『ねえすいちゃん、8月31日の夏祭りさ、一緒に行かない?』
時刻は22時。静まり返ったリビングでひとり、テレビを見ていれば、机に置いていたスマホから通知音が聞こえ。重い腰をソファーから上げて、スマホを手に取り確認するとビジネスパートナーからメールが来ていた。
「夏祭り、か…暑いんだよなあ。でも誘われたし……。」
暑いのは苦手だし、神社でするらしいから虫なども沢山いるだろう。嫌だけど……少し躊躇した後、『いいよ』と返事をした。
正直言って、めちゃくちゃ嬉しかった。だってみこちは、…私の好きな人だから。でも、みこちは同性で、尚且つ同僚っていう関係。「好き」を口に出すことは出来ない。
そして。みこちには絶対、私よりいい人が居る。だから、尚更私はみこちに告白する事なんて出来ない。
「……どうせ無理だし、お洒落とか……してみようかな。」
そう考えては明日の収録の準備をして、寝床についた。
「……すいちゃん、多分私服とかだよなあ。」
夏祭りに誘ったは言いものの…。何の服で行こうかなあとか、そう悩んでいればふと思った。
みこは浴衣で行こうと思ってたけど、お祭りとかにあまり興味がないすいちゃんはどうせ私服とかで来ると思った。
「……すいちゃんの浴衣とか見たいなあ。絶対綺麗だよね…。」
あの星街、顔だけは良いんだよな。色々と煽ってきたりしなければいーんですケド……。
…でも、そういうところが好きなんだよね。みこにしかしない態度っていうか、みこにだけ見せてくれてるような一面。
そういうところを見てたら、いつの間にか好きになってたんだ。
「……私服でも可愛いからいっか。」
すいちゃんの私服姿を想像したら、まあそりゃ口角が上がってしまうわけで。ふるふると頭を横に振っては、時間が時間なので寝室へ向かった。
「すいちゃん、まだかなあ……って言っても、みこが早いだけか。」
今日は待ちに待った夏祭り。毎年みこは夏祭りにるんるんで行ってるけど、今年は好きな人と回れるから尚更気分がいい。みこは綺麗な浴衣に身を包んで、石畳の階段をるんるんで登っては、待ち合わせ場所に着いた後そんな独り言を呟いた。
「……折角だしなんか買っておこっと。」
まだ予定より10分程度は時間がある。食べ物を2個程度買ってはそれを食べながら待ち合わせ場所に戻り、食べ終わった頃にすいちゃんが来た。
「みこち、おまたせ〜。」
「あ、すいちゃーん!いつまで待たせてんだ、よ……。」
すいちゃんが待ち合わせ場所に着いたのは、予定より10分程度遅かった。待ちくたびれたみこは文句のひとつでも言ってやろうかと思い、声が聞こえるなり彼女に向けて言葉を発そうと振り向けば、みこと同じ綺麗な浴衣に身を包み、青色の綺麗な髪はお団子で、垂れた髪の毛を弄って照れくさそうに下を向いているすいちゃんが居た。
「……え、すいちゃん、それ。」
「あー……やっぱり変だったかな?」
「んーん、めちゃくちゃ綺麗で可愛いよ!」
「……え、あ、ありがと。」
みこは多分、きらきらした目ですいちゃんを見ているんだと思う。だって好きな人がこんなに綺麗で可愛かったら、誰でもこんな風になる。
再度また照れくさそうにしてるすいちゃんを見ては、「なーんだ、星街にしてはかわいーとこもあんじゃん。」って少し煽るように言ってみる。するとすいちゃんも負けじと「いつもかわいーの間違いでしょ。このポンコツ巫女。」って煽り返してくる。「ポンコツじゃないんですケード!」とか。色々言い返しながら、すいちゃんの手を引っ張っては一緒に屋台を巡った。
「21時から花火上がるんだってよ、みこち見る?」
「え、見る見る!みこいいとこ知ってるよぉ〜。」
「んー、じゃあ連れてってもらおうかな。」
みこが毎年、花火が上がるときに行く特等席のような場所がある。そこから見る花火はとっても綺麗で、すごく好きで。すいちゃんにも見てもらいたいなあってずっと思ってた。
神社の裏を通ってくから、細い道があるだけで整備すらされてないところ。虫とかいるらしいけど、そんなこと気にせず毎年そこで花火を見ていた。でもすいちゃんは虫とか無理らしくて、めちゃくちゃ嫌がってたのに笑っちゃって。「無理だよお、帰ろうよみこち……。」っていつものすいちゃんの様子と真反対で、なんだか守ってあげたくなるようなそんな気分になった。
「あ、ほら花火!ちょうど見えるよすいちゃん。こっち来て見てみよ!」
「……ん、綺麗じゃん。虫まみれの道よりは幾分マシだなあ?」
「う、それはごめんって……。」
そんなやり取りをしながら、地面に座って。すいちゃんが立ちっぱだったから、隣を軽くぽんぽんと叩き座らせて。空に咲く花火を二人で一緒に眺めた。
「綺麗だねえ……。」
「ね。すごい綺麗。」
花火もそろそろ終盤になってきて、ふと横を見ればすやすやと寝息を立てて寝てるすいちゃん。よくこんな花火の中寝れるなあって思った。
「…すき、だよ。すいちゃん……。」
寝てるコイツに言ったって、聞こえてない。聞こえやしない。でも、みこはそれで良い。直接言うのなんてみこは恥ずかしいし、そんな事出来ない。無防備な姿を見ていれば額に軽く口付(キス)をしてみる。額に口付をしては思わず頬を緩ませて、すやすやと寝ている想い人を起こして。
「ん……花火終わったあ?」
「終わったよすいちゃん。もう夏祭りも終わり頃だし、帰るよ」
「えー、また虫まみれの道歩くのぉ?すいちゃん嫌なんだけど。」
「じゃあお前一生ここいんのかよって!」
「それはもっとヤダ。家帰ったらカナヘイがすいちゃんを待ってるんだよ」
「ったく。本当に歌ってる時とのギャップとかすごいよなオマエ……。」
「別にいーじゃん。それが好きなファンだっているんだし〜。」
「ハイハイそーですね。」
「返事適当なのやめてね?ほらみこち帰るよー。」
「ねえみこが駄々こねてたみたいに言うな!主導権はみこちゃんですよーだ!!」
「嘘つけ赤たんポンコツ巫女。すいちゃんの方が上だよ。」
「はぁあ!!?」
そんなこんなで、散々な煽り合いの後。屋台に売ってた林檎飴を一緒に買って、その日は解散した。
「みこち〜配信の準備できてる?」
「もちろん!みこちゃんエリートなので!」
「えー今日は早いじゃん。いつも遅いのに。」
「はあ!? でゃまれ!!」
「イヤ無理ですケド。てかさあ聞いて!」
「どーしたん」
「すいちゃんなんかおでこの1部、ここ!赤くなっててさあ。蚊に刺されたのかなあ。」
「……。」
「おーい、みこちー?」
「え、あ、蚊に刺されたんじゃない??ほらあそこ虫とかいたし……。」
「えーやっぱり?だからああいうところ嫌なんだよー……。」
「気を付けなきゃねー、アハハ……。」
コメント
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え、え、え、ss書くの上手すぎて✝︎昇天✝︎ みめてぇてぇすぎるよ〜‼️やっぱ天才、、すぎる🙂↕️🙂↕️続きが気になるなこれは😌👀❕❕ ((サブで申し訳ない😭
誰か...[死者蘇生]の...カード...持ってき...て 【尊死】
あ、誰か墓ください😇