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らっだぁの家。
ゲームはひと段落し、夜もすっかり更け始めていた頃。
「そろそろ、帰るよ、ね、?」
らっだぁは立ち上がってなるせにそう話しかけた。しかし、なるせは座ったまま、少し目をそらしながら答える。
「……うん」
肯定しているようで、否定してるような、曖昧な声で、元気のない返事。
(……うわ…帰りたくなさそ〜笑)
らっだぁはなんとなく察していた。
でも、無理に聞いたりはしない。
それがなるせの“照れ隠し”なのが、わかっているから。
だけど、そのまま玄関まで歩いていって
── なるせの靴を出した瞬間だった。
後ろから、不意にぎゅっと袖を引かれる。
「……ん、なに?」
「……や、ちがっ……」
なるせは顔を真っ赤にして、なにか言いかけて、でも言えないまま、
ただ、焦ったようにらっだぁの手を掴んだ。
その手は、少し震えてて、でもぐっと指を絡めるようにして、離そうとしない。
「……っ、べつに……ぃや……」
声が掠れている。
小さく、でも確かに手がすべって、らっだぁの手のひらをなぞる。
「……なんか、今日……やけに優しいから……お前が……」
「うん」
「……帰りたくなくなるじゃん、そーいうの……」
「なるせ」
らっだぁは、そっとその手を握り返した。
指と指が絡み合って、さっきまでの微かな距離感が消える。
「じゃあ、もうちょっといて」
なるせはちょっとだけ息を詰めて、黙ったまま、
でもきゅっと強く、らっだぁの手をまた握った。
「……ん、じゃあ……ソファ戻る」
「ベッドの方が広いよ?」
「は、?……調子乗んな」
なるせは顔を逸らしたまま、でも確かにもう一度、そっと手を摩るように撫でた。