『誰か!!早く救急車!!』
『血が凄いぞ!』
『救急車はまだなの?!』
『患者は何処ですか!!!』
『急いで運べ!!!』
………うるさい
「____」
……うるさい…!
「お______」
「おい莉犬」
「____…うるさいなぁ、もう」
勢いよく取り上げられた布団と同時に起き上がる
「…ハァ、お前なぁ…起こせって言ったのお前だろうが」
睨みつけた先にいるのは制服を着た呆れた様子で大きなため息をつき、腰に手を当てるのは超がつくほどムカつくくらいのイケメンで
「……んぇ、さと、みくん…?」
「他に誰が居んだよ」
一瞬、名前が出てこなかった
「早く起きろよな。今日から学校なんだから」
「………今日って学校だっけ」
まだ夏休みだった気が…
そう考えているのも束の間
「お前が!昨日『明日から学校だから昼夜逆転直ってないから泊めて!』って言ったんだろうが!」
「……そうだったっけ」
「此処に居るのが何よりの証拠だろ」
そう言われて辺りを見渡す
確かに此処は俺の部屋とは全然違う
「……確かに」
「早く制服着替えて降りてこいよ」
わしゃわしゃと乱雑に俺の頭を撫でた後、さとみくんは部屋を出ていった
乱れた髪を直しながらスマホを手に取って電源をつけた
そこに映されているのは数週間前に確認した学校開始の日にち
「…………本当だ…」
チラッと時刻を見れば7時35分
「やっ、ば」
慌ててベッドから降りて制服に着替え、さとみくんの部屋を出た
「あら、莉犬くんおはよう」
「あ、おはようございますっおばさん」
「ふふ、寝癖がついてるわよ」
階段を駆け降りてネクタイを結びながらリビングに行くとニッコリと可愛らしい笑顔で花を咲かせながら綺麗な手で俺の髪に触れた
「……はい、直ったわよ」
長く淡いピンクのふわふわ髪が肩から垂れ下がる
「ありがとう、ございます」
俺も笑い返すとさらに辺りに花を咲かせた
「…、ごちそーさま」
ずっと静かに朝食を食べていたさとみくんは立ち上がる
「はぁい。もういいの?」
「ん」
ひらひらと片手を上げながら階段を登っていく
「さ、莉犬くん。沢山ゆっくり食べてね」
「ありがとうございます」
勧められた席に座って、用意された箸を手に持った
焼き魚に卵焼き、わかめとお麩の味噌汁、白米にサラダ
「………健康的」
しかも美味しそう
「「頂きます」」
おばさんと朝食を食べて、談笑をしていればリビングに顔を出したさとみくんは2人分の鞄を背負っている
「行くぞー」
「え、あ、うん」
おばさんに軽く挨拶をしてさとみくんと一緒にさとみくん家を出た
「………ねぇ、さとみくん」
2人で、通学路を歩く
「…今日って、何日だっけ」
「はぁ?お前なぁ…今日は9月1日で今日から2学期」
「……そう、だったね」
「しっかりしろよ」
「…うん」「ごめん……」
呆れた様な表情をして、今度は優しく頭を撫でた
「いいよ別に。それより莉犬、今日カフェ行かね?」
「うんいいよ」
「じゃあ決まりな」
その後は色んな話をしながら学校へと向かった
「莉犬!おはよう!」
「おはよう!わんわん」
校門を潜る時、後ろから抱きつかれた
……あれ…?
「あ、えっと……おはよ」
「?どうしたの?莉犬」
離れて俺の前に立つるぅとくんは眉を下げて俺を見つめた
「えっ、あぁ何でもないよるぅとくん」
そっか…るぅとくん
そうだ
「こいつ夏休みボケが酷くってさぁ」
「莉犬が?珍しいですね」
すりすりと頬を擦り寄せてくるるぅとくん
「は、早く教室行こうよ」
周りには人だかりができていた
教室に着いてすぐチャイムが鳴ってしまい慌てて席に着いた
「_____…では今日はここまで」
チャイムが鳴り、各自がバラバラと教室を出て行く
「りーいぬ!一緒にお昼食べましょ!」
「あ、え?お昼だっけ…」
「莉犬くーん早くー」
るぅとくんの後ろを覗くとドアの所でお弁当を頭に掲げたころちゃんとドアにもたれかかっているさとみくんがこっちを見ていた
俺も慌てて鞄を取り、みんなで教室を出た
何気ない会話をしながら階段を登り、重い屋上の扉を押す
瞬間にまだ暑い空気が体を包み込んだ
「まだ暑いねぇ」
「空き教室の方が良かったかなぁ」
「そっちもそっちで暑くね?最初」
「確かに〜」
「早く食べてお話しましょ!」
俺たちは太陽の下へと足を進めた
「____…それでね____でさw」
「やばwwお前の部活変な奴ばっかだなw」
「wwww」
「あ、莉犬その卵焼き美味しそう!」
みんなで円になって各自お弁当を広げる
るぅとくんがメロンパンを食べながら俺に言った
「食べる?」
「いいの?!」
キラキラとした瞳で俺を見つめるるぅとくんに卵焼きを口に入れてあげる
「んー!おいひぃ!でもいつもと味が違う様な…」
「莉犬昨日は俺ん家に泊まったから」
「そーなんだ?」
ニヤニヤと口角を上げるころちゃん
「……?」
「やっぱり2人って出来てんの?」
「「……は?」」
時が止まった気がした
「だぁかぁら!2人は付き合ってんの?」
「んなっ、」
顔が熱くあるのが分かる
「………悪いかよ」
「………えガチで?」
今度はころちゃんの時が止まった
