唐突に思い付きました
めちゃくちゃ長いのでお時間あるときに読むことを推奨
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最近、夢を見るんだ。
木漏れ日の暖かい良く晴れた日。
意識はある筈なのに、体は全く動かない。
俺の頭を撫でながら、鼻歌交じりで口ずさむ誰かがいて
俺はそれを、ずっと見ているんだ。
最後は決まって、その人がこう言う。
「いい夢を、アルフレッド。」
その人がそう言った途端、現実の世界へ引き戻される。
最初に聞こえたのはその人の歌ではなく、鳴り響くアラーム音だった。
一体、誰なんだよ。
もし夢の中の俺が、幼い頃の俺なら、必然的にあの人はイギリスということになる。
だって俺が小さいときに一緒にいたのは、イギリスだけだったんだから…
…なんだか、むかついてきたんだぞ…
そんなことを考えていたらとっくに、出発の時刻を越えていた。
『ヒーローの登場だぞ!』
遅れてくるときの常套句だ。
まあ実際、間違いではないけどね!
何時も通りドイツは頭を抱えて、イタリアはシエスタ中。
日本はずっと謙遜してて…誰だっけ、あれ。
(カナダだよ!)
何か聞こえた気がするけど…まぁいいや。
あと…
「ヒーローの登場だぁ?大遅刻だよ、ばぁーか!」
そうそう、イギリス。
あ、そうだ。君のせいで俺は遅刻したんだから、責任はとって…
「おい、アメリカ?なんだよお前、ぼーっとして。
遅刻は何時ものことだが…様子が変だぞ。熱でもあるんじゃねえか?」
あ、近、
「うぉッ、どうしたんだよ…マジで。
何でもないんだったら早く座れっての…」
『俺が熱?DDD!そんな訳無いだろう?君じゃあるまいし!』
俺に嫌われてるとか自意識過剰なくせに、すぐ俺の母親面で心配してくる。
そもそも、あんな夢を見なければ、こんなに遅刻することはなかったんだぞ…
「アメリカもイギリスも、もう座った方が良いんじゃない?
そろそろ、ドイツが限界だよ」
珍しくフランスがまともなことを言った。
でも本当にその通りだ。ドイツがわなわなと震えてるからね。
ここは大人しく、座っておいてやるんだぞ!
「はぁ…毎度のことだがアメリカ、お前の遅刻癖はどうにかならないのかよ」
会議が終わって、みんなぞろぞろと部屋から出ていく。
俺も本当だったら、もう飛行機に乗ってるはずだし…
早く帰って、ハンバーガー食べたいんだぞ…
「おい、聞いてんのかよ、アメリカ!
さっきからおかしいぞ?やっぱ熱あるんじゃ…」
あぁもう…こっちは見たくもない夢で遅刻させられて困ってるのに…
大体、もう俺は子守唄で易々と眠るような子供じゃないんだぞ…
でも…あの夢、本当に見たくないのか?
あれのおかげで、あの人がいるから俺はーー
「…リカ、聞…て…」
「ーアルフレッド!」
「本当にどうしたんだよ、お前。早く帰って休んだ方がいいぞ。
…あ、気分悪かったならそう言えよな?
いくらお前とはいえ、体調を崩したら暫くは本調子で仕事できないだろ。」
『今、何て言った?』
「あ?いくらお前とはいえ、体調を崩したらー」
『違う。その前。』
「はぁ、?その前って…早く帰って休めとしか…」
『違う!その前だよ!俺の、本当の名前ー』
だって、その名前は、その声は、 夢の中で彼が俺に囁いたものだ。
「…『本当の名前』だ?…今そんなん呼んだ覚えねえよ…
やっぱり早く帰れ。それか病院に言って休んでくれ。」
「…あっ、これは、お前を心配してるんじゃなくて、次の会議でぶっ倒れられたら迷惑だからであって…あくまで俺のためなんだからな! 」
彼が言うとおり、本当に熱があるのかもしれない。
たかが昼寝をする夢に、ここまで執着するなんて。
とりあえず今は帰って休んだ方が良い。
『イギリス、ずっとうるさいんだぞ!
仕方ないから今回は帰ってあげるよ!』
そう捨て台詞を吐いて、会議室を後にした。
イギリスが何か叫んでたけど、そんなの聞こえないんだぞ!
とりあえず、俺の家に帰ろう!
家、即ちアメリカ合衆国に付くや否や、山程の仕事が押し寄せてきた。
こんなとき、フランスだったらお得意のストライキで仕事なんかサボるんだろうけど…
俺はヒーローだから、そんなわけにはいかないんだぞ!
