テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
──だぁ・すかー・夢魔 視点──
リビングの隅。
3人は無言のままスマホを握りしめたまま立ち尽くしていた。
その時、ネグとマモンが水を飲み始めた。
そして――
「……あ……」
小さな音とともに、ネグが手元を滑らせ、水を服にこぼしてしまった。
だぁの服が濡れてしまい、ネグはその場で小さく肩を震わせ、声も出さずに涙目になっていた。
マモンがすぐにネグの手を取って、低い優しい声で言った。
「だぁのだし……大丈夫だよ」
そのまま、ネグの手を引いて歩き出す。
3人は、ただそれを見つめているしかなかった。
すかーが眉をひそめた。
「勝手にどこ行く気だ……?」
その答えはすぐに見えた。
夢魔の部屋――
タンスを勝手に開けて、色違いのパーカーを取り出して、ネグとマモンが着始める。
だぁは眉間にしわを寄せながらも、何も言わなかった。
夢魔は横目でそれを見ていたが、何も言わず、ため息ひとつ。
ネグとマモンはそのまま夢魔のベッドに潜り込み、また眠り始めた。
その時も、小さな声が漏れた。
「夢魔の匂いだぁ♡」
「おっきい……ぶかぶかぁ♡」
その声に、すかーは拳をギュッと握りしめ、夢魔は無言で目線を逸らし、だぁは無言でスマホを握り直した。
だが、それだけじゃ終わらなかった。
今度はネグとマモンが、どちらが先に眠れるか勝負しようと話し始めたのだ。
その流れで――
ネグとマモンはお互い、3人の「良いところ」と「悪いところ」を言い合い始める。
ネグが眠そうに笑いながら呟いた。
「夢魔はねぇ、優しくて……怒ると面白くてぇ……」
その時、夢魔の眉がピクリと動いた。
「すかーはおっきくて、ダサい下着履いてて……」
すかー:(は??)
心の中で確実に声にならない叫びがあった。
ネグは続けた。
「だぁは優しくて……良い人で……ブチ切れたら……死ぬほど怖くて……」
言葉がだんだん覇気を失っていくのを、だぁはじっと見ていた。
その隣で、マモンもぼそっと呟く。
「まぁ……俺たち……あれ、やっちゃったしな……主にネグが……」
目線を逸らすマモン。
ネグも、心底申し訳なさそうな顔で。
「……本当……狙ってしてる訳じゃないんだけど……」
そのやり取りを聞いていた3人。
だぁ:(……いや、わかってる……わかってるけどさ……)
すかー:(ダサいとか、マジで言いやがったな……)
夢魔:(お前ら……本気で反省してる顔じゃねぇんだよ……)
けれど。
声には出せない。
3人とも心の中でだけ、長文で叫び続けていた。
──
そのまま、ネグとマモンは布団の中で眠り始めた。
寝る前、ネグが夢魔の服に頭を擦り付けるようにしながら、小さな寝言を呟く。
「……夢魔の匂い……」
マモンも同じく、服に顔を押し付けるようにして。
その様子を見ていた3人は、静かに座り込んだ。
何も言わず、ただその光景を見守るしかない。
だぁ:(……もう、ほんと……ずるい……)
すかー:(言い返す気力すら無くなるわ……)
夢魔:(あいつら……なんなんだよほんとに……)
それでも――
誰もその場を離れなかった。
ずっと、ネグとマモンを見守り続けた。
ソファのそば、少し離れたリビングの壁際。
3人は並んで立ったまま、無表情でスマホを手にしていた。
カシャ、カシャ……
シャッター音は切ってある。
だが手は止まらない。
何十枚目かも分からない写真を撮りながら、
3人の心の中ではひたすら同じような言葉が繰り返されていた。
だぁ(……いや、これ反則だろ……ほんと無理……)
すかー(またかよ……あいつら……どんだけやらかすんだよ……)
夢魔(おいおい……ちょっと可愛すぎるんだが……)
そんな中で――
ネグがふと、体を起こした。
「……毛布……」
その一言に、3人が一瞬だけスマホを構える手を止めた。
だが――
マモンが、その腰にガシッと腕を回すように掴んで、行かせないようにする。
ネグは「あれ……また?」と小さく困った声。
そして、何とか腕を外そうとするが、無理だった。
「ねー、マモン……離して……ッ」
か細い声。
それでもマモンは離さない。
ネグの声は、さらに弱くなる。
「好きだから……ねぇ、離してってば……」
その瞬間、マモンは静かに、ふにゃっとした笑みを浮かべて言った。
「……俺も」
……そこまで見届けた3人。
顔は完全に無表情のまま、しかしスマホだけは静かに持ち続け、録画まで始めていた。
だぁ(なんだこれ……普通じゃねぇ……ほんと可愛すぎて無理……)
すかー(声出すな……絶対声出すな……耐えろ……耐えろ俺……)
夢魔(え、可愛いの暴力じゃん……なんだよこの無理ゲー……)
3人とも、表には一切出さない。
けれど心の中では――
だぁ:(ずるい……ずるすぎるだろネグもマモンも……あぁもう……だめだ……声出そう……)
すかー:(いくらなんでも反則だって……完全に……オーバーキルだろ……)
夢魔:(こいつら……ほんと、マジで天使か……?ちょっと落ち着け俺……)
けれど誰ひとりとして、止めに入ろうとはしない。
ただ静かに、無音のまま。
ひたすらにカメラを構え、録画を続けた。
沈黙が続く中――
ネグとマモンの甘い空気に、誰ひとり言葉を発さず、
ただ静かにシャッターを切り続けていた。