「そっちが聞いといて何だよ、その反応」
「いやぁ、冗談で言ったつもりだったんだけど…」
「いつからなんですか?」
しれっと全て知っていたかの様な表情で問うるぅとくん
「一ヶ月くらい前」
「はぁ?!……本当さとみくんはヘ、タ、レ、ですね」「もっと前から付き合ってるのかと思いましたよ」
「そういうお前はどうなんだよ」
「……先週付き合いました」
さとみくんが問うとるぅとくんは視線を逸らしながら答えた
「お前の方がヘタレじゃんかよ!」
「なんて告白したの?」
「…普通に」
「普通?!あれが普通?!」
……一体どんな告白をしたのだろうか
「……っ、僕が言いたいのは!どこまで進んだかです!」
「どこまでって…手を繋いだり、頭を撫でたり、たまに一緒に寝るくらi」
「それがヘタレなんです!!僕は付き合った日に全て終わらせました!!」
るぅとくんの言葉にころちゃんは顔面をタコにした
「さとみくんは莉犬とキスしました?!」
「………いや……」
「ほら!」
「るぅとくんもういいから!」
真っ赤にしたころちゃんはるぅとくんの口にバナナを突っ込んだ
するとるぅとくんは静かになり、もぐもぐと口を動かした
その姿はなんだか可愛らしくてクスクスと肩を揺らした
今日は午前中だけだったためそのまま4人でお昼を食べて、2人と別れた
「……………あれ?」
「どした?」
放課後、教室に残ってさとみくんと夏休みの残っている課題をしている時
「………いや、なんでもない」
赤鬼莉犬の莉が一瞬わからなかった
「…?そう」「それよりこれ終わったらカフェな」
「…あれ、そうだっけ」
「………お前まじ大丈夫そ?夏休みボケでも度が過ぎてるぞ」
「……ちょっと疲れてるのかも」
「今日はちゃんと寝ろよ?」
「…うん」「何、食べようかな」
「俺はコーヒーかな」
「俺も飲んでみたい」
「飲めるのw?」
「馬鹿にしてる?」
そんな会話をしながら課題を終わらせ、カフェへと足を運んだ
「こんな所にカフェあったっけ」
「新しく出来たらしい。入ろうぜ」
案内された席に座ると少し離れた席からワンちゃんが顔を出してこっちを見ている
「お洒落なお店だね」
撫でたい衝動を抑え、辺りに目をやる
「天井の木組みいいな」
「ご注文はお決まりですか?」
辺りを見渡していれば、店員が姿を見せた
「じゃあ、コーヒー1つと」
「カフェラテで」
「畏まりました。少々お待ちください」
店員はニッコリと優しい笑顔で微笑んで奥へと姿を消した
「………星4.7だな」
「え、格付け…?」
「レビューだよ」
どうやらこの店にはホームページがあるらしく、そこには数多くの口コミが書かれている
「……さとみくん星5付けたことないよね」
「ん?あぁ、そうだな。絶対なんてことはないしな」
「厳しい様で、優しいよね」
「なんだそれw」
「お待たせしました。コーヒー1つとカフェラテ1つです。ごゆっくりお過ごしください」
「ありがとうございます」
ペコリと軽く頭を下げて置かれたカップを手で持ち、口に運んだ
「……美味しい」
「美味いな此処」「これで200円か…もっととっても良さそうなのに」
「確かに」「でも安くて美味しいからこそいっぱい売れるしモトなんてあっという間に取れるだろうね」
「確かに」
高校生とは少しかけ離れた会話をして、カフェラテを楽しむ
ミルクが多めで甘くて美味しい…
しかも丁度いい温かさ
猫舌の俺にとってとても有難い
そういえばあの人が入れてくれるのもこれくらい丁度いいやつだ
「………」
通知がきて光る画面の時間を見る
「最近どう?そっちは」
「え?」
唐突な質問に目を少し張る
「ななもりさんとだよ」
「…………まぁまぁだよ」
「ふーん」
聞いておいて、何その反応……
「…さとちゃんは俺のこと好き?」
「………じゃなかったら告白してねぇだろ」
「はは、確かに…w」
「莉犬は?」「莉犬は俺のこと好き?」
「………じゃなかったら告白受け入れてないし」
「確かになw」
その後も他愛ない会話をして、カフェの後にゲーセンに寄って、取れもしないクレンゲームに金を貢いで、馬鹿みたいに笑った
「そろそろ帰んなきゃな」
「…あぁ、そうだね」
ゲーセンを出れば辺りはオレンジに輝いていた
「送ってく」
「うん」
いつもとは違う道を歩いて家までの道を2人で歩く
何故か会話はなくて、でもなんだか心地よくて、微かに触れた小指同士が触れて、どちらからともなく指を絡めた
いつの間にか家の前で、それでも指を離すことはなく
「……莉犬、今日はゆっくり休めよ」
「…分かってるよ」
「ならいいけど」
名残惜しいように、ゆっくりと手が離れていく
「じゃあ、また明日な」
「うん、また明日」
優しい笑顔に俺も笑い返して、さとみくんは踵を返した
胸あたりで振っていた手を握り締めて、俺は家へと足を運んだ
~ next…?~
コメント
11件
多分初こめです! フォロー失礼します!
え、この上品な感じめっちゃ好きです!!
すごい、もう、よかったです🥺((語彙力なくて毎回同じことしか言ってない、、続き気になります💭 映画化、、まってます((