そんなこんなで、とりあえず書類関連の仕事は全て片付けたから、日本にもらったゲームで会議まで暇を潰すことにした。
日本のゲームは、全部奥が深くて、クリアしても何回だってやり直してしまう。
今回も、一週間ほど前にクリアしたゲームのやり直しだ。
と言っても、俺は日本ほど物好きじゃないから、同じ会話とかは全部スキップしちゃうけどね。
そうやって、スキップ、スキップ、スキップ…
スキップボタンを押す手が緩まって、ゲーム機が落ちる音が聞こえて…
ゆっくりと目蓋が閉じていく…
目が覚めたのは、木漏れ日の射すあの日。
いや、目が覚めたんじゃない。また夢を見ているんだ。
俺の頭を撫でながら、たまに顔を覗き込んではにかむ。
この夢を全く思い出せないのに、懐かしい気がしてならない。
ふとその人が顔を上げて、小声でなにかを言っている。
どんなことを言っているのか分からないけど、きっと悪い奴じゃないんだろうな。
俺には、会話の相手の足元だけ見える。
ちっちゃい子供で、ポンチョのような、良い素材の白い服で…
少し、自信なさげな足……
スマホのコール音が、脳に響く。
夢は覚め、現実に引き戻された気分だ。
自分でもビックリするけれど、今は夢を見ることよりも、夢が覚めることに苛立ちを感じているらしい。
ずっとなり続けるコール音にも嫌気がさしたが、スマホの向こうには俺の上司がいた。
その証拠に、電話に出た瞬間、上司の不機嫌に遅刻を知らせる声が、耳をつんざくほど聞こえてきたんだから!
会議は、まだ始まったばかりらしく、それほど怒られなかった。
会議の内容は右から左へ、通りすぎていく。
なにか重大なことが起こったら、先ず俺の体に影響が来る筈だから、聞き流していてもさほど問題はないだろう。
それよりも、今はあの夢について考えることに夢中だ。
俺(仮)と、あの人、そして…子供。
もし本当に俺が主人公で、あの人がアーサーならば…あの子は必然的に…
会議は思っていたより早く終わった。
いや、皆の様子から察するに、話を聞いていなかっただけかもしれない。
とりあえず、会議が終わったら直ぐ空港へ急いだ。
それは勿論、『あの子』に会うためだ。
「はーいって…兄弟!?急にどうしたんだい!来るときは連絡ぐらいしてくれよ…」
『Sorry,カナダ!ちょっと聞きたいことがあってさ、どうせ暇だろ? 』
「『どうせ』って…相変わらず失礼だな、君は。
まぁとりあえず上がってよ。生憎、紅茶しかないけど。」
「…へぇ…君が夢ねぇ。君だけじゃなくて、大体の国体は夢を見ない筈だけど… 」
『それで、今日見た夢に君っぽい子供が出てきたんだよ。
なにか覚えてること、あるかい?』
「う~ん……本当に君の見た夢がそれなら、覚えてないのが凄い不思議だけど…
昔、僕たちがちっちゃかった頃だよ。
イギリスさんと、フランスさんと、僕と、君とでピクニックしたじゃないか。」
「僕は最初、フランスさんと遊んで、午後から君らと合流したんだよ。
まぁ、君はアーサーさんの膝元でぐっすりだっけどね」
『それ、本当かい!?』
「僕が嘘をつくと思うの?
しかも、いつもアーサーさんは君に子守唄を歌ってくれてたじゃないか。」
「確か…」
「 Rock-a-bye,baby…」
頭の、何かが疼くように、痛みが走る。
顔も同時に歪んだのだろうか、カナダは歌うのをやめて俺の事を心配してきた。
「ちょっと、アメリカ!大丈夫かい、君、?
イギリスさんから聞いたよ。やっぱり体調悪いんじゃないか」
「今日は僕の家に泊まりなよ。明日、すぐ帰れば良いだろ。」
そう促されるままに、今日はカナダの家で、夜を過ごすことにした。
デリバリーしたピザを2人で食べた後、シャワーを浴びて、早く寝るように、と釘を刺され部屋に戻った。
あの夢の続きが気になって仕方がない。
そう悶々と考え込むうちに、やはり俺は眠りに落ちていた…
「…あれ、アメリカ、もうねちゃったの?」
「フランスさんは、あとからいくって、いってましたよ」
「…ぼくも、イギリスさんのとなりにすわっていいですか?」
「ーーーbaby,On the ーー♪
When the ーー,ーーwill rock;♪」
何故、この歌を懐かしく思うのだろう。
俺はこの歌を、聞いたことがあるのか?
