折西は事務所の前で組長に電話する。
ドア越しに対談するように頼んだのだ。
電話をかける折西を不安そうにマアクが
見つめていた。
「…組長、やっぱりバンドの子達を
助けてあげたいんです。
僕や紅釈さんもサポートしますので
計画に参加してくださいませんか?」
「昨日も話したが目立った行動をする訳に、」
「東尾さんが協力して上手いこと
立ち回るそうです。」
言葉を遮るようにして折西は言う。
その気迫に押されたのか組長は黙り込む。
「…後は組長さんが戦うだけです。
大丈夫です、僕らがサポートしますから。」
折西がそう伝えると電話越しにため息が
聞こえた。
「…抜かりないな。分かった、協力しよう。」
昴に組長室への入室許可を出した組長の声を
聞いた2人はハイタッチをして大喜びした。
マアクはカリマとモルフォに連絡して
組長室に来るように伝えたのだった…
・・・
「重ね重ねありがとうございます…!」
カリマが深々と頭を下げると組長も頭を下げる。
「さて、計画の話の前に…組長さん、
『ライ』という方を覚えていますか?」
モルフォが恐る恐る聞く。
「…ああ、俺の元恋人だ。」
「話が早くて助かります。実はウチの
妹がその『ライ』なんです。
…当日バッチリ会いますけど…
大丈夫ですかね…?」
恐る恐る組長の顔色を伺うカリマ。
組長の目は一瞬だけ見開いた。
「…会う…ということはライが生きている?
それは本当か?」
「ええ、バッチリ生きている…
と言うよりかは『生き返って』います。」
「…そうか。どちらにせよ今更
断る理由もない、作戦を聞かせてくれ。」
「良かった〜♡作戦についてお話しますね!」
緊張のほぐれたモルフォは作戦用の
冊子を取り出した。
要約すると…
・ライの挙式ライブの日に突入。
・今までかき集めたライの悪事の写真や
情報をバックモニターをハッキングして
映し出す。
・組長に『ライの秘密』を暴いてもらう
・一連の流れをライブ配信
…と言ったことが書かれている。
「…ライの秘密?」
「最近のライの陰スタ見てもらえると
お分かりいただけるかと〜♡」
モルフォはスマホの画面を組長に見せた。
「な…なんか付き合っていた頃と
見た目が同じだな…」
「整形だけじゃここまで若い見た目にならない。
ウチのTOから聞いた話だと
ライはファージと契約しているらしい。
しかもプロフで年齢を20代後半♡とか
書いていてな…」
「うわ…」
ドン引きするレアな組長を見てモルフォと
カリマとマアクは3人で顔を見合せて、
大笑いした。
「ははは!!!!!流石の聖人もそんな
顔になるよな!ウチらも最初見た時
そうだった!!!」
組長が再度冊子に目を通すと眉をひそめる。
「それにしても中々派手な計画だな…
東尾にかかる負担が大きくなりそうだ。
少しでも負担を減らせるように対策を
練らなくては…」
組長が眉間に皺を寄せていると東尾が
組長の肩に手をぽん、と置いた。
「俺の事は気にしなくていいですよ組長。
ここ最近仕事の数も少ないですし力は
有り余っていますから!」
ド派手にやっちゃってください!と言う
東尾に組長は安心した表情を見せた。
「そうか、頼りにしている。」
組長はふふっと笑うとカリマへと目線を移す。
「作戦決行はライブの日…明日ですよね?
俺はライの年齢を公開するだけで
いいんですか?」
「ええ、それだけでも大丈夫です。
けれど予定外の事をして『めちゃくちゃ』に
してもいいとは伝えておきます。」
カリマがニヤリと口角を上げる。
明日会場で会いましょう。とカリマが言うと
そばに居たモルフォとマアクが何やら
ゴソゴソとし始める。
何やら2人はドラムとギターを取りだし、
スピーカーと接続し始める。
「な、なんだ…?」
組長が怪訝そうな顔をする。
「す、すみません組長さん…さ、最近
寝れてないなって思って実は、」
折西がモゴモゴと話し始めると
紅釈も昴も東尾も俊も耳を塞ぎ始めた。
ジャジャーーーーーーーーン!!!!!
ギュイイイイイイイン!!!!!!!!!
「!?!?!?!?!?」
「今です東尾さん!!!!!!」
「わ、分かった!!!!!!!!」
折西が合図を送ると東尾は
組長の顔に催眠スプレーをふりかけた。
すると組長はその場に倒れ込んだ。
「これは…流石にクビかなぁ…折西くん、
鍵開け頑張ってね…」
苦笑いする東尾は折西の方を向く。
「…絶対鍵開け成功させなきゃですね…」
折西は組長の手を握る。
今度は女性、その次にライを思い浮かべる。
そして3つ目は…推測にはなるが
「職員全員に平等に接する」ところから
「差別概念」がトラウマなのではないかと
思い、差別の光景を思い浮かべた。
すると視界が白に覆われた。
…3つ目の鍵はどうやら当たりのようだった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!