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階段前、ほんのわずかな沈黙。「……ネグ、遅くね?」
夢魔の低い声に、すかーも静かに頷いた。
「探すか……」
軽く目を合わせ、3人は自然と足を動かしていた。
部屋のひとつひとつ、そっと襖を開けながら、ネグを探す。
そして――
ふっと静かに開けた、最後の部屋。
そこで見つけたのは、
ふかふかの毛布にくるまれて、丸く小さくなったネグの姿だった。
襖の中、まるで壁を作るように毛布を立てかけ、その奥で、すぅすぅと規則正しい寝息。
小さくて、守りたくなるような姿。
だぁ(……はぁ……またそんなとこ入って……)
すかー(どんだけ隠れんの好きなんだよ……ほんと……)
夢魔(安心すんのか?そういうとこ……)
だぁが声をかけようとした、その時――
ネグがゆっくりと、目を開けた。
半分寝ぼけたような顔でスマホを取り出し、
しばらくぽちぽちと何かしていたかと思えば……
耳元に当てて、小さく囁くように言った。
「……また来て」
誰にかけたかまでは分からない。
だが、その声はどこか安心したようで、嬉しそうだった。
だぁ(レイか……?)
すかー(……寝言じゃねぇな)
夢魔(マジで誰と話してんだよ……)
3人は黙って、静かに襖を閉めた。
ネグの邪魔をしないように。
それからしばらくして――
リビングでソファに戻った3人は、また静かに待っていた。
そこへ――
「……あ、毛布……」
小さくそんな声が聞こえた。
ネグが階段を降りようとしているのが分かった瞬間だった。
しかし――
「あ」
それだけ、短い声が聞こえた直後、ネグの体が階段の途中でふわっと浮くように滑りかけた。
「――ッ!?」
3人はほぼ同時に動いた。
だぁが一番早かった。
すかーと夢魔もすぐに手を伸ばし――
なんとかギリギリ間に合った。
ネグはだぁの腕の中でしっかりと抱えられ、そのまま止まった。
静かな、けれどものすごく長く感じる一瞬。
3人とも、心臓がバクバクと音を立てていた。
だぁ(……マジで……危ねぇだろ……)
すかー(心臓止まるわ……!)
夢魔(冷や汗ヤバい……!)
そんな中――
ネグはふにゃっと、甘えたような声で言った。
「あれぇ……? だぁさんだぁ……♡」
その瞬間、だぁは完全にフリーズした。
ピタリと動きが止まり、息を呑む。
ネグはそのまま、だぁの頬にキスを何度も落としながら、柔らかく微笑んだ。
「可愛いね、カッコイイね……」
ふにゃふにゃとした笑顔。
完全に寝ぼけているのだろう、でもその言葉がまた一つ一つ刺さってくる。
だぁ(……は、あ、あぁあぁ……無理無理無理……)
すかー(おいおいおい……マジで反則だって……)
夢魔(可愛すぎだろ……!!!)
3人とも、今にも叫び出しそうな心臓を必死で抑えながら、顔は無表情を保つ。
だが、手はしっかりとスマホを構え、無音でシャッターを切っていた。
カシャカシャと。
ネグは満足したのか、やがてふわりと腕をほどき、毛布を抱えてリビングへ戻っていった。
マモンの隣へと――
その姿を見届けた3人は、再び深く息を吐き、静かにスマホを下ろす。
だぁ(……何回でも言うけど……あいつ……ほんと反則……)
すかー(これ以上は耐えられねぇ……)
夢魔(俺たちの心臓が持たん……)
そして3人は、無言で顔を見合わせ、
ただひたすら、心の中で同じ言葉を繰り返していた。
──
(可愛すぎんだろ……)
(マジで……無理……)
(ほんともう……勘弁してくれ……)
──リビング・静かな午後──
薄い陽射しが静かにリビングへ差し込んで、
ネグとマモンはくっついたまま、まだ眠っていた。
その時──
「……ん」
マモンがゆっくり目を開け、半分眠たそうな目のまま、ぼんやりとネグの顔を見た。
手が、目の前にあったネグの手へ自然と伸びる。
そして──
かぷっ
小さく、甘噛み。
指先をガブガブと何度も、小さな音すら立てずに。
その感触に、ネグも目を覚ます。
「……んぁ……?」
寝起き特有の、ぼんやりした声。
だが、目の前で自分の手をかじっているマモンの姿に気付くと──
「……ふふ……」
ネグは小さく笑って、ゆっくりとマモンの舌に自分の指を伸ばす。
「やり返し♡」
そのまま、マモンの舌を──
ガブッ
甘噛みし返す。
マモン「っ……ふっ」
思わず、小さく笑ってしまった。
眠そうな目のまま、マモンはネグの顔をじっと見つめたまま、
ネグはネグで、ニヤッとイタズラっぽく笑っていて。
「……へへ……」
そのままマモンは再び目を閉じた。
──その光景を、すぐそばで見守っていた3人。
だぁ(……………)
すかー(……………)
夢魔(……………)
顔は完全に無表情。
だが、指先はピクピク震えていた。
だぁ(あの距離感……ふざけんなよ……)
すかー(もう無理だって……見てるこっちが耐えられねぇ……)
夢魔(甘噛みし合って……どんな仲良し加減だよ……!)
ため息が、同時に漏れる。
だぁ「…………はぁ」
すかー「…………っはぁ……」
夢魔「………………はぁ……」
心の中では、まるで叫び声のように。
──
(距離近すぎんだろ!!)
(可愛すぎかよ……!!!)
(お互いに甘噛みって……やばすぎるだろ……!!)
──
それでも、スマホを構える手はそっと下ろされた。
もう写真を撮るよりも、今は――
ただ静かに、その場にいてやりたかった。
だぁはそっとネグの頭を撫でた。
すかーはマモンの髪を軽く撫でた。
夢魔は2人の背中を優しく撫でた。
完全に眠っている2人。
何も知らずに、無防備なまま。
だぁ(……こんなの……怒れるわけないじゃん……)
すかー(……可愛がるしかねぇよ……)
夢魔(マジで……どうしろってんだよ……こんな……)
そのまましばらく、誰も言葉を発さず。
ただ、ひたすら2人を優しく撫で続ける時間だけが流れていた。
──甘噛みし合った2人。
その静かな呼吸と、安心しきった寝顔。
それを守るために。
ただただ、3人は黙って、そっと見守り続けた。