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ゆかボンド
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──────椎名視点──────
「う、うえぇ…」
Jルートを終えた私はようやく溜め込んだ気持ち悪さを吐き出すことができた。気持ち悪さの原因は別に、樹木が鬱陶しかった、とか人間の体が不便すぎたから、ではない。あまりにもめめ村の仲間内の仲が悪すぎたのだ。このルートのめめ村は優秀な人間の寄せ集め、と言ったものだ。私は、一応ある程度内容を覚えてから、天才だらけのこのチームに飛び込んだのだが、最悪なことに、全員性格が地の底であった。人が見つけた成果を横取りし、食糧は盗んで自分だけが生き残るようにし、魔物の食料として誰か一人をリンチにしたり、陰口と愚痴は耐えることはなかった。何とか私が全員の仲を取り持とうとしたが、うざがれてハブられる始末。やってられなかった。
私は初めてめめ村のみんなが死んで閉まってもいいとすら思ってしまった。それほどまでに彼らはねじ曲がった思想を持ち、仲間意識なんてなく、いじりと呼べないもはや暴力が日常茶飯事であった。1番ショックだったのは唯一優しかった茶子さんが裏切って私を崖に突き落とした時は、ほんとに。
「…クソッ」
私はそう吐き捨てて、次のルートへと向かう。
K、Lも最悪だった。ここら辺は悪いルートしかないのか。もう、だいぶ信用出来なくなってきた。そして、IルートとKルートを合わせてわかったのは、元々あったストーリーから、私が逸脱しすぎた行動をすると未来が変わり、どうなるか予測ができなくなる、というものだった。私の唯一のアドバンテージである未来が分かる、というものに意味が無くなってしまうのは避けたかったし、毎回神の権限が使える訳でもない。なるべく物語にいた私の性格を模倣するのがいい、ということを学び、次から活かすことにする。大丈夫…本命のルートまでまだまだあるのだから。心配する必要はないはずなんだ。そう自分に言い聞かせて私は次のルートへと向かう。
…その後もアルファベットの順番通りに物語をこなして行ったがどれも最悪の結果で終わった。暴力、暴言、殺し合い、嫉妬、強欲、裏切り、浅慮、馬鹿、狂人───。散々であった。
そして、とうとう最悪の結論に自らたどり着いてしまった。別に、今私が繰り返しているめめ村のみんなは私が大好きだったみんなではなくて、ただの他人だってことに。その結論に達してしまえば、あとはもう胸に突っかかっていた何かを理解してしまう。
「そっかぁ…。なら、私はなんで、他人のために頑張ってるんだろう?」
当然と言えば当然の疑問。いつからか、なんで自分が頑張っていたかも思い出せなくなってしまった。人間の精神で同じ見た目なのに違う性格の人達と無理やり仲良くなろうとして、仲を取り持って、愛想笑いを浮かべて。最近、ずっと自分を取り繕って、素の自分が出せずにいた。ずっとニコニコしているのは疲れたし、元々その世界に存在したれいまりのように振る舞うために、時にはバカを演じて見たり、天才になってみたり、自己犠牲に走ってみたり。もう、わけがわからくなってきてしまった。
︎︎ ︎︎ ︎︎…自己の喪失。 ︎︎ ︎︎ ︎︎
それが、今自分に起きている状態なのだと、冷静に理解できるのに、体も、心もそれを受け入れることができない。昔は今よりもずっと馬鹿みたいにポジティブだった。だから勝手に体も動いたし、努力しようと、精一杯のことを務めてきたつもりだ。けど、今、私は自分にできる努力をし終えてしまって、これ以上何をどう改善したらいいか分からなくなってしまった。今までは頭を良くしたら、魔法を使えるようになったら、どう振る舞えばいいかの練習をすれば、と何をしたらいいか、という壁が目に見えてわかっていたのに。壁を見ることで、その先に道がある、と分かれたのに。今じゃ壁が見つからない。道を見つける道標が無くなってしまったのだ。
答えがない、今、数千年以上も前に決めてしまった本命ルートが目の前に迫ってきている。けど、このルートをどうすればいいのか分からなくなってしまった。ハッピーエンドを目指す?…違う。私が幸せになって欲しかったのは私を愛してくれためめ村のみんなであって、まだなんなのか知らない奴らがハッピーになって欲しい訳じゃない。けど、そうしないと、私は永遠に繰り返すただの人形になってしまうから。このループから抜け出すために、このルートをハッピーエンドにさせる。そう、しないと、私は…。
どうなるのだろうか?もう、別にいいんじゃないか。いけ好かないやつを殺して、好きなやつを愛すればいいじゃないか。そして、飽きたらまた死んで違う世界に行けばいい。自分が壊れたらその時はその時だ。だって、壊れた時は今よりもずっと楽なはずだから。
今、どうして辛いのか。それは大好きだった仲間達から拒絶されるのが嫌で、解釈と合わない性格が嫌で、自分を愛してくれないみんなが嫌なだけだろう。違う世界から来た異物である私を腫れ物として扱うのは当たり前の反応なんだ。そう、そうに違いない。そうじゃなかったら、他のルートであっためめ村のみんなが本当に、嫌いになってしまうから。私だから、という理由で拒絶されるのだけは嫌だったから。別の理由で嫌われるのじゃないと自分を殺したいほど憎んでしまいそうだから。
段々、自分の本心すらわからなくなる。結局、私はこの本命のルートで何がしたいんだ。そもそも、もう諦めるのか、どうか。ここで諦めてしまった方が絶対に楽だ。何より、もう心が傷つくことも、割れることもない。何度も縫い合わせて形を保っている私の心はもう限界だ。完全に壊れて、何も出来なくなる前に諦めてしまえばいい。だって、実際にこの物語に入るまで本当にみんな仲良いのか分からないし、自分を愛してくれるかも分からない。だから、さっさと諦めた方がいい。
けど、私のちっぽけなプライドと自尊心がみんなの愛を諦めずにいるから。愛して欲しいから。みんなを、心の底から大好きだって、言いたいから。今、自分がネガティブなのは嫌な奴に会いすぎたせいなんだ。だから、本当に優しい、みんなの心に触れれば私は、またやり直せるはずだから。
そうして、強い期待と壊れそうな心を奮い立たせて、私は本命のものがたりへ飛び込んだ。
ここで切ります!今回は椎名ちゃんの心の壊れる様子を書きました!そもそも、もう既に1万年以上生きてきているので精神的にきつくなってるんですよね。で、そん時にSルートに入った、って感じです。正直諦め半分だったんですけどね…。けどそこで本編の通りまさかの出会いをするわけです!皆様、椎名ちゃんの【救済】をご覧あれ!
…私事ではありますが、最近小説を書くのが下手になってきてるんですよねぇ。なーんか文字数とかを気にしたりだとか時間を気にしたりとか…。展開がグダグダになってしまうことも多くて…。最近の悩みですかね〜。
ま、本編とは関係ないんでご安心を!
それでは!おつはる!
コメント
8件
そりゃそうなるよね