なんで、思い出せない?大切な…大切な…
『思い出せ!』
誰だ…これは夢…?
目の前にいるのは…
『何故忘れたままでいるんだよ! 』
なんで、そんなに泣いているの
『これは、彼が俺に歌ってくれた歌だろう!』
俺だって、思い出したくても、思い出せないんだ。
『違う!』
『君は…いや、俺は…ずっと逃げてたんだよ!』
『思い出したら、戻りたくなるから!』
何故そんなことを言うんだ。
俺は忘れてなんかない。後悔なんかしてない。後悔なんて…
「…ごめんな。アルフレッド。」
目覚めたのは、何時だったのだろう。
気がついたら、夜は更けていた。
おれは鏡の前で立ち尽くしていて、冷や汗が、頬を伝ってどうも気持ち悪い。
体調もいつも通り、とはいかず、頭がなにかで埋め尽くされて今にも倒れそうだ。
それでも、行かなくちゃいけない。
あの夢は、夢じゃないのだから。
「…隈、酷いけど。」
「…はぁ。なんとなく事情は分かったよ。
明日は絶対に、寝るんだからね」
シャワーを浴びた後、カナダに礼を言ってから空港に向かった。
きつく叱られたから、これが終わったらゆっくり休もう。
そんな穏やかな気持ちとは反対に、この胸の鼓動は、早まるばかりだ。
飛行機の席に座ってなお、頭痛と共に、好奇心が襲ってくる。
俺にしては珍しく、ちゃんと連絡も入れた。
彼は今、焦げたスコーンを用意して俺を待っている。
「…うわ、お前…休めって、言ったよな?」
「…なんだよ、早く中入れよ…コーヒーだろ?用意してあるから」
「…本当に大丈夫か?、お前。なんとか言えよ…」
『夢を、みたんだ。』
「……夢?」
『いいや、夢じゃない。 』
『君は、俺を、あれからずっと遠ざけていたんだ。』
『俺が後ろに、戻らないように。』
「……はッ、何言ってるんだよ、」
『もう、大丈夫だよ。』
『確かに、あの記憶が、あのときの俺が、今でも俺の足枷になって、重くて重くて堪らない。』
『だけど、それのせいで、君を忘れたくない。』
『俺は、アメリカで、アルフレッド・F・ジョーンズだ。』
『もう君の弟じゃないけど、昔の俺も、今の俺も、全部が俺なんだ。』
『だから…ありがとう。イギリス。もう返してくれ。』
「……本当に?もう、大丈夫か?」
『大丈夫だよ。なんてったって俺は、ヒーローだからね。』
「……分かった。」
「ごめんな。アルフレッド。」
『いぎりちゅー!!』
『すぐ帰ってくるっていったのに、全然帰ってきてくれなかったじゃないか!』
『ずっとずっと、待ってたのに…』
『イギリス!』
『おかえり。…何ヵ月ぶりかな』
『あっ、イギリスが忙しいのは知ってるよ。だけど…』
『次は、もうちょっと早く来てね。』
『イギリス』
『俺、君から独立したいんだ。』
『もう、なんでも一人で出来るようになった。』
『だから…』
『俺は君から、独立する!!』
「…あれ、もう寝たのか。」
「今日は沢山遊んだからか。
…最近こっちにこれなくて、ごめんな。」
「あ、カナダ。」
「…あれ、アメリカ、もうねちゃったの?」
「もうすこしで起きるから、ちょっと待ってような」
「…フランスさんは、あとからいくって、いってましたよ」
「あぁ、そうか。ありがとう」
「…ぼくも、イギリスさんのとなりにすわっていいですか?」
「勿論。おいで。」
「…Rock-a-bye, baby,
On the tree top.
When the wind blows,
The cradle will rock;… 」
「… When the bough breaks,
The cradle will fall,
And down will come baby,
Cradle and all…」
目が覚めたのは、ライトの光が少し眩しい部屋の中。
あの日聞いた、子守唄を口ずさみながら優しい笑顔で俺の頭を撫でる。
微睡んだ目を擦ると、その人は俺を見て言うんだ。
「おはよう。アルフレッド。」
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皆様いいねありがとうございます! いいね数が100を越えたのでお知らせいたします 近々フォロワーさま限定でA Song for youのアーサー視点を公開するつもりです✨ 何故フォロワー様だけ?と思った方、気分ですごめんなさい 是非読んでくださいね~ (まだ書き始めてもないのでご了承を)
✌️さんの書かれる暗い?アルの話が好きです… そして相変わらず文才が爆発している… 凄すぎませんか??本当に… しかもサムネ綺麗すぎる… 才能の塊ですね凄すギル…!!!