テラーノベル
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🦈「……え」
こさめは息を呑んだ。
すちは顔を覆ったまま動かない。
肩が小さく震えている。
🦈「すち、さん……?」
返事がない。
静かな廊下に、こさめの鼓動だけがうるさく響く。
さっきの言葉。
『なんで、生きて……』
頭の中で何度も反響する。
まるで、自分が死んだと思われていたみたいな。
🦈「どういう、こと……?」
震える声で尋ねる。
すると、すちはゆっくり手を下ろした。
その目は赤かった。
今にも泣きそうで、壊れそうで。
こさめは胸が締め付けられる。
🍵「……ごめん」
🍵「今の忘れて」
🦈「忘れられるわけないじゃん……!」
思わず声が大きくなる。
こさめは鉄格子を掴んだ。
🦈「なんなんですか!? なんでそんな顔するの!」
すちは目を伏せる。
長い沈黙。
やがて、ぽつりと呟いた。
🍵「……昔、火事があった」
その瞬間、こさめの頭がずきりと痛む。
炎。
熱。
焦げた匂い。
一瞬だけ、知らない景色が脳裏を掠めた。
🦈「っ……」
🍵「こさめくん!」
すちは反射的に駆け寄る。
こさめは息を荒げながら壁に手をついた。
頭の奥が痛い。
何か思い出しそうなのに、掴めない。
🍵「火事……」
すちは苦しそうに目を閉じた。
🍵「……俺が起こした」
空気が凍る。
こさめの呼吸が止まった。
🦈「え……」
🍵「人を殺した」
静かな声だった。
でも、その一言はあまりにも重い。
🍵「……大事だった子も、巻き込んだ」
こさめの指先が冷える。
脳裏に、また断片が浮かぶ。
燃える赤。
誰かの腕。
泣き声。
『にげて』
知らないはずなのに。
怖い。
胸が苦しい。
すちは鉄格子越しに、震える手を伸ばしかけて——止めた。
🍵「……俺は、あの子を殺したと思ってた」
🍵「他の関係のない方も殺してしまったし」
🍵「だから、死刑になって当然だって思った」
静かな独房。
すちはまるで、自分に判決を言い渡すみたいに言葉を落としていく。
🍵「でも、生きてた」
ゆっくり、こさめを見る。
その目が震えていた。
🍵「……こさめくんが」
その瞬間。
頭の奥で、何かが弾けた。
『すち、にげ——』
小さな声。
泣きながら誰かを押す小さな手。
熱い。
怖い。
でも——。
『すっちーは、わるくないよ』
知らない記憶。
なのに、胸が締め付けられるほど懐かしい。
こさめはふらつきながら後ろへ下がった。
🦈「ぁ……」
息ができない。
すちはそんなこさめを見て、顔を歪めた。
🍵「ごめん」
🍵「思い出させたくなかった」
その言葉で、こさめは理解してしまう。
すちは最初から気づいていたんだ。
自分が、“あの子”かもしれないって。
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