朝、目が覚めると若井はもう居なくって僕はひとり気怠さの残る身体を起こす。
「すご···え、嘘でしょ···」
そこには無数に赤くなった胸やお腹だけじゃなく首にも2箇所くらい昨日の跡が赤く残っていて思わず容赦ないなぁって笑えてしまった。
できるだけファンデーションで隠して襟付きのジャージを着て···暫くはテレビ出演もなくて打ち合わせだから大丈夫、だと思うことにする。
若井を責めるつもりはない。
全部悪いのは若井にあんなことをさせた僕だから。
「おはよー!」
いつもより元気に部屋に入ると元貴も若井も来ていていつも通り楽しそうに話をしている。
「涼ちゃんなんか今日元気だねぇ?顔色もいいし!」
「うん···若井が昨日、夜ご飯作ってくれたしね、ありがと」
「涼ちゃんいいなぁ···俺にも作ってよ!」
「あぁ、うん···別に素麺茹でただけだよ」
戸惑った顔で僕を見る。
そりゃそうだ、昨日あんなことしたのになんでって思うよね。
けど僕よりきっと若井の方が傷ついてるんじゃないかって思ったんだよ。
元貴がスタッフさんに呼ばれてちょっと行ってくるねって部屋から出て行ったから僕は若井の隣にあえて座った。
「···合鍵、返してない」
「うん、けど突然部屋にいるのはやめてよね、びっくりして叫んだらどうするの···僕心臓止まるかと思ったよ、あっぶなかったぁ···なんて、ね」
なんてことないように冗談みたいに返して見た若井の顔は今にも泣きそうで。
ほら、やっぱり若井のほうが傷ついてる。
だからもうやめようね、今ならまだ戻れるよ。
「···次は連絡する、涼ちゃんも毎日するのは身体きついでしょ?30代だし」
「だーからそんな変わんないって···それに次はもうないから」
これで良いんだよ、若井。
今ならまだ忘れられるよ。
「お待たせー。なになに?また涼ちゃんからかってんの?」
タイミングよく元貴が帰ってきてくれて良かった、と僕はほっとする。
「若井が僕のこと30代って言うからさぁ」
「なに、ほんとのことじゃん?」
むにぃ、と僕のほっぺを軽くひっぱって笑うその距離が近くて 甘い元貴の香水の匂いを感じて···慌てて、いたいーって大袈裟に笑って離れる。
元貴と若井を重ねてあんなことをしてしまったので元貴にも少し後ろめたい気持ちがあるわけで、そうとも知らず逃げる僕を追いかけるのには困ってしまった。
そんな僕らを見ていた若井が諦める、とか忘れる、とは逆に動こうとしているなんて思いもしなかった。
僕が元貴へ純粋な恋心だけじゃなく欲情を抱いているように若井も僕のことを大人の男として欲望を抱いて、しかも深い関係を味わったことで更に止まらなくなっていたことをその時の僕は知る由もなかった。
コメント
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涼ちゃんはまだ引き返せる、それが2人の、若様の為って思ってるけど、若様は… 一度でも好きな人をその手に抱いてしまったら、経緯や真意はどうであれ、止まれなくなるものなのかもなぁ…なんて、ああ若様…😢💦 普通に考えたら、すごく怖い状態なんだけど、若様だからなんだか少し切ないというか、心配な気持ちの方が強い気がします…🥺💦
「次はもうないから」って、聞きようによっては拒絶になってしまっているのでは……💛ちゃんにその気が無いのは分かってるけど……🥲若様の気持ちを考えると切なさがすぎる……。
💛ちゃんはなんとか引き返そうとしてるけど、💙は、、、❣️ひゃ〜、続きが楽しみ過ぎます🤭❣️