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ドアが勢いよく開かれ、現れたのはノエルだった。
その後ろにはリンドンをはじめ、アレックスとスペンサーの姿も見える。
「ノエル、どうして君が……それに、お前たちも……」
レジナルドが後ろを振り返りながら言うと、アレックスとスペンサーが前に出てレジナルドの両側についた。え、あれ何する気だろう……と思ったら、両についた二人がレジナルドの両腕を掴む。
「え」
「え」
俺とレジナルドは恐らく、同時ににそんな言葉を落したと思う。
そしてアレックスとスペンサーはぐいぐいとレジナルドを引っ張り、扉の方に引きずっていく。
「え、えっと……?」
俺が困惑して、そちらを見ているとノエルが口を開いた。
「私もね、思い出してさ。でね、結構レジナルドってシナリオでもそっちを煽るでしょ?そういうとこは一緒かなって。なので、ご退場願いまーーす!」
そう大きくノエルが叫ぶのと同時に、レジナルドは二人に外へと連れ出され、扉がばたん
と閉じられた。すかさず、ノエルは、
「リンドン、今!」
そう続けた。すると今度はリンドンが水の結界を、部屋に張る。俺を閉じ込めたあれだ。ゆらゆらと揺れる水の膜が俺とキース、そしてノエルとリンドンを包み込む。
キースはじっと俺を片手に抱いたままで様子を見ているようだった。
「さぁて」
ノエルは俺を一瞥すると、すぐにキースの方に視線を上げた。その目には、普段のノエルからは想像もつかないような真剣さが宿っていた。
ノエルが両手を広げ、空中に魔法陣が浮かび上がる。その中心にその手のひらが触れると、輝く光が溢れ出した。
「お兄さん、落ち着いて!あなたの本当の心は、こんな闇に飲まれるようなものじゃないはずだよ!まあ、執着魔人だけど!」
余計な一言ついてるな⁈と思い、俺はハラハラしつつキースを見上げた。
先ほどのレジナルドへの憎悪はなりを潜めている。相変わらず黒い霧は晴れてはいないが、強くなる様子もない。ただ、静かにノエルの様子を見ていた。
ノエルの声が響く中、光の魔法陣がさらに輝きを増していく。それが闇の力に押し戻されるように揺れるのを見て、俺は焦燥感を覚えた。
「だ、大丈夫なのか……?」
「ちょっと待ってて!このくらいなら何とか……でも、お兄、手伝って!」
「お……僕に何を……?」
依然と俺の身体はキースの腕の中だ。ここからできることって何だ?てか、その魔法……俺が受けても大丈夫なんだろうか。俺がノエルとキースを交互に見る。キースは俺と目が合うと、ふ、と微笑んだ。
ええと……その笑みは一体……。
リアムはその瞬間、俺に小さな石を投げつけてきた。それはじんわりと光っている。俺は片手でそれを取って握る。
「それは私の力を込めた魔法石だよ!リアムの魔力は高いから使えると思う!」
「え、どうすんの…⁈」
「握ってるだけで問題ないよ!そしてお兄の声で、キースさんを呼び戻して!この闇の中にいる本当の彼を、連れて帰るのはお兄しかできない!」
ノエルの言葉に、俺はもう一度キースを見る。
……闇の力は使っているが、現状、キースは平常心のようにも俺には見える。
こう、なんというか、こう……ノエルは妹はすごく熱くなってくれているし、リンドンも頑張ってくれている気はする。ただそれと打って変わって、キースは……。
「え、ええと…兄様は、こう……今は兄様じゃないんですか、ね……?」
俺が戸惑いつつ、そう尋ねるとキースは首を傾げた。
「さぁ、どうだろうね……?リアムからはどう見える?まあ……君のことに関して言えば我を失いそうになることは多いけれど」
さっきも夜もね、と俺にだけ聞こえるような声が耳元を撫でた。
俺が息を詰めると、矢張りキースは微笑んだ。そして、
「まあ、これも……必要なことだからね」
と独り言のように呟き、俺を抱く手を緩めた。
「あの力はね、リアム。かなり強い。なので君はあちらに行った方がいいだろうね。あれは僕が受けるべき僕に必要な……」
そう言って、俺の身体をふんわりと突き飛ばした。
「え」