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「自由は、僕にとっての毒だ」
自由を知らない時は、それが自然体であると無意識に思っていた。
自由を知ると、それがいかに可笑しくて馬鹿みたいな事か良く分かった。
僕の母は毒親までは行かないけど、不機嫌になるとキレる寸前になって、キレたらスマホを取り上げたり、家事を丸投げしてきたり、大きな音を出したり、怒鳴ったりする人だ。
僕はそんな母を怒らせたくなくて今までは感情を貼り付けて、彼女にとって”都合の良い”感情に感情を変化させていた。
母は怖い。
怒鳴る彼女は怖 い。
無意識に僕はそう思って、そう行動していたのだろう。だけどそれは大変じゃなかった。
彼女の自分語りをずっと聞くのは今でも苦しいけどね……あはは
僕はひとりでに帰省したときがある。
その時、祖母は怒らなかったし、僕を褒めてくれた。ご飯を作ったとき、いろんな時に褒めてくれたし、晩御飯は何にしようと聞いてくれて優しかった。その時は何も考えずに笑顔で、ちゃんと笑えた。楽しかったのだ。
その証拠に帰りが近づくほどに悲しくなって、涙が止まらなくなった。
そんな事を見せてはいけないと涙を拭いて、さようならを言ったが、あの日の朝、祖母の前に出た瞬間、また泣きそうになって、声が出なくなった。
手を振ることしかできなかった僕を、どうか許してほしい。
帰ってから母は「〇〇をしろ」と僕に言ってきた。いつもなら当たり前のことなのだが、今回は違った。
「なんであなたの言うことを聞かなきゃいけないんだ?」
そう、思ってしまった。
彼女の話は面白くないしテレビを見ないと笑えないし表情もいつも通り硬くなってしまった。
自由を知ってしまったから、自分がどれだけ大変なことをしていたかを気づいた。
そりゃ、何をしなくても疲れるよ。
一緒にいた従兄弟も、いつも笑っているよりもたくさん祖母の家で笑っていた。
親族の集まりで最近会ったが、彼は不満そうな表情だった。笑顔は全然違ったし、彼も同じ事を感じているのかもしれない。
自由は毒だ。
毒は危険だ、死ぬかもしれないから。
でも僕は、それでも毒が好き だ。
自由になれるから。
【END】
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