手段だと分かっているのに、どうしても、この男を突き放すことができなかった。
「そんな不安、感じる必要ないのに。でもどうせ俺がここで細かく説明しても信じねぇんだろ?」
「……あんたが胡散臭いのが悪い」
「本当面倒な女」
そう呆れたように笑いながら、雅は私の頭を優しく撫でた。その面倒な女の言い方は、きっと嫌だとは思っていない。
「もうこういうこと無いようにするから。いい加減機嫌直して」
「当たり前だから、もうあんなの見たら次は本気で別れる」
「今別れるって言わないんだ?」
まなこ〜友
117
#ますしき
T
5,800
怒りで火照る私とは対照的に、雅の唇の端が嬉しそうに吊り上がる。その余裕が、余計に悔しい。
「俺の事好きすぎるな、夏帆」
「あんた今の状況分かって言ってる?」
「今別れないのも、不安になるのも、俺が好きだからしかないだろ」
私の心をすべて見透かして、あぐらをかいているこの男に、どうしても一矢報いたかった。
だから、私は雅のシャツの胸元を思い切り掴み、強引に自分の方へ引き寄せる。雅が驚きに目を見開いたその瞬間、私は仕返しのつもりで、彼の唇にぶつける様に勢いよく口付けた。
驚かせたかっただけだった。一瞬でもいいから、彼の余裕を剥ぎ取ってやりたかったけれど、この男にそんなのは通用しないのを忘れていた。
雅の大きな両手が、逃がさないとばかりに私の頬を固定した。一度触れるだけのつもりだった唇は、すぐ舌を割り込ませられ、口付けが深いものになっていく。
「ん~~~~~~!」
あまりの強引さに、彼の胸元をバシバシと叩いて抗議するけれど、この男はびくともしない。
最後に軽いリップ音を立ててようやく唇は離れたが、雅は名残惜しそうに、最後に私の唇の端を舌先でなぞってから、逃げられない至近距離で私を見つめた。
私は肩で息をするほど動揺しているのに、この男は呼吸ひとつ乱さず、こちらを見ている。
「な、なにして……」
「誘われたんだからのらなきゃと思って」
「ふざけんな!」
「はいはい。さっさと帰って荷物片付けねぇと。助手席移動な」
「無理! 今日はここに座る!」
「いいからさっさと移動しろって。駄々こねてるとここで抱くぞ」
まったく冗談に聞こえなくて、ゾクッ、と嫌な寒気が背中を走り鳥肌が